金融機関のIT関連会社(富士総研IT外販部門は“みずほ”から離脱か)

日経コンピュータのサイトhttp://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20020808/1/

によれば、旧富士銀行のシンクタンク・IT子会社である富士総研はみずほ総研への合流を見送る決定を8月20日の株主総会で決議する予定とのことです。

富士総研2500人の社員の内、みずほ総研に移籍するのは、調査研究・経営コンサル関連の100名だけである。主力のIT部門の内、みずほ関連のグループは将来統合予定のグループIT会社に合流するとしているものの、外販IT部門とリサーチ・サイエンス部門は、独自の道を進むとの観測を報じています。

独自の道を進んだ場合は株式上場を目指すか、大手SIerとの合併/買収の可能性があるということです。みずほグループは株式売却益が期待できるそうです。私はそんなに世の中が甘いとは思いませんが。何故なら、大手銀行IT関連会社の人件費は世間相場の倍以上です。間接費や物件費を含めれば3〜4倍です。生産性がその分、高いのであれば許容できるでしょうが、むしろ生産性は低いのです。個々の社員の能力というよりは、開発の仕方が典型的なお役所仕事なのです。生産している実労働時間が極端に短いのです。会議ばかりです。加えて保有している技術が現代とはミスマッチです。

出資する側からすれば、それなりのアセットが必要です。安定した顧客基盤か特殊な業務知識、高度なソフト資産などが該当するでしょう。富士総研の場合は、後者二点に市場価値があります。この資産を核に、新しいアセット・ベースのITサービス用ビジネス・モデルを構築できたら面白いでしょう。社員もコスト意識を持って、自分の市場価値を高める努力を続けることで、これまでの特殊法人的風土から脱皮できれば、成功する可能性は高まります。

大規模なシステム障害の再発防止策とシステム統合推進策として、みずほグループはIT関連会社の統合を掲げました。経営者はまだ判ってないのか?と私は唖然としたものです。

IT関連会社を統合していたら、システム統合自体が更に遅れます。実現する頃には、みずほのシステムは更に時代遅れとなり、統合と同時に次期システム開発を始めなくてはなりません。まさにIT倒産の道まっしぐらとなります。その意味で、旧富士銀行ITグループの主力が中庭の池から外界に出て行こうとする心意気は、グループにとっても、富士総研の社員にとっても良いことでしょう。

UFJのユーフイットから三和システム開発が離脱したケースと合わせて考えると、人間が生産手段であるサービス企業の合併が如何に難しいかが想像できます。製造会社と違って、サービス・ビジネスには規模のメリット以上にデメリットが多いのです。人件費以外の固定費は殆どありません。その人件費は個々人によって生産性が極端に違います。中には仕事をしないで家にいた方が会社の生産性に貢献する要員もいます。生産性の大半は、個々人の能力と意欲で決まります。意欲を高めるためには納得いく目標と評価の仕組みが前提です。UFJもみずほも、システム統合という短期的目標のみを掲げ、その軋轢の中でチーム・スピリットを構築する機会を失いました。それを無理に合併させた所で、市場価値のある人材は瞬時に流出するだけです。IT会社が空洞化するのに、長い時間はいりません。

昨今のマスコミのお蔭で、銀行の経営者はITを理解すべきだということが通説となりました。次の段階では、IT人材をいかに活用・育成するかを理解すべきでしょう。ハード、ソフトなど製品は金さえ出せば誰でも何時でも入手できます。本当のITパワーは人材から発生すること、IT人材は銀行業務よりはるかに労働移動性が高いことを理解すべきです。彼らを喪失することは、工場を焼失した製造業みたいなものです。会社にしがみつくだけのIT要員に、市場価値のないことを考えるべきです。会社は組織的に社員の価値を増す仕組みを提供しない限り、社員のロイヤリテイは得られません。金融系のIT関連会社に最も欠落している機能です。富士総研が、金融系の枠を越えた展開をできることを見守りたいと思います。