フェリカをデュアル化 (ソニーがビジョンを発表)


金融経済新聞の平成27年10月12日付記事です。ソニーとフェリカネットワークスが、10月1、2日にビジネス展示会を開催しました。そこで両社は、“かざす”ライフスタイルを提案し、2020年までにフェリカをデュアルカード化するとしてプロトタイプを展示しました。同時に、ウェアラブル型フェリカも数種類展示したそうです。リング型、ブレスレット型、チャーム型、キーホルダー型です。どれも面白い。

デュアル化とは、接触型と非接触型(NFC)を1枚のカードに搭載することです。接触型は、VISA、Master、JCBとフェリカを搭載します。NFCは国際標準であるTypeA/Bと技術的には国際標準であるが、海外では普及していないフェリカに対応します。つまり、現時点で普及しているカード仕様全てに1枚で対応できるようになります。米国などでは統合カードで複数のカード機能を1枚化する動きになっていますが、日本ではフェリカが先行することになります。

このデュアル化を実現するのは仏伊合弁のSTマイクロエレクトロニクス社のデュアルインタフェースチップです。接触型と非接触型(EMV)を一つのチップで処理します。32ビットのセキュアマイコンにより処理能力が大きく向上し、複数アプリケーションに対応するライブラリーを標準搭載しています。セキュリティもDES、AES、RSA、ECCに準拠しています。低消費電力、高速通信を実現とか、良いことばかりをうたいますが、競争の激しい技術分野ですから、5年後の2020年でも最先端であり続けるかはわかりません。

カード会社が発行するチップカードは、2〜5年で再交付します。これは、取引実績に応じて利用上限額を変更する目的もありますが、チップのセキュリティを強化する目的もあるそうです。通常、ハッカーといえばネットワーク経由での窃取をイメージしますが、カード・チップの情報を窃取する犯罪者集団が世界中にいるそうです。彼等はカードのセキュリティ・ガードを破るべく、技術開発に努めており、カードベンダーとの技術競争は熾烈なものがあるそうです。ですから、カード有効期限は最長でも5年で、更新が止むを得ないといいます。銀行のキャッシュカードのように20年以上も前のプラスティック・カードだなんて、海外の犯罪者は知らないから、攻めて来ないだけかもしれません。警察庁や金融庁は、本当にヒヤヒヤしています。

訪日観光客が日本で使うカードも大半はチップカードですが、実際には偽造カードが相当使われているそうです。セブン銀のATMでは、投入されたカードのチップを検証して真贋判定をしています。はじいたカードの扱いで、利用者とのやり取りが発生しますが、そのコストは随分と重いと聞いています。マイナンバーカードの有効期間は原則10年、子供は5年です。大丈夫かと思いますが、国としては迂闊に国民を脅せませんし、コスト負担も避けたいのでしょう。ICチップ搭載パスポートも一般的に10年です。最近は運転免許証もチップ搭載しています。それでも偽免許証が大量に出回っており、特に、市町村役場の窓口では神経をとがらしています。

経済産業省は、クレジットカードのチップ化(EMV化)期限を2020年としました。投資減税等の支援策を通じて、CAT端末の更改を進めています。中小のカード会社は辛いでしょう。金融庁は、銀行キャッシュカードを期限付きでチップカードに変えることを義務付けたいと考えています。マイナンバーカードの空き領域に、キャッシュカードやクレジットカードを組み込むことも検討されています。恐らく、そうなるでしょう。すると、マイナンバーカード1枚を持っていると複数の銀行やクレジットを使えることになります。

筆者がそうするかというと、多分、しないでしょう。銀行1行、カード1社、それも普段はあまり使わないカードを載せて、それは予備用。日常的に使うカードはスマホに載せるか、1枚の統合カードに集める。それもネットワーク決済が可能なもので、紛失や盗難の時には即座に利用停止できて、その時点での残高は保証されることが前提。利便性だけで判断する人は、それほど多くはないと思います。

そう考えるとフェリカのデュアル・カードは便利そうです。筆者の場合、最も使用頻度の高いのはスイカです。JR東はこのデュアル・カードを採用する方針です。そのスイカに普段使うクレジットカードを2種程度載せておく。できれば共通ポイントも載せておきたい。スイカ・クレジットもゴールドやプラチナがありますから、見栄を充たすことは可能です。銀行カードはできればスマホに載せる。スマホにはいろいろな会員証も載せたい。そして予備としてマイナンバーカードにクレジットとキャッシュカードも1種ずつ。そして、家にしまっておく。そうすると殆ど現金を持たずに済みますし、財布もスッキリします。韓国の住民カードのように1枚あれば何でもできるというのは便利ですが、なくすと何もできないという状況はいかにも拙い。

政府は、マイナンバーを普及させる為に、共通番号カードに何でもかんでも乗せようと思っているようです。それでいて、紛失や盗難時のことはろくに考えていない。普及策を考える際に、民間のマーケティング専門家を交えるべきです。世間離れした学者や役人、そして経済団体の幹部達が考えても、良いアイディアが出るとは思えません。

                          (平成27年10月13日 島田 直貴)