地銀と郵便局の提携 (横浜、北洋が郵政と協議)


日経新聞平成12年12月31日の記事です。横浜銀行の寺沢頭取が郵政との連携を協議しているとd同紙に語ったとのことです。銀行代理店としての委託も考えられると述べたそうです。北洋銀行は、地域活性化ファンドの組成に郵政との共同参加を検討しており、地銀協会長行と第二地銀協会長行がそろって郵政との連携に前向きな姿勢を示したことになります。

ゆうちょ銀もかんぽも、資産運用先に困っています。貯金や保険で巨額資金を集めても、その半分は国債ですから、辛いでしょう。国や金融庁の要請もあり、地域活性化ファンドに資金拠出する流れにあり、政策投資銀行等政府系金融機関が取りまとめ役なので、郵政グループを目の敵にする地域金融機関としても抵抗が少ない連携方法です。

しかし、郵便局に地銀が銀行代理業委託をするとなると、全く話が変ります。どういう経緯でこういう発言になったのか?記事では、30日に寺沢頭取が日経新聞に語ったとしかありません。4日付日経新聞の金融欄「今年の展望 トップに聞く」の取材の時なのだと思われます。この記事で寺沢頭取は、ゆうちょ銀の限度額引き上げに好意的な発言をするとともに、「ゆうちょ銀と連携の議論を始めている。最大の魅力は店舗ネットワークだ。」と語っています。

両地銀協会長行が郵政との連携に前向きだという記事なので、金融庁辺りが要請した動きなのかと思いましたが、落ち着いて考えると、そうではないようです。そもそも、郵便局のネットワークを使いたい横浜銀行が、何故ゆうちょ銀行と協議するのか?大都市や県庁所在地などに234拠点しかありません。欲しいのは、郵便局網ですから、24000局を持つ日本郵便会社か、100%株主の日本郵政と協議する筈です。金融担当記者や地銀経営者が日本郵政グループの構成を知らない筈がないので、何とも妙な記事です。

筆者は、以前から地域金融機関が郵便局を天敵視することを批判してきました。国民の共通財産とも社会インフラとも言える郵便局網を利用させて貰えば良いではないか、100年戦争や神学論争やっている時代ではないと主張してきました。地域単位で地域金融機関と郵便局が協業する方法も模索してきました。ATM管理、物流、共同集中センター、共同店舗などなど様々なアイディアがあります。しかし、地域金融機関は、実務的な制約ではなく、感情的な拒否だけで、検討すらしない状態が続いてきました。先行して郵貯と提携したスルガ銀行に対しては、極めて冷たい態度を取ってきました。

最近、金融庁は、今更、ゆうちょ銀が融資業務に参入しても市場の成長性や融資関連ノウハウのなさなどを考慮して、普通の銀行になるのは無理と判断しています。海外での運用を含めて、資産運用に力を入れるべきであり、貯金による資金調達はもっと合理的に考えるべきだと言っています。そして、地域金融機関と足を引っ張り合うのではなく、協業できる面を捜すべきだとも言います。まさに正論でして、郵貯が郵政省や総務省ではなく、金融庁が主管する企業になった成果だと思います。

地銀が郵便局網を銀行代理店にするとどういうメリットがあるのでしょう?横浜銀の顧客が他地方に転居や旅行した時に、郵便局で預金を引き出せるかも知れませんが、騒ぐ程の意味はありません。逆に、郵便局には、既にゆうちょ銀の銀行端末機が置かれており、そこに横浜銀が加わると、横浜の銀行端末機も置かなくてはなりません。年に何回使うのか。そんなスペースの残っている局は殆どありません。地方の親から神奈川県在住の息子が遺産相続するとして、郵便局が仲介して親の遺産を息子が保有する横浜銀行の口座に移管できたら便利かもしれませんが。または、横浜銀行が投信のヒット商品を売り出したとして、それを北海道の郵便局が地元顧客に販売してくれたら有難いでしょう。その場合、その地域の銀行と横浜銀行との関係はどうなるのか?それこそ、大きな騒ぎとなります。

郵便局の側からすると、民間金融機関との協業は様々な問題があります。日経記事にあるように地域金融機関から手数料を得られるなどといった情緒的な話ではありません。銀行業務となれば、郵便、保険と窓口を分けて、端末機も別々です。複数の銀行の代理店となって、それぞれの端末を置くなど到底ありえません。担当する職員に至っては、元々が要員不足で大変です。現在、20万人近い職員ですが、各局に1人ずつ銀行代理店担当者を増やしても2万人以上です。それに見合う手数料1千数百億円を払ってくれるのなら良いですが。こう考えると、郵便局としては、地銀の代理店になってもメリットはなく、メガか野村証券と組んで、その商品を販売した方が、数段メリットがあります。

結局は過疎地域で地域金融機関が店を撤退させて、郵便局に代替させる程度しか採算をとる方法がありません。地元の反対は強烈ですから、局内に民間金融機関の出張所ブースを置いて外に大きな銀行の看板をぶら下げる程度になるでしょう。もっと、広く考えて、地域の公民館などを立て替えて大規模化し、住民の憩いの場、高齢者のディサービス拠点、保育所、診療所、郵便局、地域金融機関とゆうちょ銀の共同店舗などを集約できれば良いのですが、それには地公体を巻き込む必要があります。同調して動いてくれる首長が何人いることか。

20万人いる郵便局職員の半分が外回りです。その人達の顧客接点を活かした戦略的活用も必要です。幸いにも、モバイル技術が進み、専門的な金融ノウハウもディープラーニングを使った渉外支援があれば、相当カバーできます。現状からのにじみ出し戦法では、前に進みません。5年後10年後の技術を活用した姿を描いて、現在何をすべきか引き算で考える必要があります。郵便局も地域金融機関も、地域創生、高齢者支援、エコシステムなど唱えることは同じです。広く国民からワイルド・アイディアを募り、何とか特区などで、実験できたら面白いと思います。

ビジネスコンテストやアイディアソン・ハッカソンをやって、実現可能性のある組合せを選び出し、地域に焦点を絞った商流・物流・金融・娯楽・福祉の拠点を作る。それを郵便局と地域金融機関と地公体が主導する。ネットとリアル・インバウンドとモバイル装備の郵便局職員によるアウトバウンド・チャネルに地域に必要な機能を乗せるのです。それだけなら、ヤマトでもセコムでもコンビニでも良いのですが、認可業務である銀行業務をうまく使うことがポイントとなります。フィンテックなどより数段、国と地方の為になりそうです。地域金融機関としては、他人のネットワーク網を安く利用しようなどと横着で自己本位なことを考えずに、自らが主導して地域に必要な機能を取りまとめる努力をすべきだと、思いが飛んでしまった記事でした。

                         (平成28年1月4日 島田 直貴)