マイナス金利と旅行積立


日経新聞の平成28年6月17日付記事です。阪急交通社が旅行積立の新商品を発売して、そのボーナスが年利換算で2.5%になるというのです。積立期間は6〜11カ月ですから、随分と高金利になります。電話でも申込みできますから、手軽な資産運用になります。HISの期間限定キャンペーンで年利換算8.4%という商品もあったというから驚きです。筆者の家では、HISを頻繁に使いますから、8.4%というのは、大きな魅力です。

これもマイナス金利のお陰だそうですが、日銀―銀行―旅行会社―消費者の間で、日銀マイナス金利がどう影響しているのか筆者には判りません。単純に考えると旅行会社が銀行から借り入れる金利が下がるので、何も顧客から高金利で旅行代金を前払いしてもらう必要はないと思うのですが。記事によれば、日銀のマイナス金利導入と同時に旅行積立の人気が高まって、旅行会社間の競争が激しくなったそうです。つまり、実質的に旅行代金が値下がりしたということですから、日銀の物価2%目標に逆行することになる。

風が吹けば桶屋が儲かるというのは、何が影響するか判らないと言う意味ですが、確かに風が吹いて、盲人が増え、盲人は流しで生活費を得るので三味線がたくさん売れて、三味線用の猫の皮を使うために猫が減り、ネズミが増えて、それが桶をかじるので、桶屋が儲かるというのは、因果関係として無理があり過ぎます。まだ、証券会社のシナリオ販売の方がマシだ云々と肴話になります。金融政策というのは、誠に難しい。直接、桶を買えば話は早いのですが、それではマクロ経済としての効果はない。どうしても、迂回に迂回を重ねるので何が効果を出したのか、邪魔したのか判らなくなる。その点、消費者は単純で賢い。自分に有利で合法であれば手を出し、ブームを引き起こす。

旅行会社だけでなく、デパートや大手スーパー等も同様の買い物券を販売しています。5%などの実質金利は当たりまえです。イオン銀などは、住宅ローンを低金利にするだけでなく、イオンショップでのキャンペーン割引や通常の買物割引を加えると、ローンを借りても金利負担はマイナスになるそうです。筆者の自宅近くにイオンがなく、食品や日用品を買う機会がないのが残念ですが。でも、銀行にこうした芸当はできませんから、競争条件としては不公平です。

同日付の日経に両替のポケットチェンジ社が、海外旅行から帰国した際に、使い残しの外貨を電子マネーに交換するサービスを始めるという記事がありました。7月には羽田空港に専用機を設置し、ドルとユーロに対応するそうです。端末機に外貨を入れて、ICカードをかざすと、スイカかアマゾンのギフト券などに交換するそうです。交換レートは為替次第で、同社は1,2割の手数料を取るとのこと。硬貨も対象というのが便利です。同社の試算では、海外から持ち帰って保管される外貨の総額は年に3600億円と見込まれるそうで、それもコインが多いそうです。重くてかなわないので、次回、渡航する時にも家に置いたままという人が多いと思います。将来は、中国や韓国の電子マネーにも対応する予定だそうです。

ただ、最近では海外でも電子マネーというか、XXカードで乗り物に乗ったり、物を買ったりできる国が増えました。現金という扱いに不便な貨幣は減りますので、同社の外貨とポイント交換がいつまで続くビジネスか?とも思います。韓国ではポイント・電子マネーバンクという銀行サービスが大流行だそうです。銀行が主体となり、提携先企業のポイントをまとめて電子マネーに交換します。半年で300万人以上が利用するようになったということです。確かに、我々の財布、特に、女性の財布はポイント・カードだらけです。共通ポイントも大分普及しましたが、それでも、種々雑多なポイント・カードを持ち歩いています。レジで言われないと、その店のポイント・カードを持っていることも忘れ、ポイントを使うことも忘れてしまいます。それを電子マネーに変えたり、預金にできたり、各種支払に使えたら便利ですし、発行側も供託金管理など面倒を省けるかも知れません。韓国のケースではポイントの権利確認、権利移管のルールなどがどうなっているのか全く知りませんが、やがて日本でも実用化されれば良いと思います。もっとも、これもデフレ脱却に逆行するかも知れません。それとも消費拡大に貢献するでしょうか?やってみなくては判らないというのが本当のところでしょう。

我々は、今の状況から法定通貨、仮想通貨、電子マネー、ポイントなどを利便性や法的効力などで使い分けていますが、やがてはスマホのような媒体に集約されるでしょう。すると、それを交換したい、統合したいとなります。それを市場で行なうのか、その市場はパブリックかプライベートか、それとも相対で行なうのか。中には、証券界のダークプールのように銀行が疑似市場を作って相対交換を取次ぐのか。どれも、ITを使って簡単に仕組みを作れますので、要は取り決めの問題となります。

現在、金融審議会では、市場取引WGが開催されています。市場の役割やルールを見直す予定です。そもそもは、HFTが市場の公正性を歪めていないかとの問題意識からG7等で見直すことを決めています。ただ、有価証券取引だけでなく、デジタル経済で様々な権利関係が電子化されます。当然、その権利の交換、売買、分割、統合などが行なわれます。ポイント交換や外貨のポイントへの変換などの業者が、そこで得た知見や経験則を使えば、更に面白い価値交換の仕組みを作れるかも知れません。金融機関は、それにどう対応していくのでしょう。銀行や証券だけでなく、保険会社も無関係ではいられません。契約者、被保険人、受取人などの権利や債務を流動化したらどうなるか、ややこしいことになりそうです。その点、今のフィンテックは単純でおとなしいものです。

                            (平成28年6月21日 島田 直貴)