ネット銀行新設 (大和証券)


日経新聞の平成21年10月24日付記事です。大和証券が、2011年にネット専業の新銀行を設立する計画だそうです。来年4月に準備会社を設立、一年かけて銀行免許取得準備を行い、2011年内の開業を目指すといいます。狙いは証券顧客に対して決済口座を提供することと、グループ全体でワンストップ・チャネルを提供することとしており、大和証券が新銀行の銀行代理店になるようです。MUFGブループのカブドットコム証券が、BTMUと緊密に連携して顧客利便を上げているように、大和証券としては、親密だった三井住友銀行を組めば手軽だったのでしょうが、SMBC大和の合弁解消を契機に自前で新銀行を作ることになったと思われています。

ネット専業証券が減少する中、ネット専業銀行が増えるのは面白い流れです。9月には、野村証券が子会社のジョインベスト証券を今年11月に本体へ吸収すると発表しています。オリックス証券が、かざか証券や丸八証券のダイレクト部門を買収した上で、今月27日にはマネックス証券と経営統合すると発表しました。手数料の安さで大量の顧客を集め、そこから貸株金利などで収益を確保するインターネット証券の成長モデルが行き詰まったと考える人が増えています。当面は合併等による規模のメリット追求が進むだろうというのが大方の予想です。筆者には、打開策が思い当たりませんが、松井やSBIなどが、新しいアイディアを出してくるのが楽しみです。

フルバンクを目指す新設銀行3社は軒並み苦戦していますが、ネット専業銀行は有人店舗を持たない分、利益を出しやすいと思われています。しかし、実際にはセブン銀行を除けば、ネット専業銀行も計画倒れの連続です。今年4−6月期では、専業6行のうち、じぶん銀行のみが赤字で他の5行は黒字でした。じぶん銀は設立まもない状況で、事業計画通りに順調に業容を拡大しているとされます。安定して大きな利益を出すセブン銀は、ネット専業銀行というよりは、ATM管理業者であり、顧客は預金者というよりは他の銀行です。それ自体は立派、かつ革新的なビジネス・モデルですが、ぼつぼつと成長モデルの限界が見えつつあります。そこでセブン銀は、ATMアウトソーシングの受託やネット・ビジネスに力を入れています。先日、報道されたアグリゲーション・サービスなども、有料か無料かは知りませんが、他行他社の顧客との接点をつくろうとする意図が明白です。セブンを除くネット専業銀行の課題は、集めた資金の運用力に尽きます。現在のマネーフローでは、金利や手数料を少し優遇すれば、預金を集めるのは簡単なことです。要は、貸出か証券運用でいかに安定かつ効率的な運用するかが、銀行ビジネスの要です。それが昔と違って難しくなったことが問題です。

大和証券の新銀行も、預金金利を優遇して、証券顧客の運用準備資金を取り込むことを狙っているそうです。とはいえ、預金保険の対象である一人1千万円が上限となるでしょうが。新銀行の顧客からはATMサービスやネット経由での振込サービスを要求されるでしょう。ATMはフルアウトソーシング業者が3社もありますから、簡単かつ、低コストで実現できます。振込となると、全銀に加入することになるでしょう。そのコストは大きな負担となります。325万口座のイーネット、202万口座のジャパンネットともに、決済サービスに重点を置いていますが、収支を取るのに四苦八苦です。大和証券は、今年8月時点で303万の個人顧客を抱えていますので、新銀行が100万口座以上を確保するのに時間はかからないでしょう。年間、3、40億円は下らない経費を賄うには、早期に4千億円程度の預金を集めなくてはなりません。そして、そこから1%以上の運用益を上げることが前提となります。大半を国債で運用するのでしょうが、その運用管理はグループ会社に委託するのでしょうか。となると、顧客に国債ファンドを売るのと余り違わないことになります。機関銀行ではないかとの懸念も出てくるでしょう。金融庁が、どのように判断するかに興味があります。金融庁は、新銀行のビジネス・モデル、事業計画の実現可能性、公共性、銀証利益相反の観点から複雑な判断をしなくてはなりません。大和証券の準備メンバーは、それぞれの疑問に対して、想像を絶する煩雑な資料作りを開業まで続けなくてはなりません。システム対応は、難しくはありません。預金と決済のような単純な業務だけですし、そのままでも使えるようなパッケージもいくつかあります。

筆者は、金融関連ビジネスが長すぎて銀証分離が前提という意識が抜けません。考えが古いのでしょう。昨年来、米国では大手証券の大半が銀行持ち株会社化してしまいました。国内でも、同様の動きにあります。しかし、銀行が受ける規制やコストを考え、顧客が期待するサービスと安全性を考えれば、銀証一体化が経営戦略として正しいのかはわかりません。また、大和証券が、本当にリテール顧客向けに新銀行を作ろうとしているのか、本当の狙いはホールセールではないのかなど、このニュースは考えるほどに、面白いテーマを提供してくれます。