プログラミングのネット講習ベンチャー


日経新聞の平成27年3月9日号の記事です。「スキルアップへIT技術指南」「営業・生産・・・専門家以外でもプログラミング」という見出しの大きな記事がありました。eラーニングやスクーリングで、子供やエンドユーザー向けのプログラミングを教えるベンチャーが6社紹介されていました。

講習内容は、日常業務に直結する実践的な内容で、1セッション3時間程度の講義や実技を30セッション程度提供します。身近なアプリをコーディングし、質問はTV電話やチャトで行ないますし、自習室に出かけて、インストラクターに質問することもできます。費用は13万円前後が相場のようです。社員研修として採用する企業も増えているそうです。

2社ほど、カリキュラムを見てみました。iPhoneアプリをObjectCやSWIFTで、androidアプリをJavaで、WebサービスをHTML、CSS、RAILS,JavaScript、PHP、Ruby等でハンズオンするコースがあり、自分に必要なコースを選択します。受講者の感想は、簡単なアプリであれば自分で作れるようになり、社内IT部門やITベンダーとの折衝が効率化した、何よりも自分の仕事をITを使って改善したり新サービスを考えだせるようになったとの評価がありました。

筆者がこの記事に関心をもったのは、EUC化以外にわが国金融機関のITパワー不足を補う方法はないと考えているからです。今のままでは、グローバル競争に勝てないばかりか、国内ではアイディア勝負ではなく、規模だけで勝負が決まってしまいます。ベンダー依存は金次第、自力開発は社員数次第ではあまりにつまらない。エンドユーザーにアプリを作って保守して貰えれば、量ではなく質の勝負が可能になります。

わが国のIT技術者は110万人、米国は330万人。(米国の外、インドや中国にも百万人単位でオフショア要員がいますが。) 内、わが国では75%程がベンダー社員、米国では75%がユーザー企業社員です。業務知識はベンダーよりもそれを本業とするユーザー企業の利用部門の方が強い筈です。米国のマネをしてウォーターフォール開発したり、やたら分業化すれば、オーバーヘッドの労力・費用・時間を喰うだけです。現在のサーバー能力は30年前の1万倍の能力で20分の1の価格です。この技術革新の恩恵を享受しなければ、余りに勿体ない。その意味で、わが国、金融ITはまさに、ガラパゴス化しています。

世界の金融サービスは、ネットワーク化・モバイル化とコグニティブ化が進んでいます。その結果、事務合理化から営業推進、付加価値サービスに重点を移しています。これまで、事務処理をアウトソーシングしてきましたが、営業までアウトソーシングするくらいなら、自分で事業を行なう意味がなくなります。

新しいIT関連技術は、米国発ばかりです。わが国では14兆円規模に縮んだIT市場は成長が止まったままで、世界市場3.8兆ドルの3%にまで落ち込みました。この国内IT業界に依存することは極めて危険だと言わざるを得ない。ユーザー企業としては、世界最先端技術を使って、より安く、速く、良いサービスを作りたい筈です。世界レベルに劣後した業界に依存し続けるリスクをどう考えるのか?金融機関の経営者にこうした問題意識をぶつけると、どなたもショックを受けます。しかし、数分後には、自社にはどうにもならない問題であり、競合他社も同じ条件だということで、話は終わります。何も変わらない。では衰弱死を待つ覚悟があるのかというと、そうでもない。

昨今、米国金融業界は、クラウド・ファースト、モバイル・ファーストがIT戦略の柱です。社内技術者も、急速に配置換えを進めています。ITベンダーは、スタートアップ時から世界市場を見据えて展開します。つまり、日本にいても、クラウドなどを通じて海外最先端技術やツールは使えます。そうなるとITを使ったサービス競争はアプリケーションの勝負となる。そのアプリはエンドユーザーが一番強い。エンドユーザー同士の競争に土俵を変えれば、日本の金融機関が海外勢に勝てるチャンスが出てくる。最近、こう考えるようになりました。つまり、国内の垂直統合型ITベンダーとの共倒れはお断りし、IT活用パワーで世界と競争するということです。

HTMLやJavaに限らず、日本発のRubyやシェルスクリプト・コーディングなどEUCツールは豊富にあります。これでエンドユーザーをIT戦力化して、彼らが作るアプリをIaaSやPaaSで動かせないか。問題は、EUCスキルをどのようにして持たせることができるのかです。この記事にあるように、1か月、13万円程度で研修できるとすれば、EUCの実現可能性が高まります。新入社員研修に組み込み、数年毎にリマインド研修を行ないつつ、自分で開発して業務改革に結びつけさせる。企業としても個人としても、業績に差が出る筈です。それで昇進や昇給を決める。これからは、アウトソーシング、インソーシングと並んで、EUC(セルフソーシング)を組み合わせることになります。

膨大な数のIT要員を社内に抱え込む米国大手金融機関に比べて、わが国はコストもスピードも数段優位になる可能性がある。少なくも、今より遥かにマシになります。当然、IT部門の役割は大きく変化します。企画、PMO、セキュリティ、標準管理、コスト管理、スキル管理、ベンダー管理、システム監査などが重要となります。こうした新たな姿に変容することは容易ではありません。慎重で確実なトランジット・プランが必要です。しかし、経営トップが主導すれば、難しいことではありません。一番の抵抗勢力は、メインベンダーかもしれません。

                                (平成27年3月12日 島田 直貴)