決済システム (プライベート為替システム)


金融経済新聞の平成21年4月20日号記事です。2011年秋に稼働予定の第六次全銀システムに関連して、オーナーの東京銀行協会とシステム開発運用を受託するNTTデータの間で、従来のデータ通信サービス契約(通称、デ通サ)とは異なり、ソフトの所有権を発注者側が保有する契約条件が検討されているということです。第六次全銀で間に合わなければ、2019年頃の第七次全銀では所有権が発注側になる可能性があるそうです。その場合、全銀システムとは別に、任意の銀行グループによる新たな為替システムが構築され、料金やサービス内容に競争原理が取り入れられる可能性があるとしています。

デ通サ契約期間が2011年11月に切れる第五次全銀システムは、第六次でTCP/IP化され、XML採用でコメント電文の機能強化が予定されています。開発費等創設費用が3百数十億円とされており、何でそんなにかかるのかという声や以前に比べると安くなったとする声が入り乱れています。ベンダー選定にあたっては、競争原理を導入すべきだとする声も一部にありましたが、大方の予想通りに、NTTデータが受注しました。国産ベンダーでNTTデータと競合しようとする会社がある筈もなく、外資系では国内為替システムの実績は皆無です。この体制は、電気通信事業法施行前の電電公社体制そのものです。しかし、今現在無事に稼働しているシステムを破棄して全く新規開発するリスクを考えると、ベンダーを変えるメリットが見当たらないことも事実です。

システムの更改時期が来たので少し機能アップしながら、新システムを導入するというのは、よくある話です。しかし、我が国の決済システムは大きな曲がり角にあることも確かで、過去の延長線だけの思考に違和感や危機感を抱く人は少なくありません。さりとて、業界全体の合意を前提とすれば、大きな変革を望むこと自体が無理でしょう。記事にあるように、一部銀行が個別の為替システムを作る方が、数段、簡単で速くて低コストです。昔と違って、メガバンクやゆうちょ銀が、単独あるいは共同で作れば、大半の法人・個人をカバーできますので、実務的に問題のない為替ネットが実現できます。

筆者は、昔から決済システム三層化論者です。インターバンクの大口で閉鎖性の高いハイ・セキュリティ・システム(現在の日銀ネットに相当)、銀行だけでなく信用度の高い法人も参加する半開放型大口・中口専用決済システム(現在のSWIFTに銀行口座、証券口座、電子債権などによる最終セトルメント機能を連動させたもの)、そして一般個人を含めた開放型の小口決済システム(現在は存在しない)の三つです。それぞれは、セキュリティ、利便性、取引保証性、料金などで層別化します。分ける理由は単純です。5万円送るのも5億円送るのも、同じ手続きと料金というのは不合理というだけのことです。1973年に稼働した全銀システムは、若干の決済リスク対策が強化された以外に、顧客サービスを高めるような機能改善は何もなく、機械的に8年毎に更改投資されてきました。これほど社会の情報化、ネットワーク化が進んだにも関わらずです。加えて、為替(拡大解釈して決済という人もいる)は銀行固有業務だとして、誰も改革を求めませんでした。極めて不可思議な話です。その為か判りませんが、全銀の取扱い件数は、1日500万件前後が10年以上も続いて、殆ど増えていません。

そうした中、金融審議会は全銀システム運営主体の法的責任能力に疑問を投げかけ、制度改正の必要性を唱えました。また、上限額を50〜100万円と制限されますが、銀行以外の登録事業会社に為替業務を認める資金決済法が国会に上程されており、早ければ来年5月頃には施行される予定です。小口決済に競争原理が導入されることになり、手数料低下や多様な付加価値サービス或いは高い利便性のサービスが期待できます。最終的には銀行の預金口座を使わざるをえないので、銀行ビジネスに大きな影響はあるまいとする考えがある一方で、証券口座やポイントなどと組み合わせれば、面白い決済サービスや新商品が可能となり、銀行は置いていかれるとの考えもあります。決済額上限にしても、小口化して繰り返し処理すれば、制約を抜けられます。どうせシステム処理コストは一回2、3円です。

新しい決済サービスに関するアイディアは、昔からいろいろとあります。ビジネスモデル特許を使えば、個人でも資金提供者と組んで、決済システムを立ち上げることができるでしょう。クラウドを使ってやる人が出るかもしれません。これまで、金融における革新は資産運用に関する金融工学が中心でした。決済サービスで銀行を中抜きできる仕組みが実現すれば、次は、貸付に関してもP2Pローンなどの普及に弾みがつくかもしれません。こうした発想は、恐らく銀行員以外から出てくるでしょう。15年前に始まった我が国の金融ビッグバンも、ようやくリテール分野に本格的な影響が及ぶことになります。