都民銀が楽天支店を廃止


日経新聞平成20年11月15日号が小さく報道していました。前日の14日に都民銀行が楽天との提携を解消して、楽天支店をイーバンクに事業譲渡した上で廃店すると発表しました。楽天支店の顧客は、都民銀行本体の顧客とは異なる独自の商品・サービスを受ける独立した顧客層なので、自動的にイーバンクへ移管されます。取引継続を望まない顧客はその旨を通知すれば、来年2月23日の譲渡日あるいは、それ以前に口座解約できます。顧客数がどのくらいなのか知りませんが、余り多くはないでしょうから移管にはさしたる手間やトラブルはないと想像します。http://rakuten.tominbank.co.jp/

楽天と西京銀行の共同ネット銀行構想が破たんした後、都民銀が楽天の提携先となり、業務内容確定やシステム対応などの問題で開設が一年遅れながら、昨年7月23日に開業したばかりです。何とも悲惨な結末というところです。今年8月に楽天がイーバンクに救済出資を決めた時には、楽天支店はどうなるのだろうとの声が出ました。多くの人は、並行して走らせるだろうと言いましたが、結論としては提携解消ということです。双方にとって、楽天支店は一年経った時点で成功とは言えず、今後の展望も見えなかったということなのでしょう。筆者は、今回初めて楽天支店のサービス内容を見てみました。殆どが楽天向けの独自サービスで、楽天抜きでは存続できない業務ばかりでした。提携において一方的な依存関係が危険なことの典型例です。都民銀は、今回の提携解消で約3億円の損失が発生すると発表しています。(楽天の負担分については触れていません。)損切りしたということでしょう。人件費などは経費処理されるので、大半はシステム関連の除却費用でしょう。本体の勘定系システムとは別個のシステムなので、再利用できる機会があるとか、他行に販売できるとの意見もありますが、実際には、変更修正費用が大きすぎて新規開発した方が低コストでしょう。これほど楽天向けサービスに偏ってしまっていると、まずは他のケースでは使えません。

SBIとスルガ銀のケースも銀行が気の毒でした。SBIが住友信託とネット銀行を設立し、スルガとSBIは提携を解消し、スルガが後処理を行いました。外部から見れば一方的に捨てられたように見えました。非金融業では、良く言えば柔軟な経営方針変更が当たり前ですが、金融機関は、一度決めたことを守るのが信義誠実とする産業文化です。異なる文化を持つ企業との提携には気をつけないといけません。それは事前に権利義務関係を明確にしておくだけでなく、提携先としての価値を十分かつ持続的に提供できる機能が自社になくてはいけないということです。昔と異なり、銀行免許は、比較的容易に入手できる時代となれば尚更のことです。楽天ほどの会員を持つサイトであれば、メガバンクでも喜んで提携するでしょう。メガを避けるということは、楽天自身が自分の考えを通したいとするあらわれです。それに付き合いきれる既存銀行はないでしょう。文化も制度も違いすぎます。

楽天は、以前から金融業務に強い関心を持っていました。ネット上で行き交う取引資金の滞留と小口ではあるが大量の精算手数料に魅力を感じているということです。イーバンクも決済サービス中心のネット銀行ですが、決済手数料だけでは存続できず、預金を集めて、その運用に失敗してしまいました。楽天幹部は、決済手数料だけで成立するビジネス・モデルがあると言っているそうですが、具体的には何も公表していません。どのようなモデルなのか早く知りたいところです。楽天は、3千万を超える会員に対して金融コングロマリットを構築すると言ってきました。証券、個人ローン、クレジットカード、保険、銀行によって会員を囲い込むというのです。楽天証券の成功が、コングロマリット戦略を推進させようとしているのかも知れません。300万近くの口座を持つイーバンクの救済申込は、まさに、渡りに船だったのでしょう。しかし、ネット利用者のネット銀行選択理由は、第一に金利と手数料であり、第二が利便性です。どちらも、コモディティの薄利多売型ですが、顧客の流動性が高すぎることが難点です。つまり、儲かる期間が短すぎる。儲かるだけの利幅を確保した途端に他社が割り込んできます。変化とスピードに対応できる銀行サービスを提供するのは、複数の銀行を使って桶狭間の鉄砲隊のような交替態勢が不可欠だと思います。どうも金融出身者は金融コングロマリットが好きなようで何でも並べたがります。そして、業態別の規制の縄に足を取られることが多いようです。既存銀行がどこもリテール重視と言いながら成功例がないという事実を知らないのでしょうか?評論家は、銀行が個人のニーズに応えていないからだと言いますが、具体的に採算の取れる解決策を誰も知りません。ちなみにヤフーやトヨタなどは銀行所有に全く興味を示しません。低利益率で規制コストが高いというのが理由だそうです。オープン提携で様々な銀行サービスを提供した方が合理的と考えています。しばらくは、この二つの考え(コングロマリット化とオープン提携)が試行錯誤され続けるのでしょう。

ところで楽天支店の勘定系i‐flex/FlexcubeやコンタクトセンターCICなどは、稼働期間1年半と余りに勿体ない。勘定系だけでも20億円の開発費と言われました。その点、CRMにSalesforceを使ったのは正解でした。初期投資が殆ど不要でしたから。苦労して開発した楽天フィナンシャルソリューションやソランなどのエンジニアには気の毒な話でした。しかし、Flexcubeを扱える技術者は今では希少な存在ですので、それを活かす道はあるでしょう。