全銀システム時間延長に4オプション (全銀ネット)

金融経済新聞の平成26年8月4日号です。一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(略称:全銀ネット)が、全国銀行内国為替制度(略称:内為制度)のインフラである全国銀行データ通信システム(略称:全銀システム)の稼働時間延長を検討しており、10月に中間報告、年内に方向性取りまとめを行うとの内容です。

英国など諸外国で公的決済システムやATM稼働の24/365化の動きがあり、国内では代金回収における消し込みに使う付随情報改善の要求などが強まっています。特に、自民党の関連部会(財金部会、IT戦略特命委員会および資金決済小委員会など)や経産省系審議会では、銀行決済の革新を求める声が高まっています。それに対して、全銀協と一体である全銀ネットでは、現行全銀システムの改善で対応するか、次期全銀である第7次全銀システム(2019年末頃更改の見込み)で対応するかで悩んでいる模様です。

現在の検討オプションは、@全加盟行で平日稼働時間を延長する。 A 希望行だけで平日21時間化する。 B 7次全銀で24/365化する。 C 別システムを構築し24/365化し、現行全銀と並行させる。 の4案で、現在全加盟行にアンケート調査中とのことです。この4案に対し、前向きな意見もあるものの、そもそも時間延長のニーズに対する疑問の声や、事務・システムでのコストや負担増を不安視する意見も根強いそうです。しかし、全銀システムの否定につながりかねない別システム構築案を出したことは評価されるべきです。

これまで、全銀システムは顧客からのニーズに対して、8年毎更新の都度、小出しで対応してきました。法人顧客は、全銀システムというよりは、取引銀行との関係(技術的問題や事務処理態勢の問題等を含む。)で欲しいサービスが受けられないとして、銀行関連会社や決済事務のBPOサービスなどを使ってきました。つまり、銀行に言っても仕方ないとの姿勢です。一方で、個人の小口決済では、様々な代替サービスが普及し、昨今ではモバイル決済が急速に進むとともに、手数料率も3%を下回るように低下しつつあります。8年サイクルの銀行とドッグイヤーの時間差が、大きな問題として露呈してきました。消費者向けビジネスを行う企業や経済再生・創生を目指す国との認識ギャップが急速に拡大していることに、銀行界は気付くべきです。

今回、ATMや全銀の時間延長に対応したとしても、次から次へと改善要求が出てくるでしょう。銀行界が対応できなければ、別のビークルが作られることになります。こう考えると、別システムを構築する案が妥当です。それも、1年程度でスモールスタートさせることです。参加銀行は、自由参加が良いでしょう。信金信組等協同組合型金融機関は、全銀に業態単位で接続していますので、対応に長期間を要します。そもそも、規模の制約から採算が取れないのであれば、参加しなければ良いだけです。変化とスピードときめ細やかさが絶対条件のICTサービスと業界全体主義は相入れません。銀行界には、難しい時代となりました。

30歳代を中心とした世代が、既存銀行を離れ、ネット銀をメインバンクとして選ぶ傾向が強まっています。ネット銀顧客は、ロイヤリティがなく、金利や手数料ですぐに銀行を変えるとの見方もあります。しかし、米国でもこの年齢層のネットベンクへのシフトが急で、その理由が、決済やローンの利便性だということです。この世代は、預金利息で恩恵をこうむった経験がない。銀行は、資金の出し入れと決済、そして資金ショートを埋める手段とみなしているというのです。得心のいくシナリオでして、仮に金利が上がって預金重視に変っても、在来銀に戻るとは思えません。在来銀には、変化、スピード、きめ細やかさに対応できるインフラ、コンピテンシーがありません。ではどうするか。

別ビークルを作って、そこに新ビジネスモデルに対応できる意思決定メカニズム、人材・スキル、システム、評価制度、提携先などを持ち込むほかないと思います。在来銀行の組織文化ではこのスピードと柔軟性についていけません。こうした案は、講演や寄稿で積極的に提示するようにしています。しかし、意思決定権者の耳に入ることはありません。時々、金融業界メディアから依頼された寄稿に、筆者としては極めておとなしい言い回しで提言を書きます。しかし、編集者が反響を恐れて、関連機関に相談します。結果は間違いなく、ボツです。筆者は慣れているので、やはりねと、がっかりもしません。もっとも、ボツ原稿の方が、アングラで流通して喜ばれるのは面白い。

不都合な事実は、見ないし、他人にも見せないのが、在来銀行の風土です。彼らが、SNSを嫌いな理由は、言論統制ができないからと勘ぐってしまいます。それでいて、ビッグデータ活用だとか、スマートデバイスだとか言われても、顧客に喜ばれる使い方が出来るとは思えません。金融機関のイノベーションは、トップの頭から始めないと、何も起こらないようです。

                                             (平成26年8月6日 島田 直貴)