金融庁が決済高度化SGの中間整理


金融庁は、平成27年4月24日の金融審議会で決済高度化SGの中間整理案を提示して承認を得ました。これに関する報道は、日経新聞4月22日が、「決済、銀行中心から転換」「IT企業など参入促す」という小さな記事を掲載した程度です。メディアにおいては、もはや、関心が薄れ出したようです。それとも、複数のメディアに順番にリークしたので、記者から嫌われたのでしょうか。

中間整理で提示された今後の検討項目は以下のようなことです。

◇決済分野をクローズドな構造から転換して多様なプレーヤーによる競争的なサービス・イノベーションを進める。

◇銀行においても自前主義ではなく、オープン・イノベーション(外部連携による革新)を重視した体制とビジネス・モデルを構築し、戦略的に先進的ITを取り込むべきである。

◇特に主要行においてCMSの重要性が増しており、欧米主要行への遅れを取り戻すことが必要であり、制度的な障害があるとすれば、検討を進める。

◇電子記録債権が予定通りに普及、活用されていないことを省みて、記録機関間での債権移動や公的機関の支払における活用等を検討する。

◇決済インフラの改革の広がりやスピードが不足していることを考え、下記を検討する。

 ・送金フォーマット項目をSWIFT等国際標準に期限をつけて統一する。

 ・IPFA等のスキームによるACH相互接続を進めてローバリュー送金を提供する。

・居住者、非居住者を区別しないシームレスな決済環境を全銀システムで提供する

・全銀システムの送金限度額のあり方について見直しする

APN等、アジア地域共通の決済インフラ構築を積極的に支援し、参画する

・XML電文への全面移行をエンドデイトを含めて方策を検討する

・全銀システムの24/365用新プラットフォームへの多くの銀行参加を促進する

 ・モバイル決済等の新種決済サービスや他行間口座移管(EUや英国等における口座移管サービスをイメージしているのだろうが、突如、浮上してきた)、不正取引防止等新たな決済共通基盤を創る。

 ・複線的な決済システムが必要であり、迅速かつ機動的に高度なサービスを提供する体制のあり方

◇ノンバンク・プレイヤーが決済システムに参画する際のリスク管理のあり方

◇情報セキュリティ基準の設定と、その実効性を確保する方策、責任・損失分担のルール、利用者のセキュリティ対策促進

◇利用者保護や犯罪防止のための許認可制度、或いは、自主ルール等実効性ある対応策

◇改革の為の包括的アクション・プランを策定し、実行する為の体制

◇法制面に関する検討課題

 ・多様な決済サービス関連主体の事業展開を促すための適切なルールの構築

 ・銀行グループの業務規制範囲の見直し

 ・中間的業者の規制の在り方

金融庁としては、当SGをワーキング・グループに改組して、決済に関するわが国全体としての戦略的なアクション・プランを策定する予定です。関心を集めている銀行グループの業務規制見直しに関しては、具体的方針を示すことなく、今後の検討(恐らく半年強)としていますが、決済とITとを合わせて検討するということは、多様な変化要因の組合せとなり、着地の難しい議論となるでしょう。

この中間整理は、昨年末に提示した中間整理を踏襲しており、特に追加されたもの、削除されたものはない。敢えて言えば、決済サービス提供主体の株式会社化、ICカード/生体認証化のエンドデイト、ペイメントカウンシル設置等に関して直接的表現がなくなった程度ですが、検討から外されているわけではありません。

決済にイノベーションを取り込もうとすることに、筆者は大賛成である。その為にICTを活用することも、非銀行業を参加させることで顧客価値を増そうとすることも賛成です。しかし、銀行界は、想像以上に反応が鈍い。無関心とも見えます。行政が何やら面倒なことが始めたと考えているようです。しかし、決済サービスに限定して、この動きを見ると間違えます。

昨今のリテール・ビジネスは、顧客インタフェースと顧客エクスペリエンスの争奪戦だと言えます。BTMUは、親切にも公開の場でそれを明言して、Fintechに力を入れています。米国でのFintechベンチャーに、顧客エクスペリエンスを旨く利用して、膨大な顧客インタフェースを獲得するケースがでています。それに危機感と戦略的重要性を感じた金融機関がそのベンチャーを買収します。売る側のベンチャー経営者は、大金を手にして、新たな顧客エクスペリエンスを求めて、新ベンチャーを立ち上げます。この好循環が、Fintechの新陳代謝を高めています。

米国の事例を見て、つまみ食い的に模倣しても、さしたる効果を上げるとは思えませんが、何もしないよりは真似した方がマシであることも確かです。顧客インタフェースも顧客エクスペリエンスも、特段新しい概念ではありません。しかし、ICTによって零細なベンチャー企業でも膨大な情報や顧客層を握れる時代となりました。そこにはオープンだということと、フリーだということがあります。それを顧客価値の視点で活用するベンチャーの存在があります。銀行が資金力に任せて、こうした成功を飲み込んだとしても、その効果が持続するとは思えません。

個人客は、とても浮気です。そもそも、わが国には、オープン、フリー、ビジネス創造できるベンチャーがあるのかといった問題もあります。しかし、クラウドを利用して、たった2年で20万もの法人顧客を集めたfreeeのような事例が出てきました。要はUIを含めた顧客価値なのでしょう。制度に依存する既成の会計ソフトが窮地に陥るのも仕方ありません。制度とはルールやプロセスなどを固定化し、価値を感じないコストを強制するものです。そして、変化には全く弱い。浮気な個人と変化し続けるICTを対象に、金融審議会でどのような制度設計が行なわれるか楽しみなことです。

                                   (平成27年4月27日 島田 直貴)