ニューテクノロジーと金融チャネル (AI、ウェアラブル、ロボットなど)


平成27年1月に入って、金融でも使えるニューテクノロジーの実用化に関する報道が相次ぎました。驚きをもって伝えられたのが、三菱東京UFJ銀行が春から都内の一部店舗で接客ロボットを導入予定というニュースです。お堅い銀行の代表とされるBTMUが接客ロボットを本気で考えているというのが驚かれる理由です。

接客ロボットではソフトバンクやソニーが有名ですが、同行はフランス製で実証します。銀行ビジネスでのリレーションからフランス製になったという話もありますが、アルバラン社のNAOという人型ロボットは、19カ国語で会話できるそうです。高さ58センチ、重さ5.4キロだそうですから、誘拐されないようにガードマンを張りつけたら、コストも大変だろうという話もありますが、物見高い顧客が殺到しますので、ガードマンは不要だとする意見もあります。店頭案内や振込め詐欺防止機能なども考えているそうです。ロボットは対面チャネルに区分されるのか、デジタルチャネルに区分されるのかという議論もしましたが、最終的にはITを活用するのでデジタルだという意見が多かったのが、我々仲間の結論です。

このニュースの前日、9日には帝人が人の動きを感知する生地を開発したとのニュースがありました。センサー機能を持った記事で、その服を着た人の動きを電気信号に変えて無線で飛ばすのだそうです。ロボットを操作したり、スポーツ選手の動きを分析することを想定していると言います。金融機関の窓口担当者が着ていれば、強盗やお客に気付かれないように後方担当者に連絡をとることも可能ですし、ジェスチャーでシステムに指示したりデータ入力もできるでしょう。これだと対面チャネルのIT武装ということになります。帝人は2、3年で実用化する予定だそうです。

似た使い方ができるのが、富士通の指輪型ウェアラブルです。空中で指を動かし、それが文字入力になります。訓練すれば、相手に違和感を持たせずに、指を動かすだけで機器を操作できます。Bluetoothでスマホにデータを送信し、スマホのアプリで送信データを解析して文字変換したり機器操作に結びつけるということです。富士通は本年内に実用化して1万円程度の価格で商品化したいとします。ただ、利用シーンとしてヘッドマウントディスプレイと組み合わせて、ハンズフリーの作業を実現したいということです。HMDをかぶった担当者とコミュニケートするなら、接客ロボットの方が馴染み易いかも知れません。

昨年12月にも同様のニュースが相次いでいました。

例えば、みずほ銀行や三井住友銀行が、IBMのWatsonを使ってコールセンターのオペレーター支援を実現すべく実証実験を始めるというニュースがありました。これは準対面チャネルの担当者のサービス品質を大幅に改善しようとするものです。電話先の顧客には、マシン相手という違和感を感じさせずに、膨大な情報の中から個別客に合った情報を整理して案内、ガイダンスしてくれるのですから、あの銀行のコールセンターは凄いということになるでしょう。顧客のロイタルティを上げたい(ナーチャリング)という大きな課題に強力な武器となりそうです。

その他にも、日立やNECがウォークスルー型の認証技術を発表しています。日立は指静脈認証でNECは顔認証です。顧客は認証機器の前に手をかざすか、顔を見せるだけで良い。こうなると暗証番号もカードも不要となります。店に入った途端に、奥から担当者が迎えに出て「XXさん、ようこそ。」となるでしょう。それをお客が喜ぶかどうかは個人次第ですが。こうなると、金融機関の店は、コーナーが仕切られて、事前登録した人だけが応接コーナーに入ったり、ATMコーナーに入ったりするようになるのでしょうか。マンションの出入りや劇場、デパートなどでも使われるでしょうから、やがて、我々は生体認証による出入り管理に慣れることになります。

ここで紹介した技術は、主にフロントというか、対顧客接点で使えそうなものですが、バックのトランザクション処理に関しては、13日にIBMが発表した新メインフレームz13が特筆に値します。1日25億件の処理ができるMIPS換算で11万1556だそうです。メモリーも最大10Tバイトです。分析機能や高速化を可能にするため、SIMDやDB2専用クエリアクセラレーターを搭載します。更に、セキュリティ強化の為に暗号化プロセサーや障害予兆診断機能の zAWAREをLinux対応にしています。まさに、大量高速処理を求められるネット・ビジネス向けのサーバーです。

我々団塊世代のメインフレームに対するイメージは、若い頃の数メガのメモリーでMIPSは数10です。それに比べると大変な技術革新です。問題は、こうした技術革新の恩恵を金融機関が享受できる技術的、組織的プラットフォームというかインフラをいかに整備できているかが問題です。何より頭の痛いことは、新しい全社アーキテクチャの設計とそれへの移行手順、そして質量合わせたIT要員の確保です。これらを備えた金融機関は、今現在ありません。金融機関、ITベンダー、そして行政当局の協力が必要です。頼みの綱は、遠からず出てくるであろう、金融庁の決済高度化SGを受けた規制緩和策ということになりそうです。今年は、金融ITが大きく変る年になりそうです。

                                  (平成27年1月29日 島田 直貴)