日本郵便の新事業 (高齢者支援サービス)

平成25年8月26日付の各紙の報道です。日本郵便が、10月1日から6地域103郵便局で、高齢者の安否確認や食事会、生活相談、買物支援などを行うとの内容でした。こうした案は、昔からあり、郵政グループだけでなく、営業職員を1万人以上抱える生命保険会社や共済組合などが、繰り返し検討してきたサービス・ビジネスです。

筆者は、「どうせ本気ではあるまい。少しやってみて、いつの間にか消えるサービスだろう。」と思い、記事を読み流していました。しかし、ニッキン9月6日号を見て、「これは本気のようだ。誰か中途採用組の民間経験者が事業計画を作っているのだろう。」と考え直すようになりました。「郵便局みまもりサービス」として、今回の新事業試行が単なる思い付きでない内容が書かれていたのです。

試行対象の6地域103カ店は、高齢者人口、コンビニ数、金融機関数などを考慮して選んだとしています。先行して同様のサービスを有料又は無料で実施している企業がない所を選んでいるのでしょう。積極的に予約受付を開始した局もあるそうです。2万人以上いる局長の中には、事業マインドのある人も多くいます。基本サービスは月額1050円で、体調確認、常備薬確認、買物支援などオプションは800円だそうです。9月2日から募集を始めたところ、親と離れて住む子供だけでなく、高齢者支援ビジネスの専門業者からの問い合わせもあると言います。協業すれば民間の知恵も取り込めるでしょう。

この新事業に対して、誰がやるのだ、郵便局員にそんなホスピタリティがあるのか、そもそも肉体的・時間的余裕が全くないだろう・・・の意見が出ていることは確かです。しかし、郵便局はユニバーサルサービスという訳の判らない用語で、過疎地域を含む全国へのサービス提供を義務付けられています。真似と言われようが、民間に勝てる訳ないと言われようが、チャレンジできることをやるしかありません。

筆者は4年前に「郵便局のビジネスモデル」に関する意見を各方面に発表しました。当サイトの調査レポートにも掲載しています。その骨格は以下のようなことでした。

1.郵便局会社(当時)の収益は、金融事業からの委託手数料に大半を頼っているが、やがて金融2社は自前のチャネルで事業展開するようになるので、代替収益源の開拓が急務である。

2.物販や介護などの新サービスは参入し易いが、それ自体では郵便局1兆円の事業経費を賄うことは不可能。これらサービスを包含した総合生活支援サービスを会費制で提供する方が継続性と成長性を期待できる。仮に、月2千円の会費で1千万世帯に提供できれば、会費収入だけで年2400億円となる。広告収入や手数料収入を取り込めれば、収入は更に増える。

3.その実現には、多種多様な企業、組織、個人との提携が不可欠である。郵便局は、個人世帯の代理人、コンシェルジュ、生活ポータルの役割を果たすべきである。膨大な数の提携先と数千万世帯との仲介、取次ぎプラットフォームを事業基盤とすべきである。

4.プラットフォームとしては、リアルとサイバーのネットワーク網が必要となる。利用者はカードないしはモバイルデバイスによる堅確な認証の下に多様なサービスを利用できる。自ら多様なビジネス展開するよりも、このプラットフォームを使って、金融機関を含めた提携先に有償で供与することが、歴史的経緯と国民の共通インフラとしての同社立ち位置に適合すると思われる。

 

こうした主張、意見は民間金融機関から全く無視されました。領土問題と同じで、相手の存在そのものを無視するか、完全民営化が先だと実行不能な条件をつける姿勢です。国民目線からすると、既得権護持しか考えていないとの印象を免れません。郵政寄りの政治家や郵政幹部が意見交換を求めてきましたが、4、5年を経た今では、誰も当事者として残っていません。

筆者のこの考えは、今でも変りません。民間金融機関は、郵便局の活用を検討すべきですし、郵便局は、早く金融2社から独立すべきです。従来サービスとしての郵便事業は減衰することが確かですし、宅配事業は失敗し、当面は再チャレンジの機会がないでしょう。全く新しいビジネスモデルを作るしかありません。それには、中途入社した民間企業出身者の経験と知恵が必要ですし、旧郵政出身者の組織牽引力も必要です。これだけの大組織でゼロリセットは危険過ぎます。良く引き合いにだされるJTやJRの成功事例もあります。日本では両社の民営化成功が語られることは少ないですが、海外の学者やコンサルタントには稀に見る成功事例として未だに関心を持たれています。JPも変れない筈がありません。

今回の高齢者支援サービスは、収益としては全く微々たるものです。局当たり6人とか10人くらいの契約が当面の目標だそうです。良くて年間1200万円程度です。大変な赤字でしょう。試行とはいえ遠慮しすぎです。現場の負担も大変です。ネットワークやスマートデバイスを利用して、戦略的な大きな動きになることを期待しましょう。

                                                  (島田 直貴)