システムの複雑化でトラブル頻発 

日経新聞が平成28年9月13日付記事で大きく掲載していました。何の新しいニュースもないのに、何故、こんなに大きな記事にするのかと気になっていました。2015年以来の銀行システム障害を8件並べて、「頻発しており金融インフラの信頼が揺らぎかねない」との見出しです。構造改革や再編などでシステムの複雑化が進む一方で、人材の育成が伴わない。外部委託が進んだものの受託者のリスク意識が希薄になっているなどと、関係者の発言を紹介する方法で原因を書いています。

羅列された障害を見ると、昨年5月、信金共同参加の東日本地域50信金でATMなどが止まったケース、今年2月には地銀共同で7行のATMが止まったなど、多少は影響が大きいトラブルがありましたが、他の6件は、顧客数の多くない銀行のATMや送金、外貨預金などが停止したという程度のことです。この程度で信頼が揺らぐものでしょうか?多くの顧客は預金の引出しなどに代替策を持っています。それに比べると、JRの方が、はるかに影響が大きい。それでも、メディアは銀行のシステム障害のような批判的な報道はしません。

21015年3月から上野東京ラインが開業して、便利になった人が多い。一方で、上野で下りる人には不便になりました。でも、便利になる人もいるのだからと我慢しています。問題は、宇都宮線、高崎線、常磐線の動脈が東海道線と繋がって、一部にトラブルが起きると、関係全線に影響がでることです。上野東京ラインの運行停止だけならまだしも、関係路線も一緒に止まってしまう。以前よりも、トラブルに巻き込まれることが大幅に増えました。筆者などは、時々、上野東京ラインに乗りたい時がありますが、遅れる訳にはいかない時は、安全を見て早めに乗ります。結局は、以前のように上野で乗り換える。その都度、なんだこれは?と思いますが、発展途上国に比べれば、数段マシだと自分を納得させます。そうです、期待値とのギャップが顧客の不満となり、信頼の低下となります。そう考えると、銀行のシステムに対する顧客の期待値が高過ぎるのではないか。それが当り前とメディアと行政が思わせてきたのではないかと思う次第です。メディアの中には、筆者と同じ意見の方も多いのですが、彼らの発信は、殆ど無視される。あ〜、日本だな、結局は顧客自身がコストを負担しているのにと思います。

上野東京ラインのトラブルは、個別障害の件数が特段に増えたという訳ではないでしょう。一部のトラブルが他に連鎖する運行態勢になっているから、被害を受ける人の数が増えたのだと思います。要は、インタフェースの問題でして、これは銀行システムのトラブルでも同じです。上野、東京、品川といったハブ駅と各路線を直線的につなぐからです。通過するハブを複数化して代替ルートを作れば、被害は軽減できます。ただし、経済効果とのバランスは別問題です。

銀行システムでも同じです。経済性を無視すれば殆ど止まらないシステムの構築は可能です。しかし、それでは事業として成り立ちません。最近のトラブルを見ると、ネットワーク機器関連がシステム停止の原因であることが多い。それもハード部品の故障というよりは、設定ミスやネットワーク機器の制御ソフトのバグが多い。その時に、オペレータが指示ミスをしてトラブルを複雑化させてしまう。そこで、言われるのは、マニュアルの不備だとか、オペレータのスキル不足です。記事では、専門人材が不足していると書いてありますが、金融機関に専門人材を確保できないから、専門業者とされるIT企業に外部委託しているのです。それでも、専門技術者がいないとされると、金融機関としてはどうすれば良いのか。

そもそも、この記事は何の目的で、このタイミングで掲載されたのか。記者二人の名前がありますが、筆者が会ったことのない記者なので、確認していません。何となしに勘ぐるのは、この記事と一緒に、みずほ銀の次期システムでは、早さよりも安全を重視するというコラムです。同行の次期シス稼働時期には、IT関係者や機関投資家が強い関心を寄せています。IT関係者は、本当にプロジェクトが順調ならば、もう稼動時期を発表しても良い時期では?という声が多く、機関投資家には、3千億とも4千億とも言われる開発費用の回収はいつから始まるのか?という疑念が強い。それに対する答えを記事で代替しているのか?などと思ってしまいます。

先程、ネットワーク機器関連からシステム障害が始まることが多いと書きました。これからは、ますます、外部とのシステム接続が増えるので、障害も増え、長時間化する可能性が高まります。専門家という帽子をかぶっても人間が対応できる筈がありません。事前に障害原因を予測できる使い方以外は全く行なわないとか、一部の障害を自動的に遮断する仕組みを作るしかありません。それは、インタフェースだけでなく、コア業務との連携にも影響するでしょう。行き当たりばったりの対応は混乱を増すだけです。やはり、全体アーキテクチャを見直す必要があります。みずほ銀次期システムが早く稼動して、アーキテクチャを公開してくれるのを待ちましょう。

                          (平成28年9月23日 島田 直貴)