国税が富裕層税務調査を強化 (超高速バッチ処理技術)

日経新聞の平成26年9月3日付記事です。東京、大阪、名古屋の国税局が超富裕層を対象に専担チームを立ち上げたということです。以前から、一定以上の収入や資産を持つ人を対象に、情報収集と税務調査を行っていたが、新チームは資産状況だけでなく、投資行動や節税対策の傾向を調べるそうです。今年から始まった国外財産調書制度によって海外に保有する資産の基礎データが入手できます。株式、現預金、不動産などが年末に5千万円以上あれば、翌年3月15日までに調書提出の義務があります。虚偽、または、正当な理由なく提出しないと1年以下の懲役ないしは50万円以下の罰金です。

違反すれば、査察などの対象となりますから、他の隠し財産も抑えられるでしょう。しかし、国外財産を抑えるのは難しい。何故なら、運用会社などに委託することで名義は転々と変ってしまいます。最後は、国内に持ち込む際に摘発して、芋づるで捕まえることになります。越境資金は外為法、国内資金移動は犯罪収益移転防止法が国税の武器です。

今度の専担チームは、脱税手口を調べ上げ、一定条件に該当する資金移動をトレースするのでしょう。米国歳入庁は、ビッグデータ解析の先進ユーザーです。高度なIT専門チームもあるそうです。日本の国税も先端ITを使うのでしょうか。ビッグデータに加えて、ビジネスルールやBIなども活用したら良いと思います。当り前ですが、稼ぐ以上の税金は取られません。正確に納税(税理士は節税を奨励しますが。)した方が、身の安全と財産の維持ができると判っているのですが、いざとなると、欲を出す人が多いようです。

国外財産というと米国FATCAがすぐに思い浮かびます。一時大騒ぎとなったこの米国制度も、今年7月から日本国内での確認手続きが開始されました。米政府の横暴だとか、日本では個人情報保護法違反になるなどと極めて評判の悪い制度でしたが、いつの間にか静かに適用が始まっています。金融機関にとっては、腹立たしいまでに負担の大きな作業となっているでしょう。しかし、本人確認が確実で、素データさえ蓄えておけば、バッチを廻すだけでレポートを作ることは簡単です。米銀はそうしています。彼等にすれば、邦銀が大変だと騒ぐ理由が理解できませんでした。

ある大手邦銀は、Linuxのシェルスクリプトを使った簡便な手法で超高速処理を実現したそうです。面倒なのは構造化DBやRDBに蓄えたデータをテキストファイルに落とす作業だそうで、これまで先進と思っていた技術が邪魔になっていたことに気付いたそうです。こうした単純業務には、Excel的な処理機能と巨大なスプレッドシートがあれば充分で、余計な機能は高いコスト、処理負荷などマイナスが多いことに気付くべきです。

先日、国際金融行政に長く携わった方と話をしていて、筆者が「FATCAでは米国はふざけている。」と言いました。静かに、しかし、強くたしなめられました。「租税回避は国の根幹を揺るがす大問題である。BRICsや発展途上国も同様である。租税回避額は、米国でGDPの15%、イタリアで27%という数字がある。高級官僚の不正摘発が続く中国に至っては、想像すらできない。米国だけの問題ではない。だから、スイスですら秘密銀行制度を放棄せざるをえなかった。先進国の金融機関が発展途上国に租税回避地を設けて、不当利益を得ているとの非難は、日本では報道されていない。・・・」と言うのです。

FATCA同様の制度を国際的に導入しようとの動きは、EUやOECDにも強くあり、順次、法制度の整備や条約締結が進められています。中国政府も、今年7月から企業の国外投資や収入を詳細に報告させる規則を発表したそうです。OECDでは、声の大きな国が一方的に情報提供を求めるのではなく、相互に情報交換する制度策定を急いでいます。日本も恩恵を受けることになります。

平成24年度税制改正で金融所得の一体課税が部分的に導入されました。順次、対象が広がるでしょう。平成28年度にスタートするマイナンバー制度は、課税の強力なインフラとなります。預金口座とマイナンバーの紐付けは、意外と早く実施されそうです。当初は、新規開設口座が対象でしょうが、13億の既存口座に対して個人番号や法人番号を取得して付番するのは大変な労力となります。

この個人番号を、顧客マスターに追加するか、独立したDB(ファイルと言う方が正確)にするかと議論になります。法によって定められた以外での目的に利用することは、罰則の対象ですから、妙な欲は出さない方が良いと思います。マスターを変更することは、膨大な確認テストなど余りに馬鹿らしい。まして、個人番号情報保護機関(第三者機関)の立入調査を受けて、どんな使い方をしているのか調べられるのも負担です。妙なことに使っていれば、厳しい刑罰が科せられます。それよりは、別建てのファイルにして、法的に必要な処理にのみ使用しているとフォレンジック・ログを見せるほうが無難で効率的です。

さて、この独立ファイルをどう作るか。ややこしい仕組みは止めて、単純に疎結合型にすべきです。ややこしくすれば、社会保険システムの二の舞です。ベンダーにはその方が商売になりますが、これが、わが国ITの効率化と革新を阻害してきました。前述したように、素データはテキストの縦型ファイルとし、分散で構わない。分析用にRDBで欲しければ二次DBとする。処理には、シェルスクリプトや表計算ツールを使う。妙にコード化をせず、データ項目をモデリングして、同名意義、異名同義のテーブルを作っておく。論理データモデルを作っておいて仮想DB化する。こうすればベンダーに委託せず、内製化できる筈です。この種の制度は、頻繁にルールが変ります。当局から調査依頼や報告提出要請が急に来ます。ベンダーに見積り依頼して価格折衝している時間はありません。Web技術と並んで超高速バッチ処理技術が、金融機関にとって重要な技術になりました。

                                    (平成26年9月5日 島田直貴)