女性顧客に対する金融サービスと
Fintech


ラグジュアリー雑誌のハースト婦人画報社が電通と協力して富裕層世帯の女性300人を対象とした意識・消費行動調査を公表しました。平成27年6月24日です。対象を世帯資産1億円以上または世帯年収2千万以上として今年2月に調査し、電通のd-campX調査(一般女性対象、サンプル数2749)と比較しています。

主なキーファインディングは、下記のようなことです。括弧内はd-campX調査データです。

@27.5%以上が自由に支出できる金額20万円以上(93.3%が5万円未満)

A積極的に資産運用しているのは35.0%(25.5%)で国内株式に積極的

Bスポーツクラブ、ヨガ、ゴルフ等に積極的が合計で62.8%(14.9%)

C子供の教育に金を惜しまない層が74.8%(45.0%)

D美容関連支出に積極的が44.3%(22.3%)

E中期的利益を意識するが50.5%、肉食的男性を好むが36.6%と草食系の13.3%を大きく上回る。そして日本文化を好む人が54.0%で海外文化13.6%と4倍近い。

そして意識パターンを大きく5タイプに分けられるとします。50歳代に多い大和撫子タイプ、35〜49歳に多い人生謳歌タイプ、35〜49歳の主婦に多いふんわり・守られタイプ、20〜34歳に多いミーハー・キラキラタイプ、そして20〜34歳で未婚で親が経営者が多い無自覚・隠れタイプだそうです。どうもこうしたパターン化とネーミングは苦労の割に無理があるように見えます。年令等デモグラフィック属性でパターン化しても、それに完璧に当てはまるケースは稀な為ですが、ある程度の傾向は掴めるでしょう。

今年4月に調査会社リサーチ・アンド・ディベロップメント社が、1959年〜1969年生まれのアラウンド50女性対象に「バブル体験世代around50女性の真実」という調査を発表していました。有料ですが、結果概要を公表しています。バブル期に青春を謳歌し、今でも仕事と家庭を両立させ、子育てがひと段落して自由な時間があり、世帯年収は1千万以上で小遣いは月10万円以上とのイメージをもって分析したところ、全く予想外の結果がでたので、レポートの標題が・・・の真実となったのだそうです。実際には、72%が今でも働き、世帯年収は633万円、小遣いは1.4万円。子供が小学生が2割、中学生が3割。家計が苦しいと感じるのは1、2割だが、老後に不安を感じる人が51%と他の世代と比べて突出して多い。ファッションに対する自信はなく、旅行回数も少ないとかなり質素な実態が浮かび上がったと言います。堅実な側面が多く、消費行動においては、ネットに偏らずにTVや新聞など多様な情報を参考にして購入決定をする。スマホの保有率が高く、DVDレンタルや音楽ライブ、食べ歩きなどの趣味も幅広いといった特徴もあるそうです。同社では、アラ50世代の影響を受けるアラ40女性にもかなり応用が効く特性が顕著だと言っています。

もう一つ、最近の調査結果を紹介します。週刊朝日の7月3日号に掲載された記事です。高齢者の9割が貧困化しつつあり、下流老人問題が懸念されるというのです。60〜64歳で経済的備えが充分だとする人の比率は3.6%で、かなり不足とする人が35.5%(内閣府調査)だそうです。貧困化に至る原因には幾つかのパターンがあり、それは、@病気や事故A介護施設に入れないBまともに働かない子供の援助C熟年離婚D認知症等があるが頼れる家族がいないというパターンだそうです。現役時代には成功していた人で、引退後も以前の習慣を変えられない人が陥り易いと言います。

これらの、調査結果を見る限りでは、金融機関にとってマスリテールは将来ともに収益性を期待できないビジネスと言えます。高度成長期のように将来は優良富裕層になる可能性があるのでといった、マスリテールの前提は全く成り立たない。それどころか、今は羽振りが良いが、将来は貧困化する可能性が高いといった層があるようです。ですから、1700兆円ある個人の金融資産を考えればリテールは儲かる筈、その資産の半分以上を高齢者層が持っているので、シルバー・マーケットが重要だという前提も当てにできない。ではどうするかとなりますが、それはやってみなくては判らない。一度は成功しても次は外れるかも知れない。要は多種多様な顧客ニーズの変化に対応し続けるしかない。

昨今のリテールビジネスはデモグラフィック属性により固定化したセグメント戦略では、非効率極まりないことは判っています。富裕層相手でなければワンツーワンなどやっていられない。そこでデジタル・マーケティングとか、マスカスタマイゼーション戦略とかオムニチャネルとかの概念がでてきます。しかし、それに沿ったマーケティング態勢ができていなくては、ビッグデータやBIを使ってITソリューションを導入しても実効性はない。それはFintechでも全く同様でしょう。今の金融界はFintechブームで、数多くのセミナーや記事が公開されています。しかし、どれもピンときません。どんなニーズにどんなサービスを提供するのかが見えないからです。殆どが米国事例のコピーですが、米国と日本とでは全く利用環境が異なります。

しかし、マイナンバー制度で2017年に開始予定のマイポータルが動き出し、それに金融機関も参加できるようになると事情が変ります。マイポータル経由でアウトバウンドの個別メッセージを流せるでしょうし、アグリゲーションも簡便にできるかも知れません。つまりカスタマーインタフェースの機能をを国が提供するマイポータルが担うかもしれない。とすれば、民間企業は個々の利用者に適したサービス・コンテンツを提供することになりますが、それは決め打ちでは効果を期待できません。多種多様なコンテンツ・サービスを提供し、顧客がその中から選ぶというパターンになります。

そこで、気になるのが、今のシステム体系と組織体制で金融機関にそんなことができますか?ということです。女性を含めたリテール客にアピールしそうなアプリやコンテンツを作る続け、直し続けるというスピードと柔軟性をどう実現するかが今後のIT戦略のポイントとなります。対応できる金融機関やITベンダーが出てくるか、楽しみなことです。駄目でも別の業種の誰かが実現するので構いませんが。

                              (平成27年6月25日 島田 直貴)