歩くロボット (ヤマダ電機が接客サービス実証実験)


日経新聞の平成28年2月2日付記事です。ヤマダ電機が2月1日から横浜のテックランド青葉店で実験を始めたとの記事です。米ベンチャーのフェロウ・ロボッツが開発したナビーという自立歩行型ロボットに売場案内をさせます。顧客の問いかけに対して、今は本体前面のタッチパネルを通じて案内しますが、3月にはAIによる会話機能を追加するそうです。システム構築は日本ユニシスが担当しました。

金融機関の人から、ロボットを何に使えばよいのか?と聞かれます。今は客寄せ程度しか効果が見込めませんが、FinTechのロボアドバイザーや、昔からのエージェントという判断支援するソフトウェア技術もロボットと言えばロボットです。株などのシステム売買もその一種と考えてよいでしょう。しかし、質問されたロボットとは人型ロボットのことです。日本人は人型ロボットが好きです。鉄腕アトムの影響でしょうか。人型ロボットにAIを載せて、UIをリッチにしないと金融では使い道が限られそうです。

先日、ある大手金融機関系システム会社の顧客向けセミナーで講演しました。議事進行役はNAOでした。とても流暢にかわいらしく話します。一回だけ機械的な発音をしたのですが、これは主催者がわざとそうしたそうです。そういえば、顔や手を若い女性にそっくりにした人型ロボットがありますが、余り人間に似せると人気が出ないそうです。気味悪さが先立つのでしょう。ですから、Pepperのような1メートル弱の身長でわざとオモチャぽく、かつ、可愛い顔をした方が親しみを感じてもらえるとのこと。

ソフトバンクは、PepperでIBMなどと組んでAIを活用した、より高度な双方向会話を多言語でできるようにするそうです。先日、汐留で開かれたpepperworldを見にいきました。大変な来場者数で、なかなかゆっくりと見たり質問したりはできませんでした。聞くと金融関係者は2、3%だそうで、小売業やイベント事業者、病院・介護の関係者が多いようでした。それとIT関連事業者です。その場で予約注文する人や、ソフト開発の協業会社と商談する人が多いのには驚きました。月額5万円程度から使えるのですから、客寄せパンダとしても、安いものです。ソフトバンクならではの価格戦略です。

滅多にこうしたフェアに出向かない筆者が出かけたのは、病院・介護サービスでどう使えるかを見たかったからです。会場には100台は超えるかというPepperが並んでおり、1人でこの部屋にいたら怖そうというのが第一印象でした。どれも胸にタブレットをぶら下げています。順番待ち案内など簡単なサービスばかりで、病院でのサービスも順番待ちや院内案内、血圧測定などです。介護では何ができるのかと思ったら、認知症気味の高齢者にゲームやクイズで脳の活性化支援といったものでした。指示はやはりタブレットから行ないます。筆者が期待したのは、双方向の音声認識で高齢者と世間話や思い出話ができることでしたので、早々に引き揚げてきました。年寄りの多くはタッチパネルやキーボードが嫌いです。

2月2日の日経記事によれば、日産がPepperを販売店100店ほどでの導入を決めて、自動移動機能を追加するそうです。自動運転技術を利用します。これにSiliなみの会話機能がつけば、利用分野は急速に広がるでしょう。多言語対応も進むでしょうし。

以前、大型家電量販店の経営者から話を聞いたことがあります。フロア当たり数十人の店員を配置しているが、彼らの行動分析をすると、顧客に商品説明など販売に直結する活動は全体の3割未満で、在庫確認や配達手配、支払処理、そして、売り場案内が7割近くだそうです。これを何とか合理化したいが、個々の業務毎にシステム対応をすると膨大なIT費用がかかってしまう。自分達がIT関連商品を売る側にも関わらず、紺屋の白袴を地でいっているという悩みでした。在庫管理システム、運送配達システム、顧客別の優遇サービス管理、当日の割引幅管理システム等がバラバラで一元的に使えるようにするだけでも大変だということでした。銀行など金融機関と同じと思ったものです。ロボットにいろいろさせようとすると、システム全体のアーキテクチャが問題となります。

最近、製造業向けに人間と共同作業できる製造ロボットが発売されたという記事を見て、何のことかと思いました。近くに人がいると危険なので、これまでは一定範囲内に人がいる場合はアームを動かさなかったということです。それをセンサーで人を感知して接触しないようにしたのです。まだまだ、ロボットには改善発展余地が沢山あるということです。それにしても最近の進化速度は滅法速い。

金融では、後方処理などにロボットを使うようになるでしょうが、人型である必要はありません。ATMコーナーの案内やイベントなどに本格的に使うには、もう少し時間が必要なようです。むしろ防犯ロボットやお掃除ロボットの方が、支店には向いていそうです。ソフトバンクが勧めているように、小売店、イベント会場、介護施設、保育室などで、その業者が人型ロボットを活用する際に、銀行が決済・精算などのサービスを相乗りさせると面白そうです。重要な技術としては画像認識や音声認識、そしてディープラーニングによるガイダンスなどが必要ですが、どれも実用化しつつあります。移動店舗や出張サービスに、そのロボットを連れて行けばお客も喜びそうです。ロボットが接客担当者を置き換えるとは思えませんし、客寄せ程度で止まっている方が良いような気もします。

                               (平成28年2月4日 島田 直貴)