銀行BtoB戦略(三井住友銀行)

三井住友銀行がBtoBに関わる施策を相次いで発表しています。日経金融7月24の記事では、法人向けインターネットバンキングのインフラとして、アイデントラスによる認証サービスとICカードによる本人確認をサービスインすると報道されています。そして、今秋には法人向けインターネット資金移動サービスを開始予定ということです。

昨年来、鳴り物入りで参入したBtoCのネット決済サービスの撤退が続いています。ビジネス計画、特に需要予測が甘かったのが原因です。ネットバブルの後遺症とも言えます。個人顧客にとってネット決済は便利な方が良いのは当たり前ですが、それ以前にコスト負担の壁が厳しいという現実を直視すべきでしょう。
その点、法人における入出金管理には莫大な代替可能コストが存在します。これまでは、安全性の問題から法人向けインターネットバンキングに積極的になれない面がありましたが、三井住友はその制約を打破するステップを踏み出すことになります。同行の本人確認と認証サービスは、利用企業間の取引でも適用されるそうですので、軌道に乗れば、普及が進まないECやBtoBの触媒になる可能性を持っています。

また、日経金融の7月23日号は、三井住友がEC取引で発生した売掛け債権の流動化を行なうサービスを、やはり今秋から開始するとも報じています。企業間決済では、減ったとは言え、まだ多くの手形決済が行なわれています。最近では、そのサイトが短縮するどころか長期化する傾向がみられます。発行側のキャッシュフローが厳しくなっていることの現われでしょう。しかし、このことは受け取り側の資金繰りに悪影響を及ぼすだけでなく、日本の決済システムを脆弱化させることにもなりかねません。先進国の決済はサイトを短縮する方向にあるのに、日本だけが決済リスクを増大させたのでは、国際競争力を落とすことになるからです。
売掛け債権流動化の仕組みは、銀行が専用のSPCを設立、EC取引で発生した決済予定金額をSPC経由で投資家にCP等の形で転売する。SPCは売掛け企業に即座に入金し、買い掛け企業からの支払はSPCが個別条件を設定するというものです。双方が、より有利な支払時期を選択できるメリットがあります。
このサービスは決済資金を融資ではなく、証券化の形で提供するところに目新しさがあります。流動化の費用は銀行融資の金利程度だそうです。銀行にとっては手形貸し付けの信用リスクを負担せずにすみます。まさにIT活用の金融サービスと言えるでしょう。

二年ほど前に、「ネット戦略が銀行の将来を決めるが、最重要なのがBtoBだ」と西川頭取が言っていたのを思い出します。しかし、具体的なサービスが出てこないので、やはり銀行業務に拘っていては新しいアイデアが出てこないのだなと思っていました。今回の新サービスは、取引企業双方のみでなく、EC運営者、銀行にもメリットのあるサービスと考えられます。

不安点は二つです。
第一は、証券化すれば何故かお金が集まりそうな気分になるのですが、本当でしょうか?投資家はいるのでしょうか?貸出金利と同じ程度の金利だとすれば、単に銀行が信用リスクから逃げただけのことです。銀行が逃げる程度のリスクを貸出金利程度で負担する投資家の意図が見えません。
第二は、ECそのものの普及が遅れていることです。現在利用されているECは、大手企業が下請け企業との取引に使っており、従来の電話やFaxによる受発注業務をインターネット化しているだけです。マーケット機能は果たしていません。受発注データ交換に、売掛け精算の金融機能を付加したがるECオーナーがどの程度いるのでしょう。むしろ資金力のある大手企業なら、自分で仕組むことになるでしょう。

いずれにせよ、コスト負担力のある(代替コスト余地のある)企業間決済のネット化が始まりそうです。銀行自身が英知を絞らなければ、誰かが始めることは確かです。既存機能と収入を守る限りは、縮小あるのみです。三井住友に対抗して、より多くの銀行が新しいサービスの開発を進めることを期待しましょう。