決済高度化 (全銀システム時間延長案の公表)


平成26年12月18日、全銀協は全銀システムの改革案を発表しました。現全銀システムとは別に、新システムを構築して24/365サービスを実現するそうです。来年始めに具体的検討を開始し、平成30年の稼動を目指します。技術的には余り複雑なシステムでないのに、3年もかけるのかという声もあるでしょうが、各行の参加時期や延長時間が異なるので、仕様は複雑になりますし、それに伴って利用者との約款や銀行側取扱い規程の見直しが発生します。何よりも障害が許されないので、総合テストだけでも1年は必要となるでしょう。

今回発表された案は、二つのキーメッセージを含んでいます。

@     従来と異なり、個別行が新システムへの参加を自主判断できることです。延長時間も一定の共通稼動時間を除けば、各行で決められます。従来は、全員合意で全員共通でした。その結果、大都市型銀行と狭域営業の地域金融機関とで、なかなか意見の一致を得られませんでした。全銀協も行政当局も、単純な全行協調方式では革新を進められないと判断したことになります。新システムに対応しない/できない金融機関は、銀行間決済以外に特徴あるサービスを追及せざるを得なくなります。社会主義的な銀行業界ルールの象徴が崩れます。

A     新システムが対象とする決済サービスは、インターネットバンキング等とあります。この「等」には、当然モバイルバンキングを含む筈で、その時にモバイル決済をどこまで広げるかが大きく影響します。クレジット、デビット、プリペイド、電子マネー、仮想通貨までを対象とするのであれば、その取引量は膨大なものとなります。米国の非現金決済の件数は、2012年度で1200億件という調査があります。人口や経済規模で考えれば、日本だと400億件程度となります。今の全銀システムは年間取扱い件数が13.5億件です。新システムのキャパプラは、リニア成長線で考えるととんでもないことになります。まして、その受け皿となる個別銀行の処理能力も大きな問題となるでしょう。仕向け、被仕向けで銀行にとっての処理件数は取扱い件数の倍になるのですから。

全銀協発表の直前16日に、金融庁は金融審議会の決済高度化等SG第8回会合を開催しました。それまでの議論を中間整理して、来年審議の論点を提示しました。そこには、全銀ネットについては、一切触れていません。もう済んだ問題ということなのでしょう。年が明けてから、我が国決済サービスのグランドデザインをまとめたいようです。そして、グランドデザインに基づいて制度改正ポイントをまとめるのでしょう。

幾つかのポイントは垣間見えています。

@     ペイメントカウンシルといった国全体の決済サービス戦略を立案し、促進する銀行・企業・当局による機関を設置する。

A     決済システムの運営・意思決定主体を株式会社化し、市場原理、競争原理を導入する。

B     他業禁止の銀行が、他産業と協業・提携したり、ITベンチャーを傘下に持てるような制度改正。

C     決済プロトコルのXML化、SWIFTフォーマット化、金融EDI標準の策定。

D     ICカード、生体認証の本格的普及を通じて決済ネットワークのオープン化

などです。

どれも個別銀行どころか、金融界だけでは実現できませんし、資金的にも対応できません。例えば、10億枚発行している銀行カードをIC化しようとすれば、カード代だけで1兆円以上の資金が必要です。それを国が主導することで、長期的に進めようとするのでしょう。事実、欧米先進国やASEAN諸国では、国による決済革新が進められており、国際間の協調も進められています。国内標準や、変化を嫌がる国民性と産業特性などで、我が国金融サービスは、世界の流れに取り残されつつあるという与党政府と行政当局の危機感は本当に強いと感じます。

金融庁は、以前から銀行界にビジネスモデルの再構築を求めています。銀行業界は単純な経営統合や、共同化などで問題の先送りを続けています。ITに関して言えば、勘定系オンラインを維持することの意味は相対的に減りつつあります。諸外国のように、商品やチャネルなどフロント業務が戦略主体となり、それには変化対応が不可欠です。自行単独では対応できないとして合併の道を選んでも、合併相手も対応できなければ、何の意味もありません。

金融審議会の最終結論が出る時期は未定ですが、時間的余裕はありませんから、早晩、出てくるでしょう。それに沿って、各金融機関は、自行の戦略と実行計画を固めなくてはなりません。当然、金融庁はあらゆる機会を通じて、金融機関の経営陣に、IT戦略に関連する質問を投げかける筈です。各取締役は、ITを勉強した上で将来を見据えた適切な回答をして、当局との議論に困らないようにしなくてはなりません。まずは、自ら電子決済やモバイル決済を使ってみることでしょうか。コンビニ収納も経験してみることです。それとも、ATMを使ってみるから始めるのでしょうか。まずは、自行の窓口で振込をやってみることを奨めたいのですが。

                            (平成26年12月19日 島田 直貴)