損保のネット販売 (東京海上がNTTと提携)


日経新聞平成21年1月21日付の記事です。東京海上がNTTグループと提携して、インターネットによる自動車保険販売の別会社を設立するそうです。今春の開業を目指します。1月26日には設立準備会社をNTTファイナンスと発足させて、新損保会社の設立認可と速やかな事業開始を行うとしています。以前から準備していたのでしょう。

新会社は、NTTから携帯電話やNGNの技術支援を受けながら、新しい損保ビジネスモデル構築を行うとしていますが、これまで代理店チャネル重視であった東海上が、直販のネット・チャネルに進出するということが注目されています。別会社にして、代理店の反発をそらしながら、14万人近いNTT社員を顧客にできれば、一石二鳥との考えなのでしょう。NGNを意識していることも興味深い動きです。

損保業界では、三井住友、あいおい、ニッセイ同和の経営統合が計画されています。あいおいの前身である千代田火災はトヨタが筆頭株主で、大東京火災は自動車保険に強いことで知られていました。この3社が統合すると規模では1位となります。すでに、あいおいの時価総額が損保ジャパンを超えました。業界1、2位の規模を巡る動きが急になってきました。それは、生保でも同様です。

AIGグループ3社や大和生命を買収するのはどこか。外資か国内大手か。結果によって勢力図が大きく変わります。そんな状況下で、三井生命と住友生命が急接近しています。日生は、かんぽとの関係強化に注力しています。メディアは規模よりも顧客サービスや質的競争が重要だと言いますが、商品やサービスで大きな差別化ができない金融ビジネスでは、規模による企業イメージとチャネルの数と多様性が顧客選択の重要ポイントです。または、価格競争ですが、これは弱者の戦略です。

生保では対面アウトバウンド、損保では代理店インバウンドというのが伝統的チャネルでした。人口が減り、高齢化すれば生保市場は縮小しながらニーズも変わります。自動車保険と火災保険に依存する損保では、車と住宅の販売が激減し回復の見通しを立てることもできません。市場全体が縮小するステージでは、とにかく生き残ることが先決です。なんでもありの戦略展開が行われ、大手2、3社とニッチ狙いが数社残るということになります。働くには、ニッチの方が数段楽しいのですが、人はとかく規模と知名度で選択します。証券や銀行ビジネスであれば海外進出も実現性がありますが、保険の場合は極めてリスクが高い。結局は現地企業との合弁を作って利用されるか、資本出資してキャピタル・ゲインを得るかということになります。余り面白食ない戦略オプションです。

10年程前の都銀再編において、大きな絵を描いたみずほとMUFGは、強固なビジネス基盤を確保できました。不祥事や内紛などでメディアに叩かれることはありますが、それは有名税です。顧客基盤、資産規模、ビジネス・ラインなどを比較すれば、やはりNo.3以下は辛いポジションです。ワコビアを寸前でさらわれたシティバンクが今では準大手となってしまいました。挽回しようにも、もう買収相手がありません。となると、集中戦略しか取りえませんので、コア事業・ノンコア事業と称して銀証分離ということになりました。その結果、日本でも日興グループをどこが買うかということが大きく注目されています。(シティの取りえる戦略としては、HSBCやドイチェなどとの合併もありましたが、財務状況が許さなかったのでしょう。)

今回の経済危機は、広域直下型地震に例えられますが、惑星が衝突したようなものかも知れあません。今、保険業界は再編の中で生き残り策を追求しています。証券業界は不況に慣れていますから、静かにして鋭気を養っています。銀行は、投資が認められませんので、将来の勉強に励んでいます。無料セミナーは、どこも満席です。ITベンダーへ無料RFIを出しまくっています。ベンダーは、やがてはビジネスになるかと、高い営業経費に泣きながらも銀行に付き合っています。見返りはないと思うのですが。それでも、RFI回答の為に会議をして資料を作っていれば、担当者は仕事をしていることになります。給料は天から降ってくるので、それで良いのでしょう。

変化が変化を呼ぶこの時代で、IT戦略はいかにあるべきか?多くの場合は、ベンダー手持ちのソリューションに環境変化の項目の中から、都合の良いことだけを取り出してストーリーを作ります。的中率が極めて低いのは当然です。恐らく経営トップでも、戦略など決められません。経営がなにも決めないからITも戦略を決められない・・などというのは、責任転嫁です。経営に朝令暮改を許すIT戦略が必要です。または、何もしない。または、経費削減の為の投資を進めることです。ただし、同年度内での投資回収が必要です。その為には新しいファイナンスの仕組みが必要です。

今回の経済危機では、IT業界も巻き込まれました。初めてのことです。金融機関と同様に、IT企業も生き残り戦略が必要になっています。相当な数のIT企業が、撤退あるいは縮小するでしょう。金融業界よりも有利なのは海外における事業機会があることですが、はたして日本に成功企業が出てくるでしょうか?メディアは、オラクルやグーグル、シスコなどがハードウェアに進出したことで、IT産業が垂直統合に向かうと書きます。とんでもないミスリーディングで、顧客利便のためにワンストップ化を進めているだけです。ハードはOEMです。アンバンドルとリバンドルは、永遠に繰り返される構造変化です。製品のアンバンドリングは続いています。サービスは、リバンドリングです。金融のバンドリング戦略でも対象市場とタイミングの選択が重要です。