地銀次世代勘定系システム (京葉銀行が開発決定)

平成26年5月19日付金融経済新聞の記事です。千葉県の大手第二地銀・京葉銀行が、次世代勘定系システムを日立で開発すると決めたという内容です。同行は、5月7日にその旨を発表していました。連休明け直後というタイミングが悪かったのでしょうか、全国紙などの扱いは冷ややかでした。

京葉銀行は、大手地銀の千葉銀行やメガバンクも進出している激戦区、千葉県の第二地銀ですが、顧客サービスは評判が高く、健全経営でも知られています。ITも歴代経営トップの理解を得て、業界最先端をいきます。他行の頭取達が見学に訪れた後に羨望の感想を漏らしたという話をしばしば聞きます。

同行の事務部には、事務の企画・指導やシステムの開発・運用を担当する要員が、総勢で60名強います。システム関連会社はありません。日立との連携で、大変効率的なシステム部門と言えます。今回、その事務部に次世代システム開発室を新設し、ピーク時70名を配置するそうです。これも、昔の第三次オンラインの時に比べると、少人数での開発と言えます。計画実現の鍵は、日立の提供するパッケージが京葉銀の要求する仕様と時期に入手できるということになります。

同行の発表によれば、日立が静岡銀と開発するシステムを勘定系パッケージとして採用し、2018年に稼働させるそうです。つまり、Linuxベースのシステムに変えます。現在の勘定系は、98年に稼働した4次オンランと呼ばれるシステムが中心ですから、20年ぶりの勘定系更改です。

再構築の目的は、@ 経営課題への迅速柔軟な対応 A ITコストの最適化 B BCPの強化 C 業務フローの再構築 だと言っています。

ベンダーである日立は、静岡銀と共同開発する新システムを、業界標準とすべく、ライフの短いオープン系であっても永続的に支援すると言明します。インフラとしては、RedHatのEnterpriseLinuxを日立製の高性能サーバーに搭載し、ミドルウェアにはuCosminexus TP1などを組合せ、アプリケーション開発には金融フレームワーク製品を提供するそうです。

これらの話をまとめると、日立は各種製品ツールをインテグレーションし、静岡銀行の要望を受けて金融フレームワークに沿って、アプリケーション・プログラムをコンポネントとパラメータ方式で実装するということになります。その開発費用の相当部分を日立が負担することで、出来あがったものを総合パッケージとして、京葉銀行など他の地域銀に提供するというシナリオなのでしょう。

静銀や京葉銀の動きは、他の地銀に大きく影響します。頭取から、当行はどうするのだという質問が落ちてきます。数年は現状維持と決めたばかりでも、頭取は揺らぎます。それは共同加盟の銀行でも同様です。今、勘定系の置き変えを考えなくてはならない業務上、または、技術上の問題がある銀行は少数です。業務を見直したとしても、合理化、即ち人を減らすことは期待できません。既に減らし過ぎた状態です。むしろ、新商品・サービスのスビードアップ等、収益改善に結びつけることが先決です。

それは、CRMやEBMでは実現できない。効果が限定されるからです。ネットバンキングの強化やモバイル・ブランチのようなチャネル再編と収益計算に基づいた手数料体系の見直しが必要です。特に、高齢富裕層に対する営業戦略と2、30歳代の若年層に対するメインバンク化施策が求められています。住宅ローンに限らず、個人ローンの拡販支援も重要です。ビッグデータを活用した法人顧客への事業推進支援情報も不可欠ですし、遠からず、アジア等海外進出へのシステム対応も必要です。

このような時期に、国内勘定系がまだ使えるのであれば、その再構築に希少な資金、要員、時間を費やすことは経営として正しいのでしょうか。銀行の方に、こうした疑問を示しますと、皆さん、全く同感なのですが、頭取の当行の勘定系はどうするのだという質問への答えにならないので、当惑してしまいます。そこで出る解は、現行システムと新基幹システムを併存させるハイブリッド構成です。多くの、銀行がこの方向に向かおうとしています。それには全体のアーキテクチャ設計が不可欠となります。

次世代勘定系のアーキテクチャや技術要件はどうあるべきかを考えるために、代表的な欧米パッケージや韓国大手銀行の基幹システムを勉強しました。どれも、良くできています。しかし、5年以上前に作られたもので、日本の銀行が今から参照しても、技術的には遅れを重ねるだけです。日本の勘定系オンラインは10年、20年と使います。しかし、欧米では頻繁に大幅な刷新を行います。昔の大型汎用機の時代、技術革新は10年レンジで見れば充分でしたが、今では技術的ライフサイクルが極端に短くなってしまいました。韓国では、5、6年毎に全面刷新します。それが低コスト、短期間でできるのは、システムがコンパクトに整理されており、業務と現行システムを熟知した自行要員が開発するからです。日本のようにITベンダーに依存するITケイパビリティでは不可能です。

次世代システムを考えるとすれば、ITベンダーでも自行のシステム要員でもなく、自行のユーザー部門が開発し、システム要員がベンダーを使って運用管理する仕組みにするほかありません。それを実現する技術やツールは豊富にあります。その為のITガバナンスやケイパビリティの再編をユーザー部門含めて実施できるかが問題となります。最近、システム企画を総合企画部門の所管とする銀行が増えています。しかし、その活動内容は、従来のシステム企画部門と変っていません。その結果、システム企画機能が劣化するケースも見られます。

もう一つの課題は、膨大なアプリケーション資産の内、新しい世界に移せないソフトをどうするかです。単純にレガマイすれば良いというのは、無責任になります。捨てるか、継続使用かを決めて、次に、リホスト、リライト、リビルドを選別し、それぞれに適したテクノロジー、メソドロジー、ツールを使い分けるしかありません。それには、現状の正確な把握が第一歩となります。日本独自の勘定系システムは、余りにも巨大で複雑化しすぎました。コンパクトに整理しなおすには、10年といった長期間が必要でしょう。作成した工程を常に見直しながら、日々、整理し、刷新を重ねる以外に、解決の道はないと覚悟すべきです。

                                    (平成26年5月21日 島田 直貴