日経金融 13/8/8

ネット競売決済は伝統的銀行にとって戦略的市場か?

日本経済新聞2001年8月8日号で、ネット競売決済サービスにおいて、ネット専業銀行が優勢であり、既存銀行は遅れているとの記事が掲載されている。既存銀行が先進的サービスに弱いという論調であるが、筆者はむしろ、既存銀行の正しい判断の結果と評価している。

ネットにおける小口決済は、リアルビジネスに付随するコモデイテイ商品であり、市場としては金額規模も収益性も小さなものである。極論すれば、スーパーマーケットにおけるナイロン・ラップのようなものかも知れない。装置産業化出来ない(プロフエッショナル・サービス化しか道がないとも言える)既存銀行が参入しても、メリットが無いどころか、新市場を破壊してしまう恐れがある。

日経ネットビジネスの調査によれば、ネット・ユーザーの65%が、ネットオークション経験者或いは利用予定者である。約3000万人のPCネット・ユーザーの65%が、月に一回取引しても、月間で1950万件である。その全てをネット決済してもジャパンネットの振込手数料52円(iモードだと10円)で単純計算すれば、最大でも月間10億円の市場である。仮にネット・ユーザー、オークション取引件数の双方が倍増しても年間480億円である。(通常は、このような楽観的単純計算でビジネス計画を立案してドットコム企業は破綻していくのだが)
数多い銀行が参入しても共倒れになること間違いない。現状では、ネット専業銀行が、1,2社成り立つ程度の市場規模である。(30兆円のパチンコ産業どころか、2兆円の立ち食いソバ産業と比すれば、余りに小さい) 
今後、一段と価格競争、利便性競争は激しくなるだろう。既存銀行が、とても対応していける市場ではない。むしろ、公共料金を含めて、採算の取れていない小口決済をネット専業銀行に誘導した方が合理化効果を期待できる。当社の調査では、ネット・バンキング利用者の15.8%が、ネット専業銀行を利用する意思を持っているが、その大半は決済目的である。決して、既存銀行の収益源が減少する話ではない。提携などで積極的に協業すべきであろう。既存銀行にとっては経営効率が上がり、ネット専業銀行は顧客が獲得でき、何よりも顧客にとって、利便の向上と料金の低下は有り難い。既存銀行は、「決済は銀行固有の基盤機能だ。」などという古い概念を捨てて、是非とも、ネット専業銀行とのすみわけと協業を推進して欲しいものである。

ネット専業銀行にとっては、決済手数料で経費を賄えれば安定したビジネス基盤を確保出来る。更に、支払者、受取人双方の口座を持っていれば、その間で決済される資金は流出しない。仮に1兆円の資金が滞留すれば3%で運用しても年間300億円の収益となる。既存銀行は、この金額に目くじらを立ててはいけない。1400兆円の個人金融市場からすれば些細なものである。市場の5%つまり70兆円位は、新規ビジネスに渡して市場の活性化を図る方が、既存銀行にとってもメリットがあるだろう。5%を食われる前に自己改革するしかあるまい。