保険の窓販支援システム (改正保険業法対応とオープン標準)

ニッキンの平成27年3月27日号の記事です。インテックとニッセイ情報テクノロジー(NIT)が、預り資産営業支援システムで提携するとのことです。インテックのCRMシステムFキューブ・シリーズの金商法システムとNITの保険販売管理システム「インプラス」を連携させて、来年1月にリリースするそうです。同日、両社が公表しましたので、ニッキンには1週間程前に連絡して、27日付で発表したのでしょう。

Fキューブは、90社程の地域銀に導入実績がある代表的なCRMシステムです。パッケージとは言いますが、実際にはコア・ソリューションを個別銀行にカストマイズして導入しているようです。ですから、各行の詳細な業務ニーズに合わせられると好評です。CRM、SFA、EBM、コンタクトセンター、ローン審査、AMLなどで構成され、金商法システムは、保険や投信などの窓口販売をCRMと連動して営業支援し、コンプライアンス対応します。

インプラスはNITが開発販売して、40社程の金融機関で実績を持つ、生損保販売支援システムです。申込管理、契約管理、代理店業績管理、コンプラ・チェック、他システム連携等の機能を持っています。

金融庁は来年、改正保険業法を施行して、保険窓販を含めた販売時における自主規制を強化します。その為に、今年4月に監督指針を改正して、1年間の準備期間を経た上で、来年5月に施行する予定とされています。

現在でも契約時に意向確認義務がありますが、改正されると販売提案する際に意向把握義務が発生します。これは、顧客の保険に対するニーズの存在を確認することで、押し込み販売や手数料目当ての商品選定を防止する目的です。具体的には、補償内容等に関するニーズをアンケート(用紙回答や口頭回答などで各社工夫による)で確認し、記録を保管します。意向確認記録は、通常、保険会社が保管しますが、意向把握記録は銀行等の代理店が保管することが多いだろうとされています。

インテックとNITの提携は、地域金融機関の保険業法改正対応に、最大公約の投資で対応し、最小公倍の顧客ベースを確保しようとする、極めて合理的な戦略と言えます。元々、日生とインテックは、日生本体のIT化でも密接な関係がありますので、話をまとめるのは難しくなかったと思います。どちらの提案かは判りませんが。

連携したパッケージでは、顧客情報照会や適合性判定まではFキューブで行ない、保険販売の場合はインプラスに移行して、意向確認、商品提案、コンプラ・チェック、申込情報入力を行なって、Fキューブに戻って交渉記録を作成する流れになるそうです。意向把握をどちらで処理するのか説明はありませんが、記録保管を銀行がするのであれば、Fキューブが担当するのでしょう。

金融庁は、投信や保険の窓販における消費者保護に、大変な気遣いをしています。銀行窓販という規制緩和を行なった趣旨と今の実態にかい離があるとの不満があります。消費者に金融サービス多様化を提供しようとしたのに、単なる手数料刈り取りの場となっているのではないかとの不満です。消費者からの苦情相談が多いようです。窓販対象の顧客層は高齢者が多く、銀行ブランドに対する信頼が厚い反面、期待とは違うというクレームが多いのだそうです。苦情を調べてみると、顧客が商品を比較して自主的に選択したというよりは、銀行側の推奨商品をそのまま購入する。その商品は販売手数料が高い傾向が明らかだというのです。高齢者の場合は、情報咀嚼力、判断力に問題のあるケースが多く、物忘れも多いので、後日、家族からのクレームに至るケースが多いようです。

となると、今後とも投信や保険の窓販に関しては、制度変更が頻繁に行なわれることになります、マイナンバー対応も、すぐに必要となります。こうした制度対応をベンダー側が行なってくれること自体は、金融機関にとって歓迎すべきことなのかも知れません。ベンダーの中には、マイナンバー対応を含めて制度対応丸受けを提案をしている会社があります。

ただ、懸念されることは、パッケージベンダーによるロックインです。システム対応だけでもロックインされることに危険な匂いを感じるのですが、売り方や商品選択までロックインとまでは言わなくとも影響力を持たれると、ノシつけて顧客を差し出すことになりかねません。基幹系の共同化と同じ過ちを繰り返すことにならないか?筆者なら、制度対応すら自力でできない金融機関とは取引したくないのですが。

日本の企業はロックイン戦略が大好きなようです。そんな時代は、はるか以前に終わって、今日ではオープン・ソースの時代です。インフラとプラットフォームはオープン標準として、その上でアプリケーション・サービスの競争をしつつ創意工夫をこらす。それでこそ、金融サービス革新が進むと思うのです。もっとも、わが国にオープン系という言葉はあっても、ベンダーオープンを実現しているケースは見かけません。どうも地域金融機関は丸投げばかりを考える。ベンダーもそれに合わせる。皆、同じなら、別々に事業展開する必要はありません。極限すれば民業である必要はないということです。

願わくは、インフラとプラットフォームにオープンな標準を作る企業か金融機関が出てきて、その上で、創意工夫に満ちたアプリケーションを超高速で超低コストに作れる仕組みが欲しいのですが。一部の保険会社で、こうした発想に基づく保険窓販支援システムの標準作りが行なわれていると聞きます。具体的内容を早く知りたいものです。

金融業界が長年、繰り返してきた業界内標準という閉鎖的な標準は、コストを抑えますが、停滞を余儀なくします。標準化の目的を履き違えています。変化や進化を阻害する標準は、今日では共倒れの原因となります。オープンでフリー(自由でコストがかからない)であることが、現在のITサービス競争のキーワードです。金融業界もIT業界も、IT産業の栄枯盛衰を良く精査して、金融サービスも同じ道を歩んでいることを肝に銘ずべきでしょう。

                                  (平成27年3月30日 島田 直貴)