金融ITのNPO発足 ( 金融ITたくみs が活動開始 )


ニッキンの平成23年2月11日号記事です。全国初の金融IT啓蒙を目的とするNPO「金融ITたくみs」(略称たくみず)が2月1日に誕生したとの記事です。設立目的や活動内容等を説明しています。筆者も設立メンバーで、この取材を受けました。金融関連各業態、IT企業の年齢を問わない個人と法人による、調査研究、講演研修、寄稿などを通じて、知識経験情報の共有と蓄積を支援する仕組み創りが目的との記事はその通りです。当NPO設立に関しては日経ITProサイトでも2月2日付で報道されています。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110202/356766/?ST

設立趣旨と活動予定内容につき若干の説明を加えます。

アウトソーシングや共同化による金融機関のIT能力劣化と、競争原理が減衰した結果としてIT企業の金融関連能力も急速に劣化しているという現状認識があります。加えて、猫も杓子もクラウドとスマホ、タブレットでありますが、どれも基幹技術は海外製です。日本に残るのは、日本用のアプリ開発だけとなるのでしょうか?それすらも、各社は競ってオフショア化を進め、それを誇るようになってしまいました。日本に自律的なIT技術がなくなれば、付加価値のあるITビジネスは消滅してしまいます。既にグローバルIT企業と日本企業の利益率の差に顕在化しています。10兆円にも満たないIT産業が限界産業化して衰弱死しても、日本経済全体にさしたる影響はないかもしれませんが、IT技術を持たずに製造業、小売業、農業など他産業の国際競争力を維持強化することはできません。例えば韓国政府は、IT産業興隆政策を社会インフラにおけるIT活用という視点で総合的政策を進めていますが、わが国経済産業省は40年前と同じに、合従連衡や小さな予算でのマイナー技術開発しか頭にありません。本NPOとして、やがては政策提言できるようになれば良いとは思いますが、政府に頼らず、金融関連のIT能力向上に注力すべく、小さなテーマから積み上げて行こうと話合っています。

その金融機関ですが、経営陣でITバリューを理解し、マネージできる方は、極めて少ない。人員を大きく減らした後ですから、IT化による人件費合理化効果も見込めない。業務改革による収益増を狙おうとしても、変化を嫌う産業文化(金融マンだけでなく顧客市場も)では革新的なことは大方挫折します。その結果、昨今では独創的なアプリケーションが出てこないで、付加価値ゼロの制度対応ばかりです。ベンダーは表向きには金融業重視を唱えますが、実際にはこの分野から優秀な人材を他に振り替えています。やがては、撤退できないのなら中印韓新ベンダーに再委託することになるでしょう。こうして、金融界からIT技術もITを使ったビジネス戦略を考える力も消えていきます。こうした流れは悲観論を並べた狼少年の主張なのでしょうか?今の状況を放置すれば、こうなる可能性が極めて高いというか、自然の流れと言えましょう。ですから、まずは、金融機関経営者や利用部門に対してIT価値やその活用方法を啓蒙したいと思っています。

金融機関のIT部門やそれを手伝うIT企業社員に対しては、複合的な情報の提供と研修などを提供したいと思っています。何故なら、共同化、アウトソーシング化が進んだ結果、ベンダー変更の機会は殆どなくなってしまい、メインベンダーからの情報しか入らなくなってしまいました。自分で開発・運用しませんから、ベンダー提案や情報を評価する力も消えつつあります。それを防ぐには、ベンダー横断で金融機関の視点による情報交流が不可欠です。複合的な情報と言いましたが、それは技術、業務、経営の各側面と現在、近い将来、長期的未来の時間軸を合わせた情報という意味です。いずれかの勢力・組織に偏ることも、利益指向でもいけません。そこでNPO設立という話になった次第であります。

こうした目的を達成するには、最低限二つの条件が必要です。第一は情報収集と調査研究を可能とする体力、すなわち、会員の数と質です。会員には、単に提供される情報に眼を通すだけでなく、積極的に情報提供(守秘義務の範囲で)と分科会による調査・研究活動に参加して頂きたい。NPO事務局は、情報共有・ノウハウ継承の仕組み作りを行います。分科会の活動は、共通の関心テーマを持つ会員同士による自律的なグループ活動とし、現役企業人でも参加しやすいように、ネット経由のコラボレーションと平日夜間の集まりを想定しています。情報共有・蓄積の仕組みについては、大手IT企業がNPO向けにメールやDBMSなどITインフラを提供してくれることが大変助かります。例えばWebサイトは、KDDIのJimdoを使わせてもらっています。   http://www.takumis.org/

第二は、会員の多様性です。発起人の大半は、現役のIT企業人ですが、金融ITに携わって40年を超える人達です。最近の技術やプロジェクトには直接関与していません。また、ベテランのコンピュータ屋は、ネットワーク関連に弱いのが悩みです。複合的情報提供には不足する面が多々あります。ですから、金融機関のIT部門、利用部門の管理職、若手社員、金融ITソリューションに関連する企業の経営者、営業担当者、技術者など多様な人達による情報と経験知識が必要です。日本で働く海外IT技術者やオフショア開発で海外に滞在している日本人技術者の参加も期待しています。

質の良い情報の発信を続けることこそが、より多くの良質な情報を共有できる基本です。業界オープン、ベンダー・オープンで、金融関連ITの高度化、効率化に貢献できる人材育成をサポートしていきたいと考えています。皆様にも、積極的なご参画を頂けるよう願っております。