アンチマネロン (みずほIRが広島銀行、福岡銀行を支援)


ニッキンの平成21年7月17日号記事です。みずほ情報総研が、広島銀行、福岡銀行から「アンチ・マネーローンダリング対応支援」サービスを受託したそうです。7月から作業開始するそうですが、完了時期や費用等に関しての発表はありません。両行はご存知のように全面的なIT共同化を行っており、旧富士銀行親密行です。

昨年末から今年前半にかけて、三大銀行グループが本格的なAMLシステムを稼働させました。6月にはシティバンクがAML態勢不備を理由に、個人金融部門の販売活動一か月停止という大変厳しい行政処分を受けました。余りに厳しい処分なので、大手銀行やメディアの間では、金融庁がシティバンクを目の敵にしているという風評が流れました。地銀の解釈は違ったようです。シティのAML態勢は大手米銀レベルで自分達より数段上の筈で、それでもこんな処分を受けるのかと相当なショックだったようです。5年前の行政処分の際に、約束し実施したとする経営管理態勢改善が、実際には十分に実行されていなかったことが虚偽の報告とみなされ、重い処分になったのだそうです。

国際機関FATFが昨年秋に対日審査結果を発表し、日本にかなり厳しい評価を下しました。それを見ると極めて形式的かつ一律的な評価と言えます。例えば取引先情報の整備ができていないとか、各種法令が整備されていないと指摘されていますが、法律ではなくてもガイドラインなどで行政指導か自主規制していることを軽視しています。ましてや、取引先情報が未整備だなどと言われると、何をチェックしたのか、日本の方が欧米の銀行よりはるかに進んでいるのにと思ってしまいます。要は、FATF調査団に正確かつ充分な説明をしなかったのだろうと個人的には結論づけた次第です。しかし、一度こうした評価を受けると、修正するのは大変です。来年秋までに日本としては改善状況を報告しなくてはなりません。省庁横断の案件ですので、金融庁としては単独では何も言えませんから、頭が痛いでしょう。不必要な規制は実施したくないし、何か大きな違反事例が出ても困ります。その点で国連が対北朝鮮制裁で指定した海外資産凍結をどれだけ正確迅速に実施できるかは、良いテストケースになるでしょう。

IT業界にとってAMLは、棚からボタ餅の制度案件です。国内にはノウハウがないので、海外のコンサル資格を取ったり、実績のある海外パッケージの販売代理権を取得したりしました。少しでもビジネス・サイズを大きくしようと、大がかりなコンサル案件に仕立てたり、巨大な取引ログを総なめしたり、考えられる限りのルールを並べてリアルタイムでフィルタリングするような仕組みを提案しています。ところが、金融庁は豪華なセット料理を求めている訳ではありません。各行の業務分野や客層に応じて、必要と判断される機能と態勢を整備するように求めています。メガバンク以外の銀行にとっては、何かあっても責任を追及されない程度で身の丈にあったAML対策が欲しいのです。しかし、その基準はありません。そこで、例のごとくの横にらみが続いています。ITベンダーからすれば、メガとのビジネスが決着して、いざ地銀ビジネスと考えるのですが、どこも動きません。セミナーを開催すれば、大勢が参加して、アンケートには興味がある、検討したいと記入しますが、具体的検討に進むケースはありません。

何社かのベンダーが、どうしたら地銀へのAMLビジネスを推進できるだろうかと相談に来ました。筆者としては、免責される程度の機能で、各銀行の実情に合わせて、かつ、全コストが2千万円以下としか答えられません。ベンダーとしては、とても免責を保証できないし、そんな金額では開発・納入できないと言います。しかし、メガバンクに比べると、取引件数は圧倒的に少なく、顧客の大半が顔なじみです。怪しいか怪しくないかは、現場担当者が判断できます。こうした取引を除けば、チェック対象取引は更に少なくなります。下手にシステム対応するよりも、人間がチェックした方が精度も高く、コストも安いでしょう。要は人手で対応するよりも効率的で低コストで精度の高いシステム・ソリューションを提示すべきです。または、複数の銀行が、関連するデータを特定のAMLシステムにデイリーかウィークリーに集めて、そこでチェックして各行にフィードバックする仕組みにするかです。その場合でも、参加銀行はデータ抽出の仕組みを用意しなくてはなりません。しかし、個別対応するよりもAML対策としての実質的効果を高めることができるでしょう。

どのベンダーのAMLソリューションも、パッケージだけのコストであれば、数千万円です。それにコンサルによる要件定義を加えると1億を優に超えます。更にデータ抽出の仕組みとアプリ開発を加えて数億円となります。コスト・プッシュで考えれば価格はどこまでも上がります。単独にせよ、共同にせよ、コストの上限と機能の下限を見定めて、適当な組み合わせを可能とするようなソリューションの設計が必要です。その点、みずほIRだけでなく、MUFG系、SMFG系も同様に、自社の経験とシステムを活用して、銀行業界全体としてのAMLシステム構築を主導して欲しいものです。地銀を始めとする地域金融機関は、AMLだけでなく、様々な目的で必要となるデータ抽出機能を整備しておくことです。EAIでもETLでも、使えるソリューションは豊富にあります。必要の都度、データ収集、抽出の仕組みを作る時代ではありません。