ネット通販の決済サービス (ヤマトが後払い決済)


日経新聞の平成26年1月12日号がトップで標題記事を掲載していました。ヤマトが通販業者に代金を立て替え、利用者は商品を確認してから、コンビニなどから支払をする。消費者としては、商品を確認した上で支払えば良く、返品する場合の返金などの手間や心配が不要となる。カード決済などで、カード情報をむやみに開示しなくて済むなどメリットが多い。販売者にとっては、代金回収の心配もなく、決済の利便性と安全性を高めることで販売促進にもなると書いています。

この記事の出た12日(日曜)に、民法テレビのニュース番組を見ていたら、大学の先生が経済評論家として出演して、このニュースに触れ「待っていたサービスが出た。決済はこうあるべきです。消費者には大変便利になる。」とコメントしていました。確かに商品を確認してから支払えば良いというのは、消費者にはありがたいことです。しかし、販売側にとっては、注文の確実性が低下し、返品や代金回収不能が増加する筈です。この評論家は一面からしか見てない、何故、販売側視点も触れないのか、そしてヤマトが何をするのか説明しなければ、評論にはならんだろうと思った次第です。

当の日経新聞もこうした多面的な説明はしていません。ただ、ヤマト運輸の金融子会社「ヤマトクレジットファイナンス」が注文者の与信審査を行い、一人当たり5万円を限度に立て替える。未払いが発生すればヤマトが督促回収するとあります。ヤマト運輸とヤマトクレジットを明確に区分して記事を書いていませんが、恐らく購買者、販売者、ヤマトクレジットの三者間契約なのでしょう。ヤマト運輸はただ、品物と請求書を届けるだけと思われます。

この三者間契約の手続きは何時、どのように行うのでしょう。注文の都度なのでしょうか、それとも、ヤマト会員制のような定期契約にするのでしょうか?ヤマトの与信審査はどのような仕組みで行うのか、そもそも、信用情報は既に蓄えているのか?(同社は決済代行の先駆者ではあるが、代引きなど物流関連の決済が中心なので、少々顧客層や取引内容が偏っている恐れがあるかもしれません。)返品には値札を外してないなどの条件があるとするが、(値札付きの通販商品など見たことがありませんが)返品の条件確認は誰が行うのか?ヤマトが返品の回収にくるというが、秒を争う配達担当者が返品条件をいちいち確認できるのか、その回収コストは誰がどのくらい負担するのか?全くわかりません。ヤマト運輸としては、このサービスの結果として中小ネット通販からの配送受託を増やしたいし、回収までも受託できれば、販売促進になるのでしょう。通販業者は、決済額や取引回数などに応じた手数料をヤマトに支払うのだそうです。

ヤマトのサイトで確認したところ、細かな仕組みには触れていませんでした。請求書別送タイプのテスト販売を1月20日から開始するとあります。決済手数料は、請求額の2.9〜4.4%だそうです。請求書発送手数料が、別途190円かかります。安い気がしますし、また、薄利のリテール・ビジネスには重い金額だとも感じます。決済代行としては、余り普及しそうもなく、もう一捻り付加価値が要るかなとも思います。例えば、ヤマトが通販業者の販売促進を行うとか。

筆者は30年程前にクロネコヤマトで現金を送った方が、銀行為替より数段速くて、安くて、配達確認もできると講演や寄稿文で強調した時期があります。銀行協会での講演でその発言して、大変なヒンシュクを買ったことがあります。銀行の人達に「では貴方達は、自分で比較したことがあるのか、銀行窓口で数十分も待たされて800円も手数料払って納得できるのか、家に帰って奥さんに比較評価を聞いてみなさい。」と反論したものです。ヤマトは代引きに始まって多くの決済サービスを提供しています。一番の強みは数多くの配達員が、物を持って、日本中の家で、顧客の顔を見てDVP(デリバリーバーサスペイメント)できることです。その際に、顧客の信用情報を収集できれば最強のリテール決済業者になれますが、残念ながら、配達員にそこまで要求することはできないでしょう。折角のデリバリーチャネルを持っているのですから、もう一工夫して決済のオムニ・チャネルを開発して欲しいものです。

一般的に決済は請求と支払だけで考えられます。しかし、注文や配達、請求の一括化や分割、全返品や一部返品、送金ミスの訂正処理、支払先の分割、未収金定義、回収開始の時期・方法等々が千差万別です。数年前から大手のクレジットや信販会社が、システム統合や共同化を進めようとしていますが、その多くの進捗が思わしくありません。最大の理由が、決済の中枢的手順は同じであるが、各手順をキックする条件やイベントが余りに多種多様で例外処理の固まりだということです。二社のシステム統合で業務仕様は半分にならず、最少公倍になる。それでは、共同化メリットがないので、何とかしようと調整を繰り返す内に、2年経ち3年経ちと、一向に前に進まない。ところがプログラム開発部隊だけは、スタンバイさせておくので膨大な外注費が毎月垂れ流れる。こうしたプロジェクトに参画している技術者達は、生活に困らないものの、スキルアップと達成感を得られずにいます。口の悪い人は収容所と呼んでいます。

ネットを中心に通販は益々拡大するでしょう。高齢化が進むにつれて需要も増す筈です。物流の方は、運送業者が革新を続けています。決済は、スマホクレジット等、新しいメディアを使うものの、本質的的機能の革新は行われていません。いっそのこと、ビットコインで支払い、返金、リベート配分、ペナルティ徴収などイベントベースのリアルタイム処理化できれば、権利関係や権利移転が楽になるように思うのですが。ヤマトには、ヤマト・コインを発行して、決済代行など止めたらと提言したくなります。当コメントをお読み頂くのは、金融業に携わる方、金融関連ITに携わる方ですが、何か良い仕組みを考案してビジネスモデル特許でもお取りになりませんか?

                                      平成26年1月15日   島田 直貴