システム統合 (三菱東京UFJが移行完了)


日経新聞平成20年12月16日号記事です。BTMUが史上最大規模のITプロジェクトを完了ました。12月13日、14日の土日を使って、旧UFJ最後の115支店無事に移行させました。約3年でピーク時6千人、総額3300億円のプロジェクトでした。関係者の皆さんは、判っていたとはいえ、安堵と達成感で一杯でしょう。

日経コンピュータやニッキンなどは報道していましたが、全国紙は日経くらいで他紙は無視というか、この成功はなかったことにしたいようです。最近ですら、筆者のところに[移行において、どんなトラブルがありえるか?」などと聞いてくるくらい、ネタ待ちでした。そんなに難しいプロジェクトだと思うのなら、「何故、大きな障害もなく、プロジェクトを達成できたのか?」という報道でもすれば良いのにと思います。それでも、未練がましく「効率が落ちて現場に不満があり、10年遅れている、」といった40代行員の声(?)をつけて、「混乱を解消して、今まで以上のサービスを提供することが、統合の成否を決める。」と括っています。

当件に関して、今までジャーナリズムの偏向的、偏狭、トラブル待ちという後ろ向きな報道姿勢を度々非難してきました。統合が無事に完了して、もう良いだろうと思っていたのですが、まだ「何故、三和システムでないのか?どんな理由で三菱システムなのか?」と聞いてきます。理由はいくつもありますが、代表的なことは以下の三つでしょう。

@     両行システムは、ともに導入から20年以上も経っており、処理能力でも、単純に片方に寄せることはできない。どちらを残すにしても、ほぼ同様のコストがかかり、メディアは因縁をつけ、大衆と行政はそれを真に受ける。

A     三和システムは、サービス・メニューや処理効率など三菱システムよりアプリ面で優れている点があるが、技術的アーキテクチャやインフラに関しては、三菱システムの方が優れており片寄せし易い。統合後、20年使うと考えれば、インフラで選ぶのは当然である。

B     システムは、その企業の組織文化、業務規程をそのまま反映しており、合併行側の文化と規定を残すのは当たり前。旧UFJのIT責任者たちですら、三和システムを使うべきとは考えていなかった。こうした騒動は、マスコミの自作自演である。

移行した旧UFJ店で、使い憎いとか効率が悪いという評価があるようですが、それも馴れの問題でしょう。みずほの時もそうでした。文句ばから言っていないで、早く慣れる努力をするのが組織人というものです。

両行の合併が経営的には正解だったことは間違いありません。大銀行の再編に乗り遅れていれば、今日のBTMUはありません。顧客カバレッジ、業務カバレッジともにNo.1というのは本当に有利です。提携などにおいても極めて有利なポジションを得られます。例えば、地方銀行64行におけるMUFG親密行の数は、旧三菱の20数行が倍近くに増えています。地域金融の40%を占める地銀の過半を取り込めることの意味は絶大です。三菱、東京、三和、東海という地域、業務、資本関係を補完しあえる合併だったということです。米国でシティ・バンクがワコビア吸収に失敗して、最大手グループから脱落したことを見れば、住銀とのUFJ取り合いは、存亡の分かれ道でした。

システム論からすれば、本当に片寄せが良かったのか?というのが筆者の本音です。これだけの時間と費用をかけるのであれば、新しい技術で革新的な業務プロセス、顧客サービスを実現した方が良かったろうと思います。顧客が取引する際に、統合前も後も変わりないのですから、あのプロジェクトでは何をしたの?と思うでしょう。幸いにも、実績ある新技術が数多く採用されたと聞きます。これらの技術を活用するのはこれからです。ということは、日経記事で言う「今まで以上のサービスを提供できるかどうかが、統合の成否を決める。」というのは正しい。ただし、サービスとは誰のための何か?が問題となります。大企業、富裕個人をコアとしてきた旧三菱とリテールをコアとしてきた三和では、組織文化が全く異なります。MUFGは、全ての客層、業務を重視するユニバーサル・バンクを目指すとしています。これも実現が難しい。成功事例はありません。今の人材を活かし、分野に応じた組織文化を再構築し、システムに搭載していくという本質的な合併目標の追求は永遠に続きます。銀行合併時の恒例である民族浄化などという下らない内部抗争をやっている暇はありません。旧UFJの人も、ナショナルフラッグ・バンク確立を目指して頑張って欲しいものです。

当プロジェクトに投入されていたベンダー技術者は、今年春ころから自社に戻りました。昨年までエレベーターに乗るのも、昼食とるのも行列だった東陽町や木場の周辺は、最近では静かなものです。ベンダー経営者は、新たな案件を追いましたが、金融危機によって新規案件が消えてしまいました。気の重い正月でしょうが、経営を根本から考え直す時間です。技術者の皆さんは、ゆっくりと正月を過ごせる希少なチャンスです。株券電子化以外に大きな案件がありません。経営戦略と資金力のある金融機関にとっては、来年はIT戦略で売って出る絶好の機会でもあります。低コストで良質な技術者を獲得できます。