クラウドファンディングの活用増える

日経新聞の平成26年3月24日号にクラウドファンディングの関する大きな記事が二つ載っていました。一件はベンチャーや中小企業がクラウドファンディングで資金調達をした事例を幾つも紹介しています。金額は1千万円とか55万円程度ですが、資金供給者が対象ビジネスを支援することが、単なる株式投資と違うと言っています。一方で、詐欺行為や反社勢力による悪用を防止する必要性を強調しています。もう一件は、地方自治体がクラウドファンディングで小口資金を調達する動きが広がっているとの報道です。鎌倉市の観光案内板資金、夕張市のサッカーゴール設置資金、愛媛県の県内企業資金調達支援などのケースです。両記事ともに、金融庁の投資型クラウドファンディング制度化の動きなどには触れていません。また、愛媛県のケースに伊予銀行が参画している以外に銀行が関与する事例は少ないようです。

筆者が貢献型資金調達に関心を持ったのは、20年近く前のことです。居住する千葉県我孫子市が、当時、世界で二番目に汚いとされる手賀沼の浄化に債券公募を募集したのです。地公体としては始めての試みでした。その債券を買おうかと思っている間に売り切れてしまいました。債権発行額も販売期間も覚えていませんが、2週間程で売り切れてしまったと記憶しています。それも半分近くが県外居住者の購入でした。

成熟社会の金融機関に求められる役割が見えたような気がしたものです。銀行に預金を預けて金融資産の安全性を確保したり投資収益を目指すだけではなく、何か社会に貢献することに自分の金融資産を使いたいと思っている人が大勢います。一人当たり国民所得が4万ドルを超えると、幸せの基準が大きく変わって、社会貢献や自己実現を求める人が増えるといいます。マズローの欲求段階説が生きているのでしょうが、日本もその段階の分岐点を越えたように感じたのです。

3月29日付け日経新聞は、貢献型債券の販売額累計が年内に1兆円を超えると大きく報道していました。日本では2008年に本格登場したそうですが、昨年だけで2400億円が個人によって購入されたそうです。大半が世界銀行や海外金融機関が発行する債券で、新興国の子どもにワクチン接種を行うワクチン債や環境関連プロジェクトへ投融資するグリーンボンドなどです。国内の個人投資家としては、為替動向などを踏まえて、資産の分散投資もできるメリットがあるそうです。

気になるのが、外貨建債券ですから大手証券会社が扱うことになり、銀行などの参入が見られないことです。一部の銀行がエコ預金やボランティア預金を販売していますが、その額は微々たるものです。最近は言われませんが、少し前まで1%ルールというのが言われました。企業の利益や個人の収入の1%をボランティア寄付することが望ましいということです。それを前提とすれば、個人の総金融資産1500兆の1%である15兆円がベースとなり、国民総所得の1%3、4兆円が毎年上乗せできます。大変な市場です。

残念ながら日本の金融機関は、こうした資金の調達、運用に目を向けていません。相も変わらず預金集めです。民間金融機関全体では預貸率50%ですから、預金は過剰在庫です。それにも関わらず、規制当局は、「202X年頃から貴行の地盤では預金が減少となるが、ビジネスモデルをどうするのか、合併は考えているのか。」と圧力をかけ出しました。合併しても縮小均衡で延命できればまだマシで、下手をすれば双方の弱点を増幅するだけの合併も多く見られます。

オリックス銀行が、1年前に合同金銭信託を利用した商品を発売しました。すで4、5回発行して、毎回短期間のうちに完売しています。特定の企業向け融資に限定した金銭信託を、例えば期間6ヶ月、金利0.5%、購入単位100万円といった条件です。この商品は、金利が高いということもありますが、使途を限った信託であることが特徴です。顧客にとても判り易い。この商品計画を聞いた時に、社会貢献型の資金調達商品になると思いました。商品設計する方も、狙いはそこにあると言っていました。手間とコストをかけて債券発行する必要はありません。信託はとても便利なビークルです。

最近、東北の地震被災者への寄付金にクーポンを発行する例を聞きました。クーポンにはバーコードIDが付いていて、誰の寄付が何に使われているかわかるようにしています。同様の融資商品も作るのは簡単です。「お金に色はない。銀行は預貯金吸収機関である。」という、昔ながらの思い込みは危険です。

上記のような合同金銭信託、タグ付き融資、社会貢献型債券、クラウドファンディング等は、人手で扱うことは無理で、ITが前提となります。それを古いアーキテクチャ、プラットフォームの勘定系に組み込んだり、密結合させると、悲惨なことになります。やはり、第二業務系といった身軽なシステムを別に作る(クラウドでも構わない。)か、こうした新業務は別会社化するしかないようです。

                                                           (平成26年3月30日 島田 直貴)