マイナンバー対応支援 (セコムが中小企業600万人の情報預り)

日経新聞の平成27年9月1日付記事です。セコムが中小企業のマイナンバーを一括管理するサービスを拡販しており、8月時点で既に100万人分の契約が確定し、更に地域金融機関57行とビジネスマッチングすることで、更に上乗せして600万人分を預かる見込みとのことです。

セコムのセールスポイントは、警備保障会社のイメージを活かして万全のセキュリティ体制、そして、収集、保管、使用、廃棄に関する一貫したコンサル、システム連携、帳票作成等をワンストップで受託できるというものです。価格面の情報は公表されていません。発表はセコム本体が行なっていますが、実際には子会社のセコムトラストシステムズになるのだと思います。セコムトラストは、セコムあんしんマイナンバーサービスとの名称でビジネス展開をしています。このサービスだと、初期費用20万円からで月額基本料が3万円から、従量料金がID当たり20円となっています。これを最低料金として、加えて企業側でのセコムとのデータ送受の仕組みに費用がかかるでしょう。

地域金融機関とのビジネスマッチングということですが、なかなか良いところに目を付けたと思います。中小企業で、税理士や社労士を使っている規模の会社は、それなりに制度の情報を専門家から入手しているでしょうが、それ以外の零細企業は、自社が何をしたら良いか判りません。実際、日経BPコンサルが調査したところでは、300人以上の企業でも制度の正確な理解度は20%前後ということです。規模が小さくなるほど、地方になるほど、マイナンバーの認知度は低く、制度開始に間に合うよう準備している企業は20%以下で計画があるという企業を含めても30%程度と言われています。

零細企業の経営者からすれば、やたらと新聞などで中小企業の認知不足や準備遅れが指摘され、特定個人情報保護委員会のガイドラインに違反すれば罰則を受ける可能性があると脅されます。政府が、よほど悪質でなければ即座に摘発することはないと言っていることは書きません。ですから、何かヤバソウだけど何をどうしたら良いか判らないという状況のままです。そこで出入りの地域金融機関に相談します。すると政府発表資料のコピーを持ってきます。担当省庁はイラスト入りで判り易く書いたつもりなのでしょうが、中小企業の担当者とすれば、検討を続けると最後に政省令などの堅苦しい条文で詰まってしまいます。コンサルを使えば良いではないかというかもしれませんが、形式的とはいえ、全企業の大半が赤字ですから、こんなことでコンサルに何10万円も払う訳がありません。ましてや多くのコンサル会社は百万円単位で値付けしています。

そこで、相談を受けた地域金融機関がセコムを紹介するというスキームが出てきました。その金融機関の数が地方銀行57行だというのです。第一地銀64行、第二地銀41行の内、57行というのは本当に凄い。信用金庫や信用組合を含めたとしても凄いと思います。33行の地域銀の名前が公表されています。全行から事前に公表する旨の了解を得ているのでしょうが、もし、事前承認がなければ大変な騒ぎとなります。

それと、ビジネスマッチングというのですが、地域銀から紹介されて成約したとして、どのようにセコムは銀行に謝礼を払うのでしょう?紹介手数料を払いたくとも、銀行の定款にはそのような業務はありません。下手すると銀行法違反です。銀行の子会社との業務提携契約を結ぶしかないと思います。または、最近、流行りの地方創生支援交付金の範囲で賄うのか?でもこれでは銀行側の収入にはなりません。ボランティアです。地域金融機関としてはそれでも良いのかも知れませんが。

また、対象を中小企業としていますが、それも抽象的です。300人を雇用するような企業であれば、給与や社会保険関係、支払の為のシステム化をしているでしょうから、マイナンバーのアウトソーシングにニーズはありそうです。数十人以下の規模だと恐らくPCに市販ソフトで処理しているのでしょう。果たして、セコムのサービス料金がこの層に受け入れられる金額なのか?

常陽銀行が面白いことを始めています。地元零細企業のマイナンバー対応が全く進んでいないので、制度の勉強と社内態勢構築の為のマニュアルと規程やチェックリストのひな型などをWORDやEXCELで収録したDVDを販売するのです。常陽銀のIT関連会社(略称JCS)とマイナンバー制度に強いITbook社が共同で作成して販売します。サンプルを見たのですが、特殊なことをしていない小規模企業であれば、自社の会社名、部門名、役職名などを打ち込めば、それで出来てしまうようになっています。ヘルプデスクもあります。価格は1セットで2万円だそうです。どこかの有料セミナーより安い。

会計ソフトなどを使っている企業で、共通番号ファイルを社内に持つのが嫌な場合は、そのファイルを貸金庫代りにJCSのデータセンターで保管するサービスも用意しています。(訂正:同社ではデータ預かりサービスを提供しておらず、番号保管管理用のセキュリティ対策を施したPCを販売します。お詫びして訂正させて頂きます。)常陽銀の狙いは単純です。小規模の法人取引先のマイナンバー対応を支援するに当たり、ITベンダーやコンサルなどのように、やたら対象を広げて大げさな対応(ITベンダー等は少々、便乗が過ぎると思います。)をさせるのではなく、法制度として必要十分な範囲で対応することを手伝えば良い。その為に、ITbookのようなマイナンバー精通企業に加えて、弁護士等法律専門家による検証も受けています。茨城県内の中小企業だけでなく、要望があれば、他県でも地域金融機関経由で有料配布することにしています。

セコムの大風呂敷を広げたビジネス戦略と常陽銀行の中小企業取引先を助けるというサービスは両極端かもしれません。その中間にニーズの存在する企業群もあるでしょう。ERPや会計ソフト会社などがカバーするセグメントかも知れません。問題は、マイナンバー制度は数年後には、大きく様変わりしている可能性が高いことです。その時に、企業が柔軟に素早く、安く対応できる為には何が必要か? 目先の対応だけでアウトソーシングして大丈夫なのか? ビジネスマッチングを取り持つ金融機関は、その点を理解した上で動くべきです。地域金融機関は売り逃げができません。

                             (平成27年9月3日 島田 直貴)