消費者金融(阪急電鉄が新規参入)

日経ビジネスのサイトhttp://biztech.nikkeibp.co.jp/wcs/leaf?CID=onair/biztechによれば、阪急電鉄が9月に梅田駅構内に消費者金融店舗を開設するとのことです。昨年に買収した大新クレジットビューローをステーション・ファイナンスと社名変更し(ブランド名:スタッフイ)、駅構内・書店「ブックフアースト」・阪急百貨店などに年内だけで100店舗ほど出店予定だそうです。

セリングポイントは、乗車駅で申し込み手続きを行い、乗車中に審査、降車駅で与信を受けられること。来年導入予定のIC定期券・切符と会員カードを一体化することでの利便性。乗車距離や回数などと合わせた優遇サービスなどをあげています。

阪急としては、乗客数が減少し続けているので脱鉄道を進めており、駅構内に書店や高級食品スーパーを設置するなど事業の多角化を図っています。消費者金融への参入もその一貫とのことです。日経ビジネス誌は、1日あたり180万人もの乗降客の情報をICカードで抑え、大手消費者信用会社の駅前支店に対して駅内支店を展開すれば業界構造を塗り替える可能性があるとしています。

私は金融ビジネスの差別化戦略のポイントは、商品・価格・チャネル・付加価値サービスの4つと昔から考えていますので、阪急の試みには基本的に賛成です。規制が強くて商品や価格で差別化できない場合や、今のように金利が機能不全の状況下ではチャネルが最も大事です。昭和60年代に都市銀行に対して、コンビニや鉄道と提携するように働きかけたことがあります。特にDKBや三井銀行は大手小売業と、富士銀行や住友銀行は鉄道業と親密な取引関係がありましたので、駅の券売機の横にATMを並べて、その壁の裏側ではベルトコンベアで現金管理できるようにしたら面白いなどと、パチンコ店のような仕組みも考えたことがあります。どの都銀も大変面白がってくれましたが、それだけでした。

今回の記事から判断する限り、阪急の戦略が全面的に素晴らしいとは言えません。

@    阪急ブランドと消費者金融顧客層とのアンバランス

阪急沿線は高級住宅地が多いそうです。一方、一般の消費者金融の優良顧客は年収400万円以下です。使用目的は生活費です。返済しないと自分が一番困るので、貸倒れ率は3%未満です。むしろ、大手銀行が提供するフリーローンの方が圧倒的に貸倒れ率が高いのが実状です。銀行の無担保ローンは、年収500〜700万層を狙っています。しかし、この層の消費者金融に対する需要は余り大きくありません。金利が高いからです。むしろクレジットカードや総合口座の当座貸越で短期の資金ショートを補っています。その上、貸倒れ率が高いのですから、儲かる訳がありません。阪急は何故、クレジット・カードにキャッシングをつける形で参入しないのでしょう。消費者金融の高金利に眼が眩んだのでしょうか?対象セグメントが見えません。

A    顧客利便を勘違いしていないか?

新規申込みをして、電車移動中に審査を受けるなどということを誰が期待するでしょうか?

IC定期券と一体化して、どこをどう移動して、いくら借りたなどという情報を全部抑えられてでも、些細な優遇サービスを欲しがるでしょうか?そんなに細かい情報を掴んで何にどう使うのでしょうか?流行のワンツーワンを追求するのでしょうか?まるで、全体主義国家の国民のような有様になるでしょう。阪急の企業文化とも違うように思えます。ITは細かい情報を個々に使うよりも、分析加工して使うインテリジェンスに利用価値があります。お客様と宅配便貨物を一緒にしてはいけないと思います。

専業の店は、顧客が入り易く(他人から見られないように)してあり、中は明るく、清潔で応対は親切です。対面による審査技能も極めて高度です。個客を管理するよりも、大切にしています。高収益をあげているのは、それなりの理由があります。

B    審査回収ノウハウがあるのか?

大新クレジットの人材とシステムがあり、経営トップに元レイク社長を採用しているので、審査ノウハウと業務手順は存在しているでしょう。しかし、客層もチャネルも全く異なってくるので、既存のノウハウ・データ・システムをそのまま利用できるとは思えません。信用供与ビジネスで最も重要な審査モデルと信用DBは、ターゲットとする顧客層・チャネルと適合できているのでしょうか?

消費者金融市場は、徐々に飽和状態となりつつあります。不況を受けて不良債権も増加傾向にあります。専業大手の攻撃的新規投資は止まっています。とはいえ、市場の拡大余地はまだあるでしょう。新しい営業戦略と商品・サービスが前提です。阪急には、試行錯誤を繰り返す覚悟で推進して欲しいものです。