新規参入4銀行の業績

日経新聞平成14522日号で、ジャパンネット銀行、アイワイバンク銀行、ソニー銀行、イーバンク銀行の3月期決算を紹介しています。4行ともにIT投資が足かせとなって、赤字から脱出できていません。銀行法施行細則では、創業から3年内の黒字転換を義務付けられていることから、各行の業績向上戦略と金融庁の対応が注目されているということです。

IT投資が赤字の原因という言訳は通用しないでしょう。当初の事業計画に盛り込んであり、かつ業容拡大が予定に達しないため、むしろ計画よりも抑制していると聞いているからです。原因は、収入が計画を下回っているというのが正しいでしょう。

当コラムで何度も指摘していますが、リテール決済ビジネスの採算性は無いと言って良いほど低いのです。私はクライアントの銀行に「銀行だからといって決済に拘ることはない。むしろ他行や郵便貯金に押し付けてしまったらどうですか。」などと勧めるくらいです。「振込一件で600円も取っている。ネットを使えば10円か20円で実現できる。」などと考えることが間違いです。確かに全取引が単純で定型的であれば全自動処理できるので、安い費用で済むでしょう。しかし、必ず間違いや意地悪をする顧客が出ますし、取引件数を増やそうとすれば、複雑な決済手段も扱うようになります。結果として全体の2割弱の取引が全事務処理コストの3分の2以上を占めるようになってしまいます。

営業推進においても、手数料が無料か安い間は顧客が増えます。しかし有料化したり値上げすれば途端に顧客は離れていきます。料金に大差なければ、実績があって汎用性の高い既存の銀行に戻ってしまいます。既存銀行にとって良いことか悪いことかは別ですが。
百万件以上の顧客を持てば決済の汎用性も高まりますが、それを3年で実現するためには巨額の販促費用が必要でしょう。3年後に単クロになっても累積で黒字転換するのが大幅に遅れることになります。
フリーローンで収入基盤を作ろうという考えが共通にあるようです。貸すのは良いですが、回収できるのでしょうか?融資には審査ノウハウと信用情報が不可欠です。特に初期与信の返済意思確認には面談が欠かせません。貸倒れリスクを高めても良いのであれば非対面融資でも良いでしょうが、それはコスト高となり競争力・収益力を落とすことになります。

非金融業や外資系の方たちが、金融ビジネスに新規参入すべく相談しに来ることがあります。皆さん、金融ビジネスの表面だけしか見ていないようです。金融出身者を中途採用して既存金融機関の弱点を列挙して戦略を考えます。しかし、相手の弱点を上回っても事業の成功が約束される訳ではありません。現存して業務純益を上げているということは、それなりの存在意義と強みがあるのです。それを全然考慮していません。無暗と楽観的な収入見通しとコスト見積もりをしてきます。私は、このようなビジネスケースを見る時は、収入予定を半分にコストを倍にしなおしてから、SWOT分析をしてみます。結論は何時も「お止めになった方がよろしいでしょう。」となります。

マスコミは、新規参入者が店舗コストを持たないことを優位だとしますが、店舗コストは預金量の1%にも満たない現実を無視(無知)しているのです。我が国の金融機関は世界に冠たる低コストの事務処理体制を持っています。それにコスト勝負を挑むのは明らかに無謀です。サービス競争を挑むべきです。それも既存金融機関のレベルを大幅に上回るか、全く異なる視点のサービスが必要です。さもないと、金融サービスの革新は起こらないでしょう。銀行行政が言っているのと違って、相変わらず事前規制を続けている今のうちが革新者にとってチャンスでしょう。新規参入銀行が全て失敗に終わって、また、参入規制が強まることを懸念しています。早く、成功事例を作りたいものです。