銀行の個人向けローン (6割が強化)

平成22年7月20日付の日経新聞記事です。改正貸金業法の完全施行を受けて、銀行が無担保ローンの強化を行っているとの内容です。日経新聞が全国110行を対象に無担保・無目的ローン商品に関するアンケート調査した結果、カードローン取扱い行102行の内63行、フリーローン取扱い行99行の内54行が、商品の見直しをした、または、予定と回答したそうです。銀行は総量規制の対象外であり、改正法が新たな事業機会と判断されているとの論調です。商品見直しとは、上限額の引き上げ、手数料や金利の見直しが大半とのことです。

記事に、某地銀が6つあるカードローン商品を11に増やすとありました。無担保フリーなら、一つあれば良いのに、何故6つも11も種類があるのかと思って調べたら、上限額、融資期間、金利が違うだけでした。メガはどうかと思って調べたら、商品種類としては4つ前後ですが、同じ考え方です。フリーローンといっても、資金使途が限られていて、中古車、旅行や冠婚葬祭費用などが対象で見積書か契約書で使途と金額を証明する必要があります。フリーとはとても言えません。返済期間が最低で1カ月、最長は10年となると、耐久財か高額商品対象の目的ローンではないか。こんな商品の上限額をいじって、貸金業法改正で締めだされた顧客を取り込むことなど全く筋違いです。

クレジット産業協会の消費者信用供与残高総括(あくまでも推定の調査)によれば、平成21年3月末時点での消費者ローン残高は28兆円です。内訳はクレジットや信販事業者などによるキャッシングが5兆7千億円、消費者金融会社が6兆5千億円、銀行の個人ローンが15兆7千億円(内、無担保無目的ローンは、4兆円前後と巷間言われています。) です。消費者金融会社は5年前と比べて3兆5千億円、36%も減らしています。いかにグレー金利禁止が効いたか歴然としています。その上に今回の総量規制ですから、消費者金融と販売信用事業者を合わせた12兆円という市場が、10兆円を切るまで落ち込むことが予想されています。(その結果、3兆円の代替市場を期待する銀行もあります。) 但し、減少するのは、年収の3分の1を超えた借入分で、その大半が返済の為の借入れという多重債務者セグメントでしょう。この層は、とても銀行の新規融資先とはなりえません。いくら金融庁が貸してやれと命令してもできないものはできない。金融庁に不良債権化に関するノーアクション・レターを発行させ、公的機関の100%信用保証があり、更に実際に要した経費を賠償してもらう制度がなければ、預金者や株主に対して説明ができません。または、預金とは全く別の資金により、この層専用のファンドを組成してキャッシングするかというような話です。業法改正で締めだされる層を銀行に何とかしろというのは、余りに無理な注文です。しかし、不良業者と不良顧客が消えた後のキャッシング市場は、銀行にとっても魅力的なビジネスとなるでしょう。リスクを制御でき、これほど高利回りを期待できる市場は他に見当たりません。金融機関として生き残れるか否かの試金石ともなるでしょう。

ところが、先述したように銀行の個人ローン商品は無担保、フリーといっても、キャッシングとは全く性格が異なります。その上、借りる際の手間は顧客にも銀行にも大変な負担です。カードローンと総合口座の当座貸越がキャッシングに近い商品ですが、その当貸も過去5年間で残高が30%近く (クレ産協の信用供与残高総括表によれば9兆4千億円が6兆7千億円に) 減少しています。 その理由は、恐らく景気低迷でしょう。個人は貯める力を失っただけでなく、借りてでも使う意欲をなくしているのではないか。とすれば、個人消費拡大による景気刺激という政策的側面からも、個人ローンを考え直す必要があります。

銀行としては、借り易さ、返し易さという利便性と金利、融資額、返済期間という商品特性を顧客層と借入目的別(無目的を含めて) に整理しなおし、商品ラインアップを見なおす。その際に、現在、対象から外している未成年、高齢者、非定期収入者などのニーズも取り込み、資金の使用目的である商品やサービスとのアプライアンスを推進することが必要ではないか。相変わらず、信用コスト・ゼロを追求するのであれば、商品・サービス提供者自身が信用事業に乗り出すでしょう。個人信用情報機関に加入すれば、精緻な個々人の信用情報が簡単に入手できる時代となっています。銀行が決済用預金口座などで独占してきた筈の個人信用情報は、低コストで簡単に入手できるようになってしまったことを忘れてはいけません。

システム・サービスで差別化しようと考えたのでしょうか、返済用預金口座とは別に借入金管理口座を作り、両口座間でスィングや自動振替などを行う銀行があります。カードローンでは、貸付平残に応じて月毎の返済額と金利を決定し、自動引き落としを行い、残高不足であれば総合口座から当座貸越しする連動処理を行っている銀行もあります。何故、こんな複雑にしたがるのだろう? それでなくても、複雑に過ぎて新商品や新サービス開発を阻害している勘定系オンラインの上で、更にヤヤコシイ設計を上乗せしている。これで変化スピードについていけるのか? 昔から、システムはシンプル・イズ・ベストです。業務プロセスもそうです。個人ローン業務は、既存勘定系オンラインから外して別建てとすべき代表的業務の一つです。

個人ローン事業における最大の成功要因は、利便性と与信技術です。大手消費者金融会社によって証明されています。地域の顧客とは既に取引関係にあり、将来も長いつきあいを前提とする銀行においては、特に途上与信が重要となります。その為のキャッシュフロー情報は豊富に蓄積している筈です。それと個信センターからの他社取引情報を合わせて、高度な与信モデルを構築できれば、それ自体が最強の武器となるでしょう。