みずほ銀行がフィンテック連合に参加


日経新聞の平成27年11月8日付記事の見出しです。フィンテック連合とはなんのことかと思いましたら、9月30日に報道された欧米を中心とした大手金融22行のブロックチェーンを使った国際決済ネットワークの研究・実証プロジェクトのことです。アジアからは、MUFGだけが参加でしたが、みずほがこれに加わるということです。

このプロジェクトについては、10月2日付の当コラムで紹介しました。恐らく、みずほだけでなく、他国からも新メンバーが増えているだろうと思いますが、確認していません。前回は、世界トップクラスの銀行をこんなに集めるベンチャー企業R3とはどんな会社なのかと書きました。その後、教えてくれる人があり、少し、詳細が見えました。R3CEVというのが正式名称で、2013年設立の金融サービステクノロジー企業です。NYが本拠地です。

創業者のDavidRutter氏は、2013年までICAP(法人投資家向けの資金取引やデリバティブ取引のブローキングや情報サービスを提供する大手企業)で電子取引所部門の総括責任者をしていた人です。資金決済に精通しており、金融グローバルプレイヤーとの広い人脈を持っているそうです。それにしても、名だたる銀行や証券を世界各国から集めるパワーは凄い。ベンチャーとはとても言えません。

みずほが加わると少なくとも23行となりますが、プロジェクト名が判らないと呼び方に困ると思っていたら、Distributed Ledger Groupというそうです。意味深なネーミングです。レジャーとは、元帳という意味ですし、銀行などでは取引記録という意味でも使われます。大昔は、銀行窓口端末をレジャーマシンなんて読んでいましたっけ。Distributedがキーワードでしょう。

ビットコインのブロックチェーンでは、P2Pコンピューティングと分散(Distributed)DBが基盤技術です。ビットコインではGoogleのLevelDBが使われているそうです。ブロックチェーンの構成要素であるブロックはトランザクション(誰が誰に幾つのビットコンを渡す/受けるという単純なテキスト)を10分毎にまとめたものです。それを所定の不等式が成立する変数ナンスを見つける競争(これをマイニングと呼んでいる。)をして、最初にナンスを見つけた人が新規発行のビットコインを今は25コイン貰います。更に、ブロック内の取引に係わる手数料を受け取れます。

そのマイナーは約10社で大半を占めているそうです。10社しかない理由は、ナンスを求める無意味な計算と呼ばれるマイニングに膨大なコンピューティング・パワーが必要で、それに要したサーバー費用は1兆円とも言われています。電気代も年400億円と桁違いです。市販サーバーでは能力不足で、特殊チップを搭載した特注サーバーを使わないと、とても間に合わない。つまり、資金力と技術が必要で、誰でもできる訳ではないからだそうです。この10社の筆頭格なのがR3社だということです。

こうして見ると、この共同研究プロジェクトが何をしようとしているかが判る気がします。筆者は機関投資家間の資金決済取引ではないかと思います。例えば世界の店頭デリバ取引額は昨年700兆米ドルだったそうですが、その清算に要するコストは相当なものでしょう。それを高速化して実質的に無料近くにできれば、大変な効果となります。小口決済をかき集めて、薄利の手数料を受け取るよりは、はるかにマシなビジネスです。リテール決済そのものは、手数料ビジネスとしては、メディアが言う程には儲からない。

ブロックチェーンがフィンテックによるサービス革新のインフラ技術となりそうだと期待されています。どんなことに使えるかと大勢が考えています。電子記録債権などが適していると思います。でんさいは、大騒ぎするわりに使われません。3メガと全銀協が別々に運営しているからとか、オープン性に欠けるとか、いろいろと理由が言われます。まさに、ビットコインと同様なブロックチェーンで済むでしょう。ビットコインは管理主体がないと言われますが、それは単なる約束事であって、全銀協かメガのどこかが管理すれば良い。早いもの勝ちだと思います。

ABLも有望な対象業務だと思います。ABLと一括りにするから、時価がどうだとか、在庫管理の手法が違うとかできない(やらない)理由が並べられます。牛でも豚でも車でも、対象毎にブロックチェーン取引システムを作れば良いのではないか。各対象毎に、運用ルールを決めれば良いと思うのです。他にも保険契約、契約書、地域ポイントと全国共通ポイントの交換等々、いろいろな候補があげられます。それを制度を含めて運用ルールにいかに展開するかがノウハウということになる。

ビットコインは10分毎にトランザクションを整理して承認が行なわれます。それでは遅いという意見があります。そこで、もっと短時間で取引を占めるサブチェーンを作る動きが出てきます。しかし、10分というのは、ビットコインでの約束事であり、技術的条件ではありません。対象業務によって、運用ルールを決めれば良い。augerというフィンテック・ベンダーがあるそうです。市場の効率を上げるために、分散型予測市場を作っています。予測市場とは、例えば降雨量や積雪量を予測してそれに大きく影響される事業者が気候デリバティブと合わせて、リスクヘッジに使います。先物取引の多層化と考えても良いでしょう。ただの博打だと嫌う人もいる。しかし、価値の変動があるところに、金融ビジネスのネタがありますので、それをブロックチェーンに乗せることは技術的には難しくありません。

ただし、仕組みを理解して利用するのと、単に儲かりそうだからと参加するのとは、全く違います、その点、ブロックチェーンは単純なようで、深い。それに複雑な運用ルールが重なる。業務ノウハウとアーキテクチャ設計力が勝負となる。それに金融数理とITスキルが加わるとなると、速い段階で調査研究に着手すべきかも知れません。ITベンダーとしては、ブロックチェーンをクラウド・サービスとして提供することでしょうか。意外と大きなビジネスになるかもしれません。

                            (平成27年11月11日 島田 直貴)