アカウント・アグリゲーション・サービス

日経新聞の平成25年8月26日号がアカウント・アグリゲーションに関する記事を掲載していました。家計簿をスマホで管理する個人が増えて、銀行やカード会社から取引履歴を取り込むニーズが強まったということです。日本での最大手イー・アドバイザーのマネールックは87万会員、NTTコムのOCN家計簿は37万会員となり、ここ1、2年で他社も利用者を増やしているとのことです。米国では1千万人以上の利用者がいるmint.comなどがあり、日本でもネット金融や通販が広がることで、更に普及速度があがるだろうとも書いています。

マネックス・グループのマネー・フォワードは、昨年末から無料サービスを開始したが、1300サイトからデータを集めることができ、最近では資産シミュレーションや投資アドバイスを月額500円で開始したそうです。年内に30万会員を目指すということです。

この記事を見て、本当かな〜と思うのです。私の周辺にはデバイスおたくも、アプリおたくもいるのですが、アグリゲーションを使っている友人は一人もおりません。10年以上前には2、3人いましたが、今は止めてしまいました。パスワードをセンターサーバーか自分のデバイス・ソフトに登録しておくので、セキュリティが心配ということもありますが、必要な全データを自動的に集めることができず、どうしても手作業での口座情報入手、入力が出てしまうので面倒なのです。

事実、はなばなしく、メディアに発表したものの、いつの間にかサービスを停止したサービスも数多い。思い出せるだけでも、マイクロソフト、Goo、ぷらら、オリコ、全日空、NTTデータ、クレディセゾンなどがあります。一方で、メガバンク3行やセブン銀、ソニー銀など数多くのアグリゲーションが活動していることも確かです。何故、提供したがる企業が多いのでしょう?それで顧客をメイン化できるとは思えないのですが。

米国での普及が引きあいに出されます。日米では根本で異なる点が多いことに注意が必要です。米国では個人の所得税は申告制で、必要経費等の入出金は口座異動明細をつける必要があります。個人の購買活動に伴う支払いの大半はクレジットカードですので、残高管理を含めたキャッシュ・マネジメントも大きな負担ですし、クレジットの利用明細も家計管理だけでなく、税金申告にも必要です。また、税制が政策誘導の目的もあって頻繁に変更されます。個人にとって税金申告は大変な手間とノウハウが必要なので、ITツールに対するニーズが強いという背景はわが国と全く異なります。要は、米国におけるアカウント・アグリゲーション機能を持つキャッシュ・マネジメントは、生活必需品なのです。その米国を引き合いに出して、日本でも同様に普及するだろうと言う論調は、世間をミスリードします。もう少し日本向けのサービスを加えないと、単純な家計簿機能やライフプランでは、個人向けインセンティグが不足です。

最近、ライフプラニング・シミュレーションのバージョンアップをしたいが、何をどう直したら良いか判らないという相談が増えています。御行にはFP資格取得者が大勢いるのだから、彼らの知恵を集めたらと言いますと、「資格を持つ行員は大勢いるが、実際にお客の相談に乗った経験のある者は殆どいないのだ。」という答えです。確かに実例を数多くこなしていなければ、実用的なプログラムは作れません。来年から始まるNISAの予約販売を支援するために、タブレットにライフプラニングを搭載したいようです。営業担当者にタブレットを配布する金融機関が増えていますが、証券や保険に比べると、銀行には適当なアプリケーションがありません。カタログばかり載せても見てもらえません。そこで、CRMや口座情報をタブレットで受け取りたいとの要求を受けます。しかし、セキュリティが怖くて、とても外出先から無線経由で照会させることができません。モバイル・デバイスが金融機関のDBやネットワークのアーキテクチャ変更を余儀なくしつつあります。面白い流れです。

アカウント・アグリゲーションは、サービス・プロバイダーのサーバーにIDとPWを登録しておく方法とクライアント側のアプリケーションに登録しておくか、都度入力する方法があります。複数の金融機関やカード会社から利用明細を集めるのですから、事前登録する人が大半でしょう。ネット犯罪者からすれば、通帳とカードをまとめて差し出されているようなオイシイ話です。勇気のある人が多いと感心します。アグリゲーションにおけるセキュリティ対策がどうなっているのか知りませんが。

逆に言えば、セキュリティを堅確にし、ライフステージやライフスタイルに合ったサービスを提供すれば、月500円くらいは出す人はもっと増えるかも知れません。百万顧客集めれば、月5億円になります。意外と旨味のあるビジネスかも知れません。課題は、それだけの価値のあるサービス・メニューを考えだせるか否かです。または、ネット広告などで収益源を確保するのでしょうか。人の集まる所に接点を提供するのはチャネル戦略の基本です。必ずしも自分で人を集める必要はありません。しかし、何も付加価値がなければ、大勢の人がいても無視されるのが、ネット社会です。金融マーケティングの肝が大きく変わりつつあるようです。

 

                                                      (島田 直貴)