プライベートバンキングとCRM

最近、プライベートバンキングを強化する銀行が増えているようです。7月になってからだけで、日経金融新聞の7月1日号で住友信託銀行、2日に秋田銀行、3日に広島銀行のPB強化計画が紹介されています。

最初から話がそれてしまいますが、金融機関は何故、自社のトピックスを日経金融やニッキンのような業界紙に載せるのか?私の昔からの疑問です。この種の記事は、通常投げ込みです。つまり企業(広報部門)が原稿を新聞社に渡すのです。記者は、興味あるものについて訪問或いは電話で確認して記事にします。私の疑問は、銀行が何故、業界紙に載せてもらいたがるのかということです。日経金融を読むのは、投資家もいるでしょうが、主に金融業界で働く人、つまり大半が競争相手だと思うのですが。競争相手に自慢しても仕方ないでしょうから、そうすると誰に読ませたいのでしょう?

テーマに戻ります。住信の計画は、ピクテやモルガン・チェースと組んで海外投資情報を提供することをウリにしています。しかし、本当にチエを絞ったところは、会員制の新組織を作って、資産運用、不動産、相続・承継、資産管理支援を行なうことでしょう。信託銀行としての特色を出そうとしています。ただ、ヨクヨク見ますと、特段新しいものはありません。信託銀行が最も金融機能の品揃えがあるにも関わらず、富裕層の高額な金融取引で証券会社の後塵を拝してきた原因を解消できるのかが不明です。

地銀2行の発表したプランは、もう少し単純です。富裕顧客の属性や取引情報をデータベース化して、FPがそれを活用しつつ顧客の総合的資産運用を支援します。XX人の顧客をカバーするためにXX人のFP組織を立ち上げるというパターンです。提案型営業で手数料収益を目指すというのですから、従来の自社商品を士族や富裕個人にセールスする営業活動とは違うのでしょうが、その内容は記事からは読み取れません。ただ、顧客の側から見れば、やたらと自分の個人情報を欲しがられるのは煩わしいですし、既に知っているのであれば気味が悪いので取引を控えるでしょう。何よりも、そんなに有利な金融商品があるのなら、何故銀行自身がそれに投資しないのか不審に思うでしょう。競馬の予想と同じです。「間違いなくあたるのなら、他人に教えずに自分で買え!皆で買ったら、それだけ配当が下がるじゃないか?」という疑問にどう答えるのでしょう。金融機関の戦略は相変わらず、ハコモノ戦略でオセンにキャラメル販売のようです。

事業を行なうのに必要な資源・仕組みをビジネスシステムと言います。ハードなものとソフトなものに区分できます。ソフトなものには、スキル、人材、評価制度、組織文化があり、ハードなものには、戦略(この定義も意外となされてないことが多いようです。)、商品、組織、ITシステムがあります。金融のようなサービス産業では、ソフトなビジネスシステムが重要なのですが、見えないことと簡単に入手できないので余り意識されません。ハードに関する計画をたてて、あとは担当者の努力次第というのが金融機関の企画という気がします。これでは、IT活用も絵に描いたモチになること必至です。

金融機関では、一度失敗した方法を、再挑戦することは至難です。二度目の時には、多くの人が、過去の失敗を引き合いに出して反対しますから。失敗を活かす風土ではありません。失敗の原因を究明することもありません。だからこそ、失敗の原因を説明しやすいハード主体の企画を立てるのかもしれません。いい加減にハコモノ戦略から脱却すべきですが、風土・習慣という段階ではなくDNA化しているようです。制度や環境が変わっても、金融マン自体が変わらなければ、混乱を増幅するだけでしょう。