Fintechと決済高度化 (三菱東京UFJがコンテスト開催)

平成27年2月19日に三菱東京UFJ銀行は、FintechChallenge2015というビジネス・コンテストを発表しました。三菱グループ企業や野村総研が協力し、運営を支援するそうです。協賛会社としてアクセンチュア、キャップジェミニ、KDDI、じぶん銀、マイクロソフト、シスコ、HP,日立などが名を連ねています。

このコンテストは、ベンチャーや個人からデジタルバンキングに関する新たなビジネスモデル、サービスアイディア、技術などを募集し、優秀な提案に対して総額600万円の賞金を出すというものです。テーマは、@新モバイルサービス・Webプロモーション手法 A個人向けの新しい決済サービスの二つです。

BTMUが銀行には珍しく、こうしたコンテストを実施する背景は何でしょう? 推測するに@米国でFinTechという決済や会計に関するソフトを提供するプレイヤーが続出しており、銀行サービスのデジタル化と相まって、急速に普及しています。アグリゲーションを主体とするmint.comのように1200万ものユーザーを持ち、インチュイットが1.7憶ドルで買収するような事例もあります。伝統的銀行としては、アイディアやデザインに優れたソフトを入手するだけでなく、利用者をまるまる顧客として取り込むことを期待しているようです。

A背景の二番目ですが、金融庁が現在、進めている金融審議会・決済高度化SG(スタディグループ)の審議内容とその結果として期待される規制緩和があります。金融庁は、銀行の小口決済サービスに新風を吹き込むことで金融サービスの革新を推し進めようとしています。日本の銀行に、欧米のようなサービス革新が現れない原因として、他業禁止原則によって銀行と一般産業の連携に制約があり過ぎること、ベンチャー等による革新的なアイディアに、銀行が資本出資できないことなどがあげられています。

金融庁としては、こうした規制を可能な範囲で緩和する方針ですが、従来のスピード感とは全く異なり、政省令で可能なことと業法改正が必要なことを分けて、できるものからスタートさせようとしています。読売新聞や日経新聞等に、小出しのリーク記事が続けて報道されています。こうした記事を、個別に鵜呑みにして、今度、XXが開放されるなどと騒いでいると、流れを読み間違えます。金融審議会の資料は公開されていますが、その資料通りに制度改正が行われるわけではありません。ただ、大きな方向性は見える筈です。

米国のように、銀行がFintech系ベンチャーに出資(現在は上限比率5%)できるとして、果たして使えるアイディアやソフトが、日本にあるでしょうか?筆者も数軒、アイデァを有料ソフト化しようとしている新興企業を知っています。米国等での事例を日本で商品化しようとするのです。若くて、柔軟で頭が良く、話をしていると、とても清々しく、頼もしい青年達です。しかし、銀行相手のビジネスですから、意思決定が遅い、最後にちゃぶ台をひっくり返される、梯子を外される、契約に至っても支払いまでの運転資金に苦労する・・・・で気の毒なくらい苦労しています。

加えて、米国のアイディアを元にしているので、日本の慣習、制度に合わせようとしている内に、肝心のサービス・コンセプトが崩れてしまうことが多い。例えば、家計簿管理です。米国では全国民が所得の申告制ですから、家計簿管理は、そのまま納税処理に直結します。その点、日本での家計簿管理は、支出の可視化です。米国では、小切手やクレジットでの支出が多いので、明細が残ります。複数金融機関での入出金をアグリゲートするニーズがあり、普及しています。その点、日本では小口決済は相変わらず現金か電子マネーです。電子マネーは決済記録としては不十分です。最近は領収書をスマホで読み取りますが、便利とは言えません。やはり、日本の習慣や決済制度に合わせたFintechが必要になります。ただ、マイナンバーが普及し、金融一体課税制度が本格化すると、わが国でも個人の所得税申告手続きがデジタル化するでしょう。ここに、金融業界としてはFintech提供機会が拡大することになります。

BTMUがコンテストを開くのは、面白いアイディアを募集することと、この方面に優れたスキルを持つベンチャーや個人の発掘なのでしょう。それを最高250万円という賞金で入手しようとは、少々虫が良いような気もします。しかし、流石にわが国のトップバンクです。他行が、金融審議会の目指すところに気付いているか、いないかは別として、何もしない間に、BTMUは動き出しました。

私達が事務局を務めるNPO金融ITたくみsには、団塊世代が大勢参加しています。モバイル技術を得意とする若いベンチャー経営者も複数います。団塊世代の会員が生活実感に基づいてモバイルアプリの仕様をまとめ、それを金融機関の専門家に評価、エンドースしてもらい、モバイル・エンジニアがソフト開発する仕組みを作ろうと思っています。成果物はフリーソフトとして公開できれば嬉しい。600万人いる団塊世代の1%でも使ってくれれば面白い世界が作れます。無料でクラウド環境を提供してくれるベンダーがありますし、マルチ・プラットフォーム環境を提供してくれるベンダーもいます。特定の層に特化したFintechを面白半分に作って、順次拡大できたら個々人に合ったFintechが揃うでしょう。

これからの金融機関は、Bank3.0とかデジタルバンキングとか称される分野に注力することになります。それは銀行同士の競争に止まらず、ITベンチャーなどが味方にも敵にもなります。NPOのようなルーズリーな集団や個人との競争も出てきます。生活実感に基づくアイディアとスピードが勝負ですから、企業規模など関係ありません。垂直統合と水平分散の競争でもあります。どちらに軍配が上がるか楽しみなことです。

                                  (平成27年2月22日 島田 直貴)