ICキャッシュカードの多機能化 (大手行、地銀等が再発行契機に)


ニッキン平成20年10月3日号の記事です。銀行界では、2012年5月からICキャッシュカードの認証方式を、現在のオフライン方式から、オンライン方式に変えることになっています。また、ICカードの有効期限が5年であり、2004年頃から発行されたため、来年からカード更新の時期に入ります。この機会にカードを多機能化させる動きが強まっているそうです。

偽造カード犯罪騒動の時に、筆者はカードが銀行所有物であり、有効期限がないから顧客の現況確認ができない。カードを顧客所有とし、クレジット同様に有効期限を設けるべきだと発言していました。それが、恥ずかしながらICカードに5年有効期限が設定されていたとは最近まで知りませんでした。期限の1、2ヶ月前に新カードが送られてくるそうです。但し、生体認証登録をしている場合は、銀行に行って改めて認証データの登録が必要なのだそうです。いかにも面倒ですし、セキュリティ以外にはとりたてて顧客メリットがないのですから、再登録しないお客も多いでしょう。どうなるのかは知りませんが。また、郵便配達の時間に自宅が無人という世帯が多い状況からすれば、郵便局預りの再発行カード同封書留も多いでしょう。夜中に郵便局に侵入し、旨くカードを抜き出して、それに自分の生体データを登録してしまえば、これは良い儲け話となりそうです。実際には再登録の時点で、本人確認をするのでしょうが。それが、また、お客の不興を買うことにもなります。もう少し、スマートな運用方法がないものでしょうか?ベンダーは純テクばかり磨いていないで、少しは人的要素も研究しないと本格的な普及には至らないことになります。

実際、キャッシュカードのIC化率は惨憺たるものです。金融庁調査では、主要行で8.7%、地銀で4.4%、第二地銀1.6%、信金2.2%、全体で5.6%です。(平成20年3月末時点)1年前が全体で2.9%ですから倍増ではありますが、この調子だと10年たっても、普及率は30%代です。加えて、ICカードを持っているが、生体認証登録をしていない比率は、55%前後あります。安くなったので、ICカード化自体は問題ないとして、生体認証を普及させるべきか、撤退すべきか、悩ましいところです。

昨年、地銀の多くが、オンライン生体認証実施時期を延期して欲しいと要請しました。ATMで使うだけであれば、ATM用FEPシステムに認証データを持たせれば良いのですが、窓口や将来ネット経由でも使用するとなれば、勘定系システム本体に認証データを持たせることになります。古いシステムでは、こんなことを想定していませんから、大掛かりな改造が必要です。オンライン認証化の為だけに、数十億円以上をかけて勘定系更改をするなどという話は通りません。多くの銀行は、ATM用FEPで対応することにしたようです。こうして、些細なことから、システム全体の体系が崩れていきます。もう少しすると、勘定系、情報系、対外系のほかに認証系などというサブシステムが、必要になるのでしょう。ゆうちょ銀行のように、ATMを業務系本体で処理しているのであれば、オンライン認証化は簡単ですが、ATM24時間稼働などでは相当な負担となります。要は、アーキテクチャの問題でして、付焼刃を続けていれば、必ずデッドロックに突き当たることになります。これは大変なITリスクということです。

ICカードの多機能化ですが、ニッキン記事は広島銀行の地元交通事業者との提携カードを紹介しています。乗車券以外にも美術館、飲食店での割引きサービスや少額クレジットにも対応しているそうです。10月4日付け日経夕刊で、フェリカが地域振興カードの発行・運用支援事業を始めるという記事がありました。従来のポケット8枚分を20枚まで拡張したそうです。つまり、商店街電子マネー、ポイントカード、自治体住民カード、病院診察券などカード20枚分を一体化できます。端末機を月額4千円弱で貸し出し、カードの使用状況を分析して、街の振興支援をするといいます。これに比べると、銀行の多機能化は、どこまでも自分中心で、利用者や提携先の視点に欠けます。これは負けだなというのが正直なところです。信金や地銀は、結局、地域振興でも非金融系のカード会社に遅れをとるでしょう。せいぜいチャージ機能を提供するくらいでしょうか?それも限りなく安い手数料で。なんの為に預金口座を管理して、預金保険や経費を負担しているのか?大逆転の方策は、信金中金か地銀協が、フェリカポケット・マーケティング社を買収することでしょうか?その機会があるとすれば、メガが即断即決するでしょうし。