コンビニでの年令確認 とマイナンバー制度

平成27年6月20日付、毎日新聞石川県版が話題になっています。19日に県内コンビニ各社の地区責任者と県警と県の幹部が意見交換会をしたそうです。酒類、タバコ、成人雑誌等を販売する際の年令確認がコンビニに義務付けられているが、顧客とトラブルが絶えず、中には店員が暴行を受けたり器物が損壊されるケースもある。ついては、客側に身分証明書の提示を義務付ける条例を制定して欲しいとの要請がコンビニからあったそうです。

筆者も未成年者に酒やタバコを販売することが法律で禁止されていることを知ってはいましたが、年令確認の義務まであるとは知りませんでした。筆者の年令になると未成年と思われることは全くなく、店によってレジのタッチパネルに「20歳以上です。」という確認ボタンを押せといわれると、このシステムはアホか?などと思ってしまいます。20歳前後で、まして、若い顔をしている人(含む女性)は不愉快な思いをすることが多いでしょう。まして身分証の提示まで求められるとなると、なんで自分だけ、とか、いつもの店員は何も言わずに売るのに、とか怒りがこみ上げることでしょう。昔、成田の手荷物検査で係官に向かって「俺が悪い人間に見えるのか?」と怒鳴る人相の悪い老人を見たことがあります。さっさとカバンを開けた方が速いのにと思いながら、こういう人もいるのだと勉強になりました。

販売側に義務付けているのは、未成年者飲酒禁止法などの法律で、身分証での確認までは明文化していないことが、混乱の元です。店側は一連の手続きを定め、店員に毎月、確認書へのサインをさせていたが、店員が年令確認をせずにタバコを売ったとして、店は無罪、店員には罰金10万円という地裁判決もあったそうです。

こんな話を書いているのは、マイナンバーでも同じようなことが起きると思うからです。金融機関は、マイナンバーの提示を求める時には、法律で求められている旨を明記し、利用目的や証明に必要な書類等を記述したチラシを顧客に提示するでしょう。それでも、いろいろなトラブルが予想されます。

まずは、通知カードを受けとっていない人、受け取っても忘れている人、通知カードと合わせて提示する必要のある証明書を持参しない人などが考えられます。特に高齢者や未成年者の取引を親が代理する場合などは、更に複雑になります。中には、配当や給付金、利子など要らないからマイナンバーなしで手続きしろという客も出てくるでしょう。政府としては個人番号カードを持っていなければ、より不便にすることで制度の普及を図る筈です。マイナンバーの対象サービスを増やすことと合わせて考えるでしょう。

個人番号カードが何時、どこまで普及するかが、金融機関の番号収集負担の大きさと期間を左右します。住民登録先に居住していない人はどのくらいいるのでしょう。保険や証券の顧客は殆どが、正確な現住所を連絡していますが、十数億ある預貯金口座が対象となる時に、正確な住所の比率は何十%でしょうか? 現況確認できていない人達には、どうやって番号登録の案内をするのか。番号なしで税務署に通知をしたら、税務署は受け付けてくれるのだろうか? 駄目な時は、納付期限を過ぎた分につき、過怠金が取られるのだろうか。

通知カードを受け取っても、個人番号カードの発行を受ける為には、写真と証明書をつけて事前に発行申請を行ない、準備ができたという通知を受けてから役所に出かけて、本人確認と暗証番号登録を行なった上でカードを受け取ります。総務省の試算では、一件に40分を要するそうです。長蛇の列に待ち続ける人の率は何%でしょう?私なら、10分であきらめて帰宅します。まして、仕事を休んで役所に行く人が大半です。政府は、ようやく事の重大性に気付いて、本人確認が厳格にできることを前提に、居住地以外の役所でもカード発行できるように検討を始めるそうです。しかし、カードには写真を組み込む必要がありますので、申請書や写真の転送が必要となります。ますます、混乱することでしょう。役人の考えることは、この程度だと批判しても始まりません。まさか、コンビニで発行するわけにもいきません。銀行窓口やコンビニでカード発行したらとのアイディアも当初、自民党内にありましたが、結局は取りやめになりました。

こうした混乱に、銀行、証券、保険は巻き込まれます。既存客は多くは、郵便での番号収集となるでしょうが、新規客は窓口で収集することが大半でしょう。混乱するほど、番号流出の可能性が高まります。それを防止しようとチェックを増やせば、客とのトラブルも増えます。制度施行時に間に合わなくとも、よりスムースな個人番号カード発行を実現する為のアイディアを、金融業界は政府に提案して欲しいものです。役人より、はるかに利用者目線で仕組みを設計できる筈です。

証券会社や保険会社は当初から全面的に個人番号収集が必要となりますが、銀行は当面、投信顧客が中心ということもあり、番号収集管理のアウトソーシングを検討するところが多いようです。しかし、遠からず預金口座も金融所得として損益通算の対象となり、預金口座との紐付けも義務化される見込みです。預金者全てから番号を集めるのに何年を要するのか、マイポータル経由で預金者とO2Oコミュニケーションを行なえる可能性が高いこと、キャッシュカードが個人番号カードに吸収される可能性のあることなどを考えると、いずれ勘定系システムとの緊密な連携が必要になる等を考えて、アウトソーシングを検討すべきだと思います。といって、CIFやCRMに共通番号を組み込むのが良いという気は全くありません。

                                 (平成27年7月23日 島田 直貴)