地域金融機関のHP (Web構築管理ツールの進化)

ニッキン平成26年9月8日号に「地域銀でホームページの改善が相次いでいる。」との記事がありました。地銀や第二地銀がHPを改良して、取引深耕や若年層へのアプローチ強化に効果を上げているとの内容です。どんな改良かというと、メガドロップダウンを採用してクリック回数を減らす、店舗検索を導入した、良く見られるメニューを画面上位に移したなどが、例示されていました。操作性を改善して閲覧者が途中で離脱することを防止できるというのです。

数行の銀行名が例示されているのですが、ここでは表示しません。たまたま記事に書かれただけで、当該行が自慢している訳でもなく、少しでも操作性を上げようとする努力を否定するわけにもいきません。ただ、この記事を見て凄いとか、良いねと思う読者は少ないでしょう。先進的なWebサイトを構築している企業やWeb構築ベンダーからすると、何時の時代の話?というところでしょうか?しかし、取材した記者は感心したのでしょう。もっとも、ニッキンHPの旧態性は、自他ともに認めるところなので、この記者ばかりを責める訳にもいきません。

先日、CMS(コンテンツ・マネジメント・システム)のベンダーであるジゾン社の話を聞きました。CMSが日々進化していることに驚きました。以前から、「地域金融機関のHPは余りに原始的だ。大手ベンダーなんかに預けているからだ。自分で作れ。」と会う銀行マンに因縁をつけてはいたのですが、今のCMSは、単にHPの構築や維持のツールではなく、最近注目のカストマーエクスペリエンス・ツールに拡張されているそうです。いわゆるSEM(サーチ・エンジン・マーケティング)をコンサルなどが提供するのではなく、CMSに内包して自動化されます。最近ではCXMツールというそうです。CXはカストマーエクスペリエンスです。

CXMの裏側には、様々なサービスやDBが用意されており、地域や企業のIP情報を参照して閲覧者がリアル世界のどこから来たかを把握できます。GoogleやFacebookとも連携して個々人が何を見て、発信しているかも把握できるそうです。(GoogleはCookieを吸い上げてサーバー側に蓄えているそうです。)ヒート−マップ機能というのがあり、閲覧者の行動を可視化することで、サイトのどこに関心を示したかを判断することもできると言います。ここまでできると、閲覧者毎の好みや属性に応じて、コンテンツをO2Oにカストマイズできます。そして、カストマーエクスペリエンスが実現できるということです。

若い人達はスマホでネットに入ります。通販なども、PCよりスマホの方が閲覧や取引が多いそうです。スマホだとPCとは全く異なる画面設計が必要ですし、利用者は画面の文字を逐一読みません。女性は1秒で画面を移り、男性でも2、3秒で移ってしまうそうです。つまり、イメージで画面を読み、取引します。それに比べると、銀行のホームページは、昔ながらで、約款の固まりです。加えて何でもかんでもトップ画面に詰め込みますので、見憎いことこの上ありません。客層が違うというのであれば、30歳代以下は捨てたんだね・・・ということになります。

若年層の既存銀行離れが進んでいると以前、当コラムで書きました。個人の購買チャネルもネット通販化が急速です。銀行は全くついていけません。しかるに、若年層離れを、画面の視認性向上や簡素化で食い止めようと考えるのを、どう評価すれば良いのか。少々途方にくれます。

ネットで訪問してきた顧客が、SNSなどで何を見聞きし、発信しているかをビッグデータ解析し、その特定個人に合わせて画面を変える。Web Automationというのだそうです。筆者はモバイルの世界に全く疎いので、聞いたことのない話ばかりです。自分が浦島太郎なのか、突如、若い人たちが宇宙人になったのか。金融の世界の人達、それも、管理職級の年齢層とばかり、つきあっていると、自分がガラパゴスのイグアナになってしまうと危機感を抱く次第です。

さて、そのイグアナが、単なる絶滅種となるか、天然記念物で止まるか、羽をつけて空を飛ぶか。やはり、ガラパゴスの外に接するしかありません。最近、シリコンバレーに駐在員を復活させるベンダーが増えています。日本人同士で付き合い、毎日ラーメンと寿司を食べて、決定権は何もない。そんな事務所に何を期待するのかとも思いますが。

金融界の人や大手ITベンダーを含めて、我々、イグアナ種はノアの方舟を作って種の保存を図るべきか。それとも、早く絶滅すべきか。それとも、種の変換を図るか。それには別銀行を新設するか、既存銀行を新旧に二分するか。外から人材を集めるか。方法はいろいろとあるでしょうが、一遍には無理です。人口動態とわが国個人保有金融資産の長期的分布とマネーフローの変化を予測計算し、時間軸に沿って経営資源を配置することになります。

その時に、個人客を個客として一人ずつで見るのか、各種取引履歴やビッグデータを分析して、マイクロセグメント化するのか。恐らく後者でしょう。ただし、このセグメンテーションは頻繁に変化します。こう考えると、今のCRMやEBMの何とガラパゴス的なことかと気付きます。金融機関だけでなく、IT業界も新旧2種のハイブリッドにする必要があります。経産省は、相変わらず、大手の垂直ベンダーと中小SIer、そして一発芸ベンチャーの区分だけで考えています。これでは新陳代謝は高まりません。逆に言えば、この新旧移行を成し遂げる企業が勝ち残るということでしょう。

                                  (平成26年9月12日 島田 直貴)