個人信用情報 (ソフトバンクが信用情報誤登録6万件)

日経新聞の平成25年10月2日付けの38面を見たら、題名の記事が小さく載っていました。『何事だ?』と思いソフトバンクモバイルのWebサイトで確認しようとしたのですが、何の記載もありません。会員向けサイトだけで公表したのでしょう。他のサイトで同社発表資料コピーが添付されていましたが、謝罪だけで具体的な時期、原因経緯などは一切記入されていません。

日経は、このトラブルを重視しませんでしたが、他紙はネット・ニュースなどで大々的な報道を開始し、徐々に事情が見えてきました。

原因ですが、携帯購入時に端末代の分割払いを選択し、その際にポイントで支払った顧客を入金ナシと処理し、そのままCIC、JICC、全銀個信センターに未入金と登録したようです。その人数は6万3133人。時期は正確な情報が公表されていないものの、該当顧客の内、T万6827件に関して、2009年10月8日〜今年8月6日までの間に、金融機関等の照会実績があったということです。

3月10日頃に、利用者から問合せがあり、誤登録に気付いた。その後の調べで未入金登録によって支障が出たとの顧客確認が12件確認され、組織的ミスと判断し、3月末に信販業所管の経産省に報告した模様。この時点で経産省担当者も軽く見ていたようです。

その後、8月までかけて原因調査、個信情報訂正、誤登録該当者への詫び状送付、相談窓口設置などを行い、10月1日に会員とメデイア向けに発表したという経緯です。認知から公表まで5カ月以上かけたばかりでなく、公表前日9月30日の新商品発表会で孫社長が「850日間も重大事故がないのはソフトバンクだけ」と自慢しながら、本件に関して一切言及しなかったことが、このトラブルの重大性を認識していないと見なされました。間が悪かったとも、経営陣の認識が甘かったとも言えます。

ソフトバンクの公表内容が余りに不十分で、該当者はクレジットやローンが受けられないなどの影響があるとの記事が流れましたから、不安が一斉に広がりました。実際には同社のカストマーサポートに連絡すれば、誤登録対象かの確認ができるのですが、電話のつながらない人もあり、千円払って個信センターのネット照会を使った人もいるようです。

預金残高不足や支払い忘れなどは結構あることです。ない人の方が少ないでしょう。金融機関やクレジット会社などが与信判断する際に、個信情報に全てを頼る訳ではなく、ましてスマホ・リース料の初期延滞程度であれば、通常は影響ない筈ですが、NGラインすれすれの利用者で拒絶されるケースはあるでしょう。

本件は幾つかの問題を提起しています。

第一に、信用情報に係わるミスは、個人情報流出よりも影響が大きく、継続します。本件でも具体的被害を受けた人が賠償請求の民事訴訟を起こせば、賠償範囲が見えるようになるでしょう。個人情報流出よりも高額な損害が認定されると思います。今回、ソフトバンクが行ったような問題矮小化や公表遅延は絶対避けなくてはなりません。

第二に、金融機関の人達には想像できないほど、非金融業、特に新興産業の従業員やシステムでは、業務堅確性に関する認識が違います。金融機関のような時間や効率よりも正確性(ルール手順重視)という感覚は少ない。ひどい場合は、ないという現実があります。規制緩和やネットワーク化の進展によって、こうした産業文化の企業が金融サービスの鎖の中に入ってきています。この脆弱性の影響を金融システムから、いかに排除抑止するか考える必要があります。

第三に、利息制限法、貸金業法、信販業法の改正時に、経産省はリース・信販の業務範囲を法文通りに解釈して、監督範囲を拡大しました。ところが、規制の緩い登録制なので形式的な報告徴求と、悪質な場合の検査程度しかしません。今回も半年近く放置しています。銀行界は、教育ローンなどの提携ローンが信販業に該当するとされ、顧客ニーズがありながらも提携ローンから多くの銀行が撤退しました。経産省への業者登録を嫌ったのです。総務省所管の携帯電話会社は、仕方なく信販業登録をしました。経産省は今回の件でソフトバンクの信販登録一時停止や取消しはしないでしょう。影響が大きいからです。監督指導できないのであれば、規制から外すべきです。縦割り省庁をまたがる規制は、穴だらけとなります。

第四は、個信センター登録情報の精度確保策です。今回の件で、いい加減な手順で作成したデータで、利用者の生活全般に係わる信用情報が簡単に毀損される仕組みが露呈してしまいました。個信センター側は、対応のしようがありません。登録情報を本人が確認して訂正を求める制度はありますが、その費用と手間を考えれば、仕組みとして機能するとは思えません。入力データを多重確認することもできないでしょう。誤データ入力業者に対する重い罰則規程を設定するほかないと思います。

                                 (島田 直貴)