グローバルIT組織 (野村が新体制)

ニッキン平成20年11月21日号の記事です。野村HDは買収したリーマンのIT部門とオペレーション部門を再編したとのことです。ホールセールやリテールなどのビジネスライン別の組織と地域別のマトリックス組織を採用しました。地域は、日本、AP、欧州、インドの4地域制とし、日本以外にはリーマン出身者を配置したそうです。また、グループ全体のCIOは、日本人の執行役ですが、他はリーマン出身者と組織を温存するようです。

日経新聞11月25日号では、旧リーマンのインドIT会社のロール&ミッションが報道されていました。社名をノムラ・サービス・インディアと改称しますが、2700名の社員はそのままで、来年から機関投資家向けのシステム開発を担当するとのことです。開発要員は1100名で、電子取引専門スタッフ400名、財務管理専門家400名などと合わせて、アルゴリズム取引システムやリスク管理モデルの開発・運営を担当するそうです。こうした野村の動きに危機感を持ったのでしょうか、大和SMBCが機関投資家向けシステムの強化を数10億円投資で行うと今月発表しました。

野村が9月にリーマンのアジア部門を200億円で、欧州部門を2ドルで買収すると発表した際には、棚から牡丹餅だと羨ましく思いました。更に、10月に入ってムンバイのIT関連3社を数十億円で買収と発表した時には、グロ−バル・プレイヤーのチケットを手に入れたと感じました。とりあえずは全リーマン社員を現在の給与で継続雇用しますが、順次、なじまない社員から整理していくでしょう。とはいえ、人材が流出しては元も子もありませんから、慎重かつ静かに進めることでしょう。そのためにもリーマンの管理職達は必要不可欠な存在です。

日経記事によれば、来年から法人業務と社内管理システムの開発・運営はムンバイを中心とするとのことです。確かに法人向け、機関投資家向けはリテールと異なり、カストマイズが必要で、かつ、高度なアルゴリズムが要求されます。金融工学、システム工学、そして開発・運用技術をもったムンバイ技術者に期待するところは大でしょう。

懸念は、野村といえどもグローバル・ビジネスに精通する人材は限られることです。日本的なマネジメントや戦略を押し付ければ、即座に転出してしまいます。それも優秀な人材から。随分と昔の話ですが、野村ロンドンを訪問したことがあります。殆どが日本人で日本語が飛び交い、現地のスタッフは秘書ばかりという印象でした。出入りする来客も半分は日本人風でした。東京銀行以外の都銀に比べれば、まだ、ましですが、とても現地化しているとは見えませんでした。同じ時期、IBMで中華人民共和国のビジネスは日本IBMが担当していたのですが、中国の顧客からは日本人よりもアメリカ人の方が話が通じるとクレームばかり受け、ついには香港拠点のアメリカ人チームが担当するようになったことがあります。通じるというのは、言葉のことではなく、考え方や折衝の方法など文化的なことです。野村社員が米欧印の人々と、親会社意識を出さず、対等に意思疎通してチームオペレーションすることが必要です。それのできる社員が数百人は必要です。旧リーマンの社員は6千名以上なのですから。または、米国流の合併人事を行って、短期間に名実ともにグローバル化することです。HDと海外はすべて英語と米英流経営としてしまうのです。米国では、合併時の人員整理は、両社の評価の低い社員を20%とか30%カットします。結果として人材の質は大きく底上げされます。日本のように、買収された側の社員ばかりを、民族浄化と称して外すようなことはしません。

もう一点、注視すべきことがあります。NRIの立場です。同社の中間期決算での売上1652億円に占める野村グループでの売上は490億円と30%を占めます。これが、今後ムンバイに奪われるのか?両社はどのような関係になるのか?できれば、ムンバイをNRIの子会社として、我が国最初のグルーバルIT企業に飛躍したいところでしょう。しかし、HDのNRI株保有率は5.78%です。他のグループ会社で30%前後保有しているとしても、今更、上場廃止して100%子会社にするのは難しいでしょう。ムンバイをNRI子会社にするのは簡単ではなさそうです。やはり、2社並列となるのでしょうか?その場合、NRIは日本国内に封じ込められる可能性が高まります。NRIとしては、今後の成長分野を海外に求める戦略を発表していますが、その実施が制約されることになります。

いずれにせよ、金融ITの国際化において、ノムラ・サービス・インディアは重要な生産拠点かつ交易ルートとなることは確かだと思います。野村の海外IT部門にとどめるのは、余りに勿体ない話です。