クラウドファンディング資金供給増える

日経新聞の平成28年4月26日付記事です。クラウドファンディング(CF)主要3社の残高が昨年末で523億円と前年比7割増だったそうです。maneoが377億円とダントツで、SBIソーシャルレンディング、日本クラウド証券が続きます。クラウド証券が昨年組成したファンド数は220と前年比8割増で、こうした資金調達手法が拡大しているが、海外では数兆円を集めるファンド運営会社もあり、日本ではまだまだ成長余地が大きいという内容です。ちなみに、貸出利息は5%前後が多いとのこと。

4月21日付の日経新聞には、千葉銀行がサイバーエージェントのMakuakeやミュージックセキュリティズのセキュリテと提携して、CFサイトに資金需要者を紹介して、新規事業の創出を支援しているとの記事がありました。千葉銀としては、自ら融資できない要件の顧客を紹介することで、地場産業の振興や地域資源の掘り起こしを図るとともに、CFサイト運営者からの成功報酬で新たな収益源を開発できる可能性もあるとしています。

両記事の記者は恐らく同じ人なのでしょうが、大きな記事を続けて掲載するということは、編集者にCFを促進しようとの意図があるのでしょう。記事を読む時には、成長率よりも絶対額と日本の資金調達市場やマネーフロー全体での位置付けを頭に置きながら、解釈する必要があります。米国では云々を鵜呑みにするととんでもない方向違いを犯す危険があります。

CF市場は、2013年頃から成長が拡大しています。矢野経済研究所調査によれば、2012年の残高が69億円しかなかったのですが、13年123億、14年197億、15年287億と急成長しています。日経記事の残高が大手3社だけで15年末523億円ですから、随分と異なる数字ですが、恐らく定義の違いなのでしょう。国のAIやロボットの新市場規模は30兆円などといった数字と同じで、算定方法を細かくチェックしないと、数字だけでは信用できません。新聞も政府も自分が発表した予測数値の結果評価(反省というべきか)を行なうことはありません。競馬や株の予想と同じです。必ずあたるのなら、他人に教えずに自分だけが投資(投機?)するのが自然です。他人の予想を頼りに賭けて損しても、文句は言えません。

滋賀銀行が11年に地域創生ファンドでCFを主導しました。その後、信用金庫を含めて地域金融機関には、CFに前向きなところが出てきました。最近、それが増えたのは、マイナス金利の影響もあるかもしれませんが、地域金融機関の多くが、地域創生の為に、新商品や新プロジェクトを支援することに力を入れ出したことが大きいのでしょう。規制当局の監督・検査指針などからすれば、財務データや事業計画だけでは融資できないが、何か可能性を感じられる。その企業のやる気や真面目さ、能力も評価できる。何とか支援したいと考えた場合、CFはとても便利です。小口出資者が利用者の立場で、その案件を評価してくれます。つまり、真剣な市場評価ができます。資金需要者と供給者の間でコミュニティができる。必ずしも同一地域内ではないでしょうが、それでも、地元企業を囲むコミュニティを作れるのは心強い話です。

先日、30代後半を中心としたIT企業企画担当者の集まりに参加しました。投資の話になったのですが、財務指標だけで投資の是非は判断できない。その産業や企業のことを細かく調べる時間もない。だから株には手を出さない。だけど、こんな新商品を創りますから、これに出資しませんかと言われれば、自分の関心のあるものなら判断できるし、失敗しても納得できる。何故、こういう投資手法をつくらないのか?という意見がでました。ヒット商品を出してもその企業の業績が落ちることはあります。しかし、信託やSPCなどでリスク対象を限定できます。やはり、金融機関の側に、投資ニーズに応じた商品開発の努力が欠けているのだと感じた次第です。

矢野研調査では、CFの内訳は貸付型が最も多くて72%、ファンド型が15%、購入型が12%、寄付型が0.5%でした。ミュージックセキュリティズが東日本大震災の際にセキュリテ被災地応援ファンドを設立してCFを世に知らしめました。そのスキームは1口1万5百円で寄付金が5千円、出資金が5千円、手数料が5百円だったそうです。うまい組合せです。商品購入枠を組み込んでも良いでしょう。こうした発想は、なかなか金融人からはでてこない。何故でしょう?だから、オープン・イノベーションが不可欠だとなるのでしょうが。

金融庁は11年に検査マニュアルを改訂して、CFによる調達資金を資本性劣後ローンとして資本とみなすとしました。銀行とすれば、資本強化された先であれば、融資をし易くなるかもしれません。ただ、いまのCFは期間が短く、金額も小さいのが課題ではありますが。フィンテックでハッカソンが流行っています。金融商品のアイディアソンやハッカソンを開催する金融機関を聞いたことがありません。資金需要者と供給者の双方の立場から、新しいアイディアを集めるのに便利な手法だと思います。付き合いのある金融機関に提案しようと考えています。

                          (平成28年4月28日 島田 直貴)