I T 企業のコンソーシアム (個人向け金融ソリューションのワンストップ提供)


ニッキン平成22年5月21日号記事です。中堅・中小IT企業7社(発起人5社と特別会員2社)がコンソーシアムを設立して、個人向け金融業務に関するITソリューションのワンストップ・デリバリーを提供するという内容です。弊社はこのコンソーシアム「アルフィス」の発起人企業の一員で、事務局を務めていますので、この記事に少しコメントさせて頂きます。アルフィスの詳細については、本サイト・トップ画面からご覧願います。6月2日には、コンソーシアム立ち上げを記念して、個人向け金融業務の企画・営業を担当する方々を対象にセミナーを開催します。

アルフィスでは、指定信用情報機関との接続ソリューションを手始めに、活動範囲を個人向け融資業務全般に広げ、将来は資産運用やプライベート・バンキングを含めた個人向け金融ビジネス全体をカバーする計画です。記事にあるように開発コストが70%まで抑えられるかは個別案件によりますが、産直方式により、中間コストとオーバーヘッドを減らすことが可能です。ここでの70%減というのは、ある大手銀行がベンダー数社から見積りを得た時の平均的な価格と、アルフィス参加企業が協業して開発した場合の見積りを比較した数字です。それでも、かなりリスク・ファクターを加えています。

アルフィスの集まりは昨年8月に遡ります。各社が持つソリューションや顧客接点を共有できないか、共有する時に、どんな課題が出てくるだろうかとの命題に関して、7社が集まって意見交換や共同調査をしてきました。例えば、個人向けローン・ビジネスの収益性が期待される一方で、改正貸金業法によって市場は大混乱しています。しかし、収益分野がどんどん無くなっていく金融機関にとって、避けてはならない分野です。事業計画では柱としながら、何故、金融機関は個人ローンに及び腰なのか。いろいろ議論しながら、統計データや個別行の財務データでシミュレーションすると、金融機関にとって大変なビジネス・チャンスであることが明らかです。一方、この分野にメガ・バンクなどが投資するIT費用は余りに膨大過ぎないかとの話もありました。

では、このメンバーで作ったらいくらでできるだろうか。各社が保有するソリューションは、本当に問題なく連携可能だろうか。試しに共同提案書のひな形も作ってみました。その作業には、40年も金融機関向のIT化に従事したベテランが加わり、提案書ストーリーや表現方法などを何度も練り直しました。提案書のボリュームは、どんどん膨れ上がりましたが、顧客視点で整理しなおすと、逆に減り出します。そのような共同作業の成果を実際に使ってみたいということで、法人格はありませんが、コンソーシアムという緩い連合を組んで活動を開始することにしたのです。そのお知らせをしたメディア各社も、面白い動きだと評価してくれて、紹介記事などを掲載してくれております。メディアの皆さんも、沈滞している金融IT化の状況を懸念しているのでしょう。

中堅・中小IT企業の皆さんと話をしていると、アプリケーションに強く、良いソリューションを持っていながら、知名度の低さ、顧客基盤の薄さと営業体力の不足が原因で、金融機関に直接販売することが難しい。金融機関の勘定系を担当する大手ベンダーの傘下では、開発効率もコスト妥当性も失われる。とはいえ大手ベンダーとは良い関係を維持したい。というのが、参加メンバーの共通した意見です。一方、金融機関の人達と話をしていると、大手にアプリの判る技術者がいない、自社にもいなくなった。大手の価格は高すぎる、こんな大げさなプロジェクトである必要はない。Webベースのシステムが増えたが、やたらパッケージを入れてしまったので操作性が落ちた、バージョンアップなど保守の問題で頭が痛い。ベンダーがバラバラで管理できなくなってきた。などの声を聞きます。顧客視点でのワンストップ化が必要です。

大手IT企業は、インフラや開発技法を標準化し、アプリケーションを共同化することで、規模のメリットと効率性を向上させようとします。しかし、金融業はサービス産業です。他社と同じサービスなら合併した方が経営効率は上がる。独立経営を目指すなら、サービスや商品を差別化するしかありません。サービスと商品を組み込む先は、主にアプリケーションです。日本では、サービス時間や採用メディアがサービスとして見られますが、それに差別化要素はありません。金を出せば誰でも入手できるからです。差別化できるのは、プロセスとコンテンツです。それも速い者勝ちです。学習能力のあることが前提ですが。

アプリケーションには、事務フロー、各種基準だけでなく、事務規定や組織権限、組織的判断基準などが組み込まれます。ですから、筆者は、システム(アプリケーション)は組織文化そのものだという言い方をします。長年に渡る金融機関の経験や知識の集約です。銀行の勘定系は戦略的でないとの考え方があります。確かに勘定処理を、銀行簿記という側面だけで見れば、どの金融機関も同じで差別化要素は限られます。ただ、勘定系オンラインという表現に惑わされてはいけません。銀行簿記を柱としながらも、その周りは事務処理と営業活動を含めた顧客サービスを提供するプロセスで覆われています。それこそが、差別化の基盤ではないでしょうか?というのが筆者の問題提起です。

いま、基盤技術における国産技術が消えつつあります、アプリケーション開発の技術者も日々減少しています。IT産業の構造改革とITコンピテンシーの再編成が必要です。オープン系、Webが基盤であれば、アプリケーションの協業は容易です。アルフィス・コンソーシアムは、こうした問題意識からの実験プロジェクトとも言えます。金融だけでなく、様々な分野で同じようなチャレンジが行われることを期待しています。