SNSと金融サービス (銀行のSNS決済が広がる)

日経新聞の平成28年6月27日号記事です。銀行でヤフーウォレットやLINE Payを提供する例が急増しているとのことです。ヤフーウォレットは、三井住友銀など25行の口座が利用可能で、内21行が地銀だそうです。年内にはさらに地銀12行が接続する予定と言います。LINE Payは大手銀や滋賀銀などが対応済みで、近く十六銀が開始予定とのことです。中には、双方に接続する銀行もあります。銀行振込だと、銀行や支店が異なると送金手数料が必要ですが、SNS決済だと手数料不要か極めて安いというのが魅力です。

LINE Payで送金する場合、LINE Payアカウントに現金を預けます。(LINE Cash)そのチャージの方法はPay−easy、コンビニ振込、銀行口座から行ないます。上記銀行の動きは、ネット取引で銀行口座からLINE Cashにチャージできるようにすることです。チャージしたお金は、LINE Mall等での支払に使いますが、本人確認をきちんと行なえば他人のLINE Payアカウントに送ることもできます。その時は手数料はいりません。提携銀行のATMから現金を引き出せますが、手数料はかかります。

日経記事では、個人間送金は銀行収益としては大きくないが、かつては、銀行だけに許されていたという象徴的意味もあるが、銀行が他者と決済で協業することが当り前になったという書き方をしていました。確かにそうです。クレジットなどカード決済はSNS決済と全面競合していますが、銀行はSNSと協業する流れになっています。最近のクレジットは現金を置き換えることに戦略の重点をおいています。ネット決済は、現金とカードを置き換えようとしています。一度に置き換えることはできませんので、LINEのようにカードを発行するネット企業もあります。ドングル決済が、カード会社の最終兵器になるとは到底思えませんので、カード会社は、急いでキャッシュに変る位置を不動のものにする必要があります。

銀行が何故、LINEと組むかといえば、単純に利用者が多い、それもアクティブが多いということに尽きるでしょう。登録が簡単で電話もでき、チャットもクローズな相対、ないしはグループ内ですから、日本人に馴染み易い。昨年末時点で国内ユーザー数5800万人と2位で3500万のTwitterを大きく引き離しています。銀行が弱い若者や主婦の人気が高いのも、銀行が協業したい理由なのでしょう。

最近、チャットボットが注目されています。ネット企業だけでなく、マイクロソフトなども開発環境を公開しています。ボットはロボットを略称化して、人間に替わって作業を自動化することです。チャットボットは、利用者にとってはメインのメニュー画面となり、様々なネット・サービスやシステムとチャットで繋ぎます。例えば、銀行のコールセンター・システムと繋げておけば、顧客がチャットで質問や相談ができます。簡単な内容であれば音声でも構わない、

こうした使い方が広がると思われています。そこで、チャットの対顧客インタフェースとしての価値が評価され、チャットボットへの関心が急速に高まっています。それは米国でも同じで、Googleやマイクロソフトなどがチャットボットを提供して、シティバンクやウェルスファーゴ、バンカメなど大手銀行が次々とチャットとの接続サービスを提供しだしました。日本では、NTTソフトウェアやChatwork、ヌーラボなどが、チャットツールを提供していますが、まだ、銀行でチャットを本格展開するところはありません。

ニールセンが面白い調査をしています。人々が朝起きて一番に起動するアプリを日本人2463万人に関して調べたそうです。1位がブラウザで2位は携帯キャリアのメール、3位がLINEだそうです。学生に限るとLINEが1位でブラウザ、キャリアメールが続きます。主婦だとブラウザ、キャリアメール、LINEとなります。いずれの場合も、4位以下とは大きな差があります。しかし、GoogleMail、Twitter、FBなどがボットを通じて、個々人のメインメニュー画面を抑えれば、この順番は簡単に変ることでしょう。その点、LINEは既に良い位置を確保しているともいえます。一方のブラウザやキャリアメールが、いつまでユーザー・インタフェースのメインでいられるか、大変興味深い動きとなっています。

デジタル経済では経済源流データと顧客インタフェースの奪い合いが企業の盛衰を決めます。その点で、金融機関は不利です。利用者からすれば、面白くないし、急ぐ必要もないからです。証券のような市況の影響を受ける商品であれば、別ですが。顧客の関心が高く、時限性のある情報提供を行なうか、日常生活に不可欠なサービスを提供する企業が有利です。ブラウザやSNS企業、そして、モバイルデバイス・ベンダーは知恵の限りを尽くすでしょう。金融としては組む相手を、数多く作っておき、お客の動きに合わせて。中核となる提携先を変えていくしかありません。(それには高いコストがかかります。)または、彼らが提携を求めてくるような面白いコンテンツを提供するかです。

筆者の知人が経営する韓国系のIT企業があります。銀行が預金者に提供する貯蓄支援ゲームやポイントの集中管理を支援するソリューションを提供しだしました。確かに面白い。多くの銀行が関心を示しています。しかし、模倣しようと思えば簡単にできる。そこで、知財権で守るか、または、他者がついてこれないスピードで変化するかとなります。デジタル経済では、止まって守るより攻めて変る方が、成功確率が高いことは確かです。わが国の金融機関には、今はできないことです。結局は、アーキテクチャ、人材、スキル、予算、業務部門との連携、組織文化など、インフラ勝負となりますが、これを急いで再構築することが必要です。こうしてみると、既存の大手ITベンダーの出る幕があるのかとも思います。

                          (平成28年6月30日 島田 直貴)