自民党が仮想通貨への対応につき中間報告

自民党IT戦略特命委員会の資金決済小委員会(福田峰之小委員長)がビットコイン等仮想通貨への対応につき中間報告を行い、了承を得たと公表しました。ITPro平成26年6月20日に掲載されていました。日経コンピュータ浅川記者の取材です。報告の骨子は以下のようなものです。(福田小委員長のブログより抜粋)

@ 仮想通貨に対する基本方針:自己責任とチャレンジを重んじ、規制せず暖かくビジネスを見守る。

A 仮想通貨は、通貨ではなく、物でもない、新たな分類の価値記録(価値を持つ電磁的記録)と定義する。

B 出資法(預り金規制)、銀行法(為替取引)、資金決済法、犯罪収益移転防止法等既存法を適用しない。

C 団体を設立して、届け出制とし、本人確認、情報開示、セキュリティ等に関するガイドラインによる自主規制とする。

D 価値記録と通貨、物、他の価値記録との交換には消費税(仕入税額控除可)、キャピタルゲイン課税を適用する。所得を補足するためのモニタリングシステムは導入しない。

預り金に関して取引者の余剰資金が発生して交換所等が一時的に保管することがありえるが、これはおつりとみなします。金融機関には、価値記録を扱う企業の口座を作るように協力を要請しています。

極めて妥当穏当な方針だと思います。自民党の議員だけで、ここまで詰めるとはたいしたものだと感心したのですが、識者との意見交換、視察に加えて行政機関と打合せを重ねたそうです。そういえば、仮想通貨関係のあるセミナーに自民党の有名代議士が聴講に来ていて驚いたことがあります。

今年3月に出された政府見解では、ビットコインは通貨でも金融商品(有価証券等)でもなく、禁止したり規制する法律は存在しない。債務の弁済に使用することを禁止する法律も存在しないので、支払手段として使える。ただし、銀行法の対象外なので、銀行が取り扱うことはできない。つまり銀行はビットコインの売買仲介や円・外貨との交換、口座開設や口座移転もできないと明言しています。今回の自民党の中間報告と合わせて考えると、銀行はビットコイン取引の前後における通貨間の交換や移動に協力して欲しいが、自らビットコイン取引を業として行ってはならないということになります。

いずれ、仮想通貨に関する規制制度が作られるでしょうが、それまで、銀行は仮想通貨ビジネスに参入できません。このことは何を意味するのでしょう。確かに、銀行が自ら仮想通貨を発行して運営管理を主体的に行えば、既に出ている仮想通貨は一掃されてしまうでしょう。逆に支払手段として仮想通貨が普及した場合は、規制で手足を縛られている銀行としては、小口決済に関する事業機会を失うことになります。自民党や政府の検討には、銀行協会などが意見を述べている筈ですが、世間にはその声が全く聞こえてきません。古いタイプの銀行員(中央銀行を含めて)には、仮想通貨を軽視する傾向が強いようです。信用がない、管理が杜撰なのでいずれトラブルを起こす等々と考えて、大きく普及する(全決済件数や金額の10%以上? ) ことはないと思っているようです。

似たような話が過去にもありました。例えばコンビニATMです。誰がコンビニなんかで金を引き出すかとの声が銀行界に圧倒的でした。今では、コンビニに大変な手数料を払って銀行が使わせてもらっています。銀行員はATMと仮想通貨では意味が違うと言うかもしれません。何がどう違うので、仮想通貨が普及しないと言い切れるのか精査する必要があります。筆者の知る銀行員の多くは、仮想通貨を含めたデジタルマネーに革新のシーズを予見しているのですが。

折角、価値記録という新しい概念ができるとすれば、金融機関がそれにどのように参画するのかを考える必要があります。方向は単純明白でして、顧客に今より便利で低コストの決済サービスを開発することです。国民経済的に価値ある新サービスを作ることができるとして、それが銀行法の制約でできない場合は、銀行法の改正を求めるか、別に一般会社を設立することになります。銀行免許を返上するのも方法です。できない理由を捜すのは、だれもが得意とするところですが、成熟産業における規制された企業が生き残る為には、イノベーションを通じて顧客の支持を集めるほかに方法はありません。注意すべきは、最近の規制当局や自民党金融行政関係者の発言などを見ると、銀行に革新を求めるのは無理と考えて、他にイノベーターを捜している様子がアリアリだということです。

例えば、地域内支払手段として価値記録を普及させ、その最終尻を預金で精算する仕組みをつくる。その預金口座には、フリーローンを紐づける。貸し付けるのは通貨でも仮想通貨でも構わない。有価証券取引等他の金融取引や定期的な取引関係を持つ第三者との間でスィング機能を付加する。こうした取引全てにおいて、地域共通ポイントをつけ、それは寄付や納税などにも使用できる。こう見ると、いかにも仮想通貨は夢の広がる媒体に思えますが、冷静に考えれば、何も仮想通貨を使わなくても通貨が一番便利だということに気付くことになります。今の通貨が不便なのは、移動が物理的にも制度的にも不便でコストに納得感がないということでしょう。ネットワークの時代ですから、いちいち窓口やATM、ネットバンクを使わずにすむように通貨そのものを価値記録化してくれればよいだけとなります。それがデジタルマネーです。

政府や自民党の見解は、価値記録を既存銀行界の外において、イノベーションを誘発させることが狙いなのでしょうが、その先には価値記録が通貨の一部、ないしは、かなりの部分を置きかえる可能性を秘めています。米銀のモバイルバンキングで仮想通貨の移動サービスが開始されています。その本気度はわかりませんが、ニーズのあることを示しています。日本でも、銀行がデジタルマネーに関与しないで良いとは考えられません。繰り返しになりますが、銀行界は、仮想通貨などを利用して金融サービスのイノベーションを追求しなくてはなりません。どこかに良い成功事例はないかと聞くようでは、イノベーションは期待できませんが、その質問が多いことも事実です。

                                       (平成26年6月25日 島田 直貴)