オープン系基幹システム

東洋エンジニアリング(TEC)が、インドのタタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)と提携してオープン系の銀行基幹システム開発を行なうということです。日経金融新聞平成1275日号の記事です。

TCSはインド最大手のIT企業です。世界24カ国、91拠点、18千人の技術者で年間1200億円ほどの売上を上げています。1人当り年間7百万円ほどの売上ですから、インド企業としては大変な効率です。シテイやAIGのシステム構築に関わったことで日本でも知られています。

TCSは、昨年6月に三菱商事系のアイ・テイ・フロンテイア(ITF)とも提携しています。ITFはTCSを開発プロジェクトの優先開発ベンダーと発表していました。その成果に関する情報は持ち合わせませんが、今回のTECとTCSの提携は、銀行と信託の基幹系ソフトをジャパナイズ&カストマイズしながら構築するビジネスだそうです。TECは日本における営業活動とプロジェクト管理ノウハウを提供する計画です。

今回の提携が日本のシステム開発ビジネスの改革に少しでも刺激を与えてくれれば幸いだと考えるのですが、大きな不安が二点あります。

@    TECが顧客開拓できる可能性はどのくらいか?
最近、当社にも金融向けビジネス強化策を模索するIT企業が相談に来ます。よほど魅力的な市場と考えているのでしょう。しかし、実態は数社の大手ベンダーで寡占化されているのです。ニッチ・アプリケーション分野での参入機会はありますが、収益性を考えると、とてもではありません。大手IT企業の営業チャネル、資金力、基盤製品技術力など一朝に覆せないものがあります。TECは本業からして、生産管理、設備管理、物流には強いようですが、金融の世界でのコンピテンシーは未知です。

A    カストマイズを効率的・確実に出来るのか?
TCSの開発体制は、オンサイトで業務設計し、オフショアで作りこみを行なう方法です。顧客のニーズ把握と開発人件費の抑制を狙った典型的な体制です。ただ、日本の金融関係では、この方法で成功した事例を聞いたことがありません。結局は、オフショアで作業予定だった技術者がオンサイトで作業するようになり、ベンダーは日本水準のコストとなってしまい、顧客は言葉とアプリケーション(純日本的)のミスマッチでフラストしてしまいます。チーフ級のエンジニアは、両国間の往復で体調を崩すことも多いようです。
成功するためには、金融機関が常駐ではなくベンダーのオフショア開発を認めることが前提となります。最大のポイントは、アプリケーション・エンジニア(AE)でしょう。

AEは、両国の言葉を自由に会話・読み書きでき、自社保有ソフトと顧客アプリケーションの双方を熟知してなくてはなりません。顧客も、海外金融機関向けに作成されたアプリケーションのカストマイズを最少(業務を合わせることを意味します。)にする必要があります。カストマイズが30%を越えるようでしたら、新規開発の方が、効率的になります。在日の外資系銀行は、このような体制・方法で東京のシステムを構築していますが、それでもここであげた条件を満たすAE不足に悩んでいます。現在では、AEの市場価格は3万ドル/月ほどになっているようです。

この記事では、これらの制約条件には何も触れていません。ただUNIXにしてTCSを使えば、銀行基幹システムの導入コストが半減するという論調です。記名記事ではないので記者が誰かは判りませんが、論調からしてIT取材班三人のうちの記者でしょう。

金融の基幹システムをオープン系に誘導したいのは理解できますが、本当に定着させたいのであれば、もう少し正確で客観的な記事をお願いしたいものです。私は日経グループの記者で会った事のある人は多いですが、皆さん、よく勉強しつつバランスの取れた堅実な取材活動をなさっているのですから。