日本郵便が三井住友信託と決済サービスで提携

日経新聞平成26年6月16日付記事です。日本郵便が4月に設立した決済事業の子会社「日本郵便ファイナンス」に三井住友信託銀が14%強出資するそうです。同子会社は、VisaやMasterなどのクレジットカード決済を行う会社で、まだカードを扱わない小売店やネット通販業者のクレジット処理を受託するということです。

この提携が何を狙っているのか、競合他社に何を意味するのかは皆目わかりません。何故、今更、自社でクレジット処理するのか、それを外販するのか、そこに何故、三井住友信託なのか。三井住友銀行であれば、決済やクレジットに強いから、そのノウハウ等を入手すると考えられます。日本郵政には住友信託出身者が結構多く転職しているから、その人脈かといった程度しか思い浮かびません。人もたくさんいるし、新規収入が少しでも欲しいし、外部に費用として流出させるのも勿体ないから、クレジット処理受託というのも判らないではありません。しかし、そのインパクトは余りに小さいと思わざるをえません。

金融2社が業務処理体制の不備を金融庁から指摘されて、民業圧迫批判も強い為、なかなか新規事業を許されません。かんぽがようやく新学資保険やがん保険を扱えるようになりかけている程度です。それに比べると日本郵便の動きは極めて活発です。

今年の4月には、三越伊勢丹とカタログ通販の合弁会社を設立しました。日本郵便の通販扱い額800億円と三越伊勢丹の300億円ですが、新会社は三越伊勢丹が選別した衣料・服飾雑貨を販売します。2か月強で3億円の売り上げを目指すとしていました。この話も、大企業2社の合弁としては余りに小さい。民間の競業他社を刺激しないようにという意図があるのでしょう。新会社のことを知りたくても、JPグループのサイトには載っていません。日本郵便の100%子会社である郵便局物販サービス鰍ェ提携当事者(60%出資)なので、公開義務がないということなのでしょうか。

更に、5月には、包括的な通販支援事業を開始すると発表しました。現在はコールセンターやDMなど販促支援を行っているが、今後はサイト立ち上げから、受注処理、在庫管理、梱包・配送、代金決済を受託するそうです。郵便取扱い数を増やすのが目的という建前です。そこでクレジット処理を担当するのが、日本郵便ファイナンスということなのでしょう。このプレスリリースの際に、倉庫を13万uと現在の7倍にするとしています。単なる配送業ではなく、物流をコアとしながらも物販、決済等周辺事業ににじみ出ようとする戦略が明らかです。また、この包括的な通販支援事業を構成する業務は、クラウド上にシステムを構築するそうです。ITサービス事業参入とも言えます。

こうした通販事業拡大計画を見ると、単にアマゾンや楽天のような通販とヤマトや佐川急便のような配送事業を統合したビジネスで終着するとは思えません。通販やEC業者は、ノウハウを活かしてマーチャンダイジングに参入し、最終的には決済や加盟店への金融サービスを行います。宅配業者は、既に決済代行など金融サービスの大手事業者です。日本郵便は、配送と通販、それも中小業者と連携した上で、決済サービスに参入する方針と思われます。

通販事業者は、利用者である個人の購買履歴や支払状況が把握できます。加盟店など販売者の売れ行きや在庫状況、そして通販比率が高まるに従って、キャッシュフローまで把握できます。楽天が、通販事業で得た情報を金融子会社で利用して急速に業績を伸ばしていることを考えると、日本郵便の数年後のパワーや影響力に関心を持たざるをえません。だからといって、直ぐにゆうちょ銀やかんぽに情報を転用すると考えるのは早合点というものかもしれません。

何故なら、今の日本郵便は、旧郵便局会社と同じ会社です。かつては別々で自由に金融関連提携先を選べました。ゆうちょ、かんぽを協業先に選ぶのが自然でした。しかし、郵便局を内部に抱えてしまった今は、金融2社から8千億円前後の業務受託収入を糧とする郵便局の立場を考える必要があります。金融2社は民営化すれば、自前のチャネル展開により郵便局への委託費を節減せざるを得ません。つまり、郵便局は、金融2社依存を下げることが不可欠急務です。郵便会社としても、規制でがんじがらめの金融2社と同じ舟にのれば、新事業開発など全く不可能となります。

そこで、民間金融機関としては、どう考えるのか。三井住友信託のように、郵便会社と協業するのか、するとして実の上がる協業が可能なのか。協業しないとすれば、商流、物流から派生する金融ビジネス・チャンスを取り込む仕掛けはどうするのか。商流・物流を無視して、EC事業者や配送事業者と競争することは可能なのか。30年ほど前、世界最大の銀行だったシティバンクは、最大の競争相手としてIBMとスーパーのウォルマートを想定していました。今日、大手米銀はアマゾンやペイパルを競合相手と見なしています。ネットワーク社会では合従連衡が避けられません。何がコアで独自性なのか、強み弱みと合わせて熟慮して決断する時期が日本にも訪れたようです。

 

                                        (平成26年6月23日 島田 直貴)