全銀協が全銀システムの時間延長を表明

全銀システムの時間延長が注目されており、連日のように日経など全国紙で報道されています。金融庁も金融審議会に決済業務高度化SGを設置して、決済サービスのあり方を諮問しましたし、日銀も決済業務を中心とした金融サービス高度化WSを始動しました。

平成26年10月17日付日経新聞が「銀行振込が便利に:全銀協が時間延長表明」と大きく報道しました。前日の16日に平野会長が記者会見で表明し、同日、全銀協のサイトでも全銀システムのあり方に関する報告(中間報告)として掲示されました。内容としては、政府の日本再興戦略や海外動向を踏まえて、稼働時間拡大を検討し、ニーズ調査でも相応のニーズがあり、ネット取引などでの活用事例もあるとしています。時間延長の方策としては、2つ上げています。現行全銀システム(2019年まで使用で、その後第7次全銀を稼働の予定)を利用して時間拡大する。もう一つは、別システムを構築して土日祝日を含めて拡大するとあります。最終的には12月中旬に決めるようです。(ニッキン記事)

日経新聞によれば、現行での時間延長は、夕方3時半までを4時半までとして来年にも実施、土日祝日対応は2017年度にも実施、24時間化は早期対応が難しいとのことです。土日祝日は、別システムを構築するのに3年は必要とのことのようです。24時間化が難しいというのは、全銀側の問題というよりは、全銀参加金融機関の中には、オンライン・システムの24時間対応ができない(技術的問題というよりは、顧客ニーズがなく、投資として成立しないから対応したくない。)中小金融機関があるからなのでしょう。

こうして見ると、別システムを構築して夕方4時半に現システムから切り替える。別システムは24/365化して、希望する金融機関のみが参加するという着地が見えてきます。それであれば、2017年には24/265を実現して、政府の要請に対応できるし、第7次全銀稼働まで待たずに済みます。この別システムには個人のネットショッピングや証券取引資金決済などに対応する為に、料金の抑制やXML化(既にできているのですが、これも対応していない金融機関が多い。)などが施される可能性が高い。そうすると、それまで不便だった多くの企業や個人が16時半移行にも資金移動指図を行うことになります。対応できない金融機関との取引を縮小するかもしれません。昔の遷都のように、新しい都に人がついていかず結局は元に戻るのか、それとも平安京のように反対派は旧都で自然縮小していくのか、興味深い展開が期待できそうです。

全銀システムは元々、地銀が構築した内国為替システムですので、地銀の発言権が強い。その地銀も大半がオンライン24時間対応を実現しています。多くは、共同オンラインが対応しているというのが正解ですが。24時間化の何がそんなに負担なのか、タイマーで日付が変る時点で当日取引を締めれば良いだけではないかと思う人が多いようです。問題はバッチ処理なのです。銀行のシステムは多種多様で大量のバッチ処理があります。給振、総振、口座引落しなどがボリュームとしては大半ですが、法定資料や社内資料なども種類が膨大で、大手行では数万のジョブが大量の取引ログと指定期日残高ファイルを使ってストレージとプリンターをフル稼働させます。その取引ログも単に処理順に蓄積してあるだけですから、締めた後に、バッチ処理用に科目別、部店別などに再編成する必要があります。それに2時間かかるか4時間かかるかが大問題でして、バッチが明け方までに終了しないと、オンラインを起動できない(その日の取引開始に必要な最新残高データができていない為)、いわゆるバッチ突き抜けという障害に結びつきます。

1990年頃に大きな問題となったCD/ATMの時間延長の為に銀行界が賛否両論に分かれたのは、それに対応できるか否かが理由でした。旧三和銀行が、その点で圧倒的に先行しており、最後は三和銀行だけがATM時間延長を開始しました。他行は、ATMだけにオンライン本体を稼働させるのは費用的に勿体ないというので、まずは、オンラインと並行してバッチ処理するオン中バッチという仕組みでバッチ処理時間を短縮してATM時間延長に対応しました。中には、FEP(フロントエンド・プロセサー)に普通預金のプログラムとデータ、そしてATM運用管理のソフトを搭載して、別システム化した銀行もありました。当時、筆者は金融ビジネス営業企画を担当しており、顧客各行の実情と時間延長対応の方策検討、そしてベンダーとしてのソリューション開発の企画立案で連日のように徹夜した懐かしい思い出があります。パッケージ採用行でも大きくカストマイズしていましたので、各行の事情はまさに千差万別でした。

今日では、オン中バッチは当り前ですし、バッチレス化して多くの業務処理がオンライン化されています。それが、銀行オンラインを巨大化、複雑化させた理由でもありますが。今頃になって、20年以上前に大騒ぎとなった24/365対応が現実味を帯びるようになったことに感慨を覚えます。一方で、それだけ長い準備期間があったにも関わらず、対応できていない銀行もあり、それを、顧客ニーズがないとか、不正取引などセキュリティ問題が悪化するなどの理由で反対する。時流を見ずに、厳しい競争環境(決済は銀行界に独占を認める時代でなくなったにも関わらず)を認識しない銀行もあるということにも驚きます。集団自殺する訳にはいきませんから、各行が選択できるようなオプション制にしないと、共倒れになることでしょう。今の全銀システムは、全行一律対応の設計(制度的にも技術的にも)になっています。

決済は、今は単独のサービスとして考えられていますが、遠からずECのプラットフォームとなり、商流との連動で銀行界のビジネスモデルを大きく変えることになります。8年サイクルの微調整ですむ筈もなく、これしかないという決め打ちも、失敗する可能性が高い。銀行サービスには、顧客オプションの多様化とアジャイル化が必要ですから、システムや制度もそのように変えるべきです。

                                                       (平成26年10月17日 島田 直貴)