世界のIT支出予測  (米ガートナーが14年度最新予測を発表)

日経ITProの4月3日付記事です。米ガートナーが世界の2014年IT支出予測を公表したそうです。

発表資料によれば、概要は下表の内容です。 

                                          (単位:10億ドル)

 

2013年支出

2013年成長率

2014年支出

2014年成長率

デバイス

660

-1.4

689

4.4

DCシステム

140

-0.2

143

2.3

法人向けソフト

299

4.9

320

6.9

ITサービス

922

1.8

964

4.6

テレコムサービス

1,633

-0.5

1,655

1.3

合  計

   3,654

0.4

3,771

3.2

 

この予測数字から何が読み取れるでしょう。そして、日本の実情と比べて、どう考えることができるでしょう。ベンダー側の視点で推測してみます。

1.世界のITベンダーにとって、昨年よりも大幅に成長が期待できる。約380兆円の市場が3%以上伸びるのですから、11兆円以上成長することになります。日本のIT市場は約14兆円、通信市場は25兆円です。今年は、日本のIT市場に近い規模の新需要があるということです。ちなみに、調査各社の予想では、今年のわが国IT市場は大企業向けや好況で若干伸びるものの、全体としては横ばいとなっています。

2.世界では、先進国市場が圧倒的規模を占めるものの、その成長率は良くて2、3%台です。新興国の規模は小さいが大きく伸びる構図が続いています。結果として、15年前に世界IT市場の10%を占めていた日本は、今や6%台にまで落ち込みました。しかし、通信を含めたICTとなると、未だに10%あります。通信だけで見ると15%近い占有率です。日本の通信は価格が高いのでしょうか。それとも、個人の通信費支出が諸外国に比べて突出しているのでしょうか。何か、特殊な事情があるようで、その修正局面が到来すると大きなショックが起きるような気がします。

3.法人向けのソフトが大きく伸びると予測されています。最近ではERPよりもCRMやBI系ソフトへの需要が高まっています。日本でも、国産よりも海外製のソフトが中心に採用されています。金融業界だけは、手作りで、カストマイズ型のCRMやBIを採用する傾向がありますが、金融独自性がそれほど必要なのか、無理に違う仕様にしないと海外製品に勝てないという判断があるのではないか。結果として、日本発で海外でも普及する製品が出てこないというデメリットがないか。ソフトで留意すべきは、データベース統合ソフトへの需要が高まっていることです。米系大手銀行でも、2、30あるDBをシングルビューでアクセスできる仮想DBの採用がブームです。DWHブームは去ったようです。このソフトが、企業全体のシステム・アーキテクチャに与える影響も無視できません。ここでも、日系ベンダーは大きく遅れを取りました。

4.個人向け市場で区切った予測数値は公表されていませんが、昔に比べると大きな市場になっているでしょう。今はデバイスと通信が中心ですが、ソフトやITサービスにおける個人の需要をどうとらえるのか。筆者がかつて務めたIBMで、個人市場に参入するか否かを検討したことがあります。各国の企画担当者の多くは、高成長市場なので参入すべきだと主張しましたが、コア・コンピテンシーがなく、チャネル開発も難しいとの理由で、歴代経営者は、先送りしました。有名なガースナーですら、踏み出せませんでした。しかし、アップルを見ると、要は独創性と決断力なのだと痛感します。日系ITベンダーはどうするのでしょう。仮に、個人市場に参入するとして、何をコアとし、どの市場から開始するのでしょう。短期間でコモディティ化してしまうリスクはありますが、面白いというか、チャンスのあるビジネスとなるでしょう。

5.市場予測は売上規模です。利益率を予測する調査はありません。しかし、ソフト市場が圧倒的に利益率の高いことは確かです。粗利益10%のITサービスと粗利益30%のソフトを比べると、どちらが重要でしょう。日本企業は売上重視ですが、米系企業は利益の絶対額と率を重視します。本調査でも、粗利益でみればソフトとITサービスは、同じ規模となります。しかし、成長率はソフトの方が高い。ただ、ソフトはグローバルに通用する製品でないと意味がありません。日系ベンダーの最大の弱点です。米系ベンダーに学ぶのも良いですが、韓国系も参考になります。

どうも鍵はグローバル化とパーソナル化の2点のようです。一見、相反するセグメントですが。レバレッジ・ポイントを見出した企業が、著作権等で防衛すれば強い存在になります。ITサービスは、最終的には労働集約的ビジネスが中心となります。日本が目指すべき道ではないでしょう。しかし、現在はそれが中核ビジネスとなってしまっています。新たなビジネスモデルを描いて、着実なトランジット戦略を実施しないと、破綻はしないまでも、縮小均衡が避けられなくなります。その点、日本は汎用機ベンダーによる垂直統合型の産業構造です。それを崩す産業政策も必要ですが、わが国のIT政策と主要ベンダーは、余りに古い秩序にこだわり過ぎました。それを壊すのは、ユーザーにしかできないことです。

                                    (平成26年4月9日 島田 直貴)