共同ネットバンキングにAPI (NTTデータが発表)


ITPro平成27年10月22日付け記事です。NTTデータが個人向けネットバンキング「AnserParaSOL」にAPI連携機能を追加すると発表しました。同サービスは、約60金融機関が利用中だが、参加行は自社の判断でIBと外部とを直接接続させることが出来るようになる。NTTデータは、FinTech接続を想定しており、まずはマネーフォワード(家計簿サービス)とfreee(小規模企業向け会計クラウド)と接続できるようにし、順次、NTTコムや弥生との接続を進めるとしています。両社はNTTデータのオ−プンイノベーションコンテストの受賞企業で、受賞後10ヶ月をかけてAPI事業化を検討してきたそうです。ベンチャー企業としては人的、資金的に辛く長い時間だったでしょうが、大企業や金融の遅い時間軸に慣れないで欲しいものです。

APIですから、相手にAPIを公開すればよいだけで、あとはFintech側が対応することになると思うので、NTTデータがいちいち接続対応するというのは、APIといっても非公開で個別対応なのかもしれません。とすると費用はどのくらいで誰が負担するのかという問題が出てきますが、まずは、IBを外部システムと直接接続させるというのは、新しい動きですし、いろいろなサービス開発が可能となります。法人向けIBでは、取引明細等をダウンロードできる仕組みがありますので、今のところAPIに対するニーズは表面化していませんが、遠からず、同じ動きになると思われます。問題は、銀行がIBAPI公開に踏み切るかですが、NTTデータは横浜や京都など親密地銀と調整を始めていることでしょう。

複数の銀行やカード会社から残高や取引明細などをダウンロードして一括管理を可能とするアグリゲーション・サービスが米国等では当たり前で、多くのFintechサービスが普及しています。日本でも以前から複数の企業が提供しましたが、普及していません。ただ、最近はクレジット・カードの利用明細を取り込むサービスが使われ出しています。利用限度枠の余裕を確認する為もありますが、カード会社からの利用明細通知が少々遅すぎることが背景にあるようです。日常的な支払いにカードを使用して、その明細を家計簿に取り込む人も増えています。Webサイトで明細を確認できるカード会社もありますが、データ提供方法が異なるのが面倒なようです。筆者の友人は、Excelで作った家計簿にCSVデータを取り込んだり、画面を見て手入力しています。

米国でアグリゲーションが一般的なのは、税金の申告に使うからです。日本と異なり給与などの源泉徴収ないと言えるほど、稀なケースです。全ての個人が確定申告が必要で、各収入や支出には極めて多様な税率や控除条件があります。毎年の年明け行事ですが、多くの人が毎晩毎晩、申告書の作成と証明書類の整備に時間をとられます。アグリゲーションはその労力を軽減させる必須のサービスです。日本ではこうしたニーズがありませんから、米国の真似をしてアグリゲーションを有料サービスとして開始しても、利用者は殆どいません。今までに何社が参入して、人知れず廃止したことでしょう。

3行以上の銀行と2、3社のカード会社を主な利用口座とする人が日本人の大半です。自分の立場で考えて、アグリゲーション・プロバイダーにそれらのIDとパスワードを預けるでしょうか?日本の場合、取引照会専用のID、PWを導入している金融機関はありません。つまり登録したIDとPWを預けるということは、財布を渡すのと同じことになります。

今回はIB側でAPIを提供するのですから、アグリゲーションだけではなく、いろいろな使い方が出てきます。例えば、ECサイトの支払いボタンを押せば、購入者は細かな支払い操作なしで決済が済ませることができるでしょう。税金などの公金収納も随分と合理化できることになります。優遇ポイントを銀行と一般企業が一括でサービスすることもできます。支払いだけでなく、企業からの返金など送金も楽になります。

筆者は、今のFintechブームには危ういものを感じており、特に提供されるサービスが単発ものばかりで、いわゆるプラットフォームやインフラと言えるようなものに力を入れる企業が殆どありません。筆者の知る限りは、BTMUが力を入れるブロックチェーンやIBMの100種以上を提供するAPIが、それに該当する動きです。その意味で、今回、NTTデータが共同IBのAPIを提供するというのは大きな影響があると思います。日立やIBMのような共同IBサービス提供業者も早晩、提供することでしょう。知られていないだけで、既に、提供しているかも知れません。

マイナンバー制度では、遠からず預金口座との紐付けが義務化されます。税務署は個人の所得と資産を正確に把握できるようになります。金融一体課税が実現するということは、従来以上に金融所得に関する節税ニーズが高まることになります。アグリゲーションはあらゆる金融口座を対象としてニーズが具体化するでしょう。その上で、様々な節税商品や節税策が出てきます。つまり商品開発力が今まで以上に重要となりますが、その際には銀行、保険、証券、商品取引などがバラバラではなく組み合わされることでしょう。当然に海外資産や先物やデリバなどの取引手法が組み合わされることになります。

新たな小口決済が多様に出現するとしても、そのマグニチュードは些細なものです。ドングル決済等で扱い高が5兆円となっても、その手数料収入は500億円以下です。それを銀行や決済代行会社が分け合うとしたら、金融機関を支える収入源とはなりえません。小口決済の確保は、手数料収入よりも経済源流データの補足が目的になると思います。

アグリゲーションもさしたる収入になるとは思えません。インフラサービスとして極めて安いか、無料。ただし、顧客に完全な安心付きで提供して。その上で、上述の新商品や資産管理サービスを提供することが必要となる。無料でと言いましたが、金融の顧客には無料ですが、データを提供する銀行から手数料を取るモデルはありえます。銀行は、手数料は自分がもらうものという意識が強いですが、これからは、顧客を失いたくなければ、自分が顧客の代わりに手数料を負担するということになります。つまり、誰が、バリューチェーンのどこでアグリゲーションを提供するか、そこにより多くのサービスと顧客基盤をもったサイトを集めるかが勝負となる。まさにオセロゲームが始まる。Fintechは個別のアイディアもさることながら、ビジネスモデル設計力が問われる競争です。実は資金力でも技術力でもない。とすると全金融機関に知恵と情報で勝ち残る機会が出てきます。スピードだけが、何ともし難い。それはトップが補完するしかありません。

                                  (平成27年11月3日 島田 直貴)