BCP (日銀が具体的手法を紹介)


平成20年6月24日付けで、日本銀行は「業務継続体制整備の具体的な手法」としてBCPに関する大手金融機関との情報交換のまとめを公表しました。

http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc/fsk0806a.htm

メガバンク、りそな、MUTB、日本トラスティ、野村証券などが日銀の呼びかけに応じて、昨年11月から6回にわたって情報交換会を開き、各社の具体的BCP施策を共有しあった結果だそうです。海外では、金融機関がBCPに関する情報共有や共同訓練などの場があるのに、日本にはないという危機感から日銀が主導したようです。

日銀は、今年の5月9日に、BCPの実効性確保に向けた確認項目と具体的取り組み事例を公表しています。これも、随分と判りやすく、まとまったレポートです。

http://www.boj.or.jp/type/ronbun/ron/research07/ron0805a.htm

5月のレポートでは、主としてBCPで考慮すべき事項が列挙されています。被災シナリオや重要業務の選定を除けば、組織作りと規定作りの得意な金融機関にとって、迷う事項は少ないと思います。しかし、数社と話をしますと、被災シナリオが地震に偏っていたり、重要業務が曖昧で実効性に疑問を感じることがあります。例えば、決済と預金引出が最重要で、その為に、友好他行と相互にバックアップ用施設・危機の提供協定を結んでいるというのです。金融機関に良く見られる「考えている。」「既にやっている。」の類で、いざという場合に実働できるのか不安になることが多いのです。例えば、処理途中取引の復元を先行させるのか、当該システムの立上げを先行させるのか。バックアップ・システム同士のOSやミドルウェアの互換性は確保できているのか。操作手順の確認はできているのか。発動基準と権限は確定しているのか。・・・・です。回答を聞く限り、半日や1日で対応できるとは思えないケースが多いのです。

そもそも、重要業務とする決済は、具体的にどのような取引なのか、決済取引全てなのか。給与振込と公金引落としのどちらを優先させるのか。銀行が考える重要度と顧客の間にギャップはないのか。貸出の優先度を下げるとして、決まっている融資実行日に被災した場合は、実行しなくて良いのか?預金引出は、営業店窓口なのか、ATMなのか、提携ATMなのかによって、バックアップや復旧の方法が全く異なります。

先日の岩手・宮城内陸地震では、金融関連の被害は極めて軽微でした。停電や通信機器の位置ずれなどで、数台のATMや窓口端末が一時的に使用不能になった程度です。震度6強、マグニチュード7.0という激震にも係わらず、たいしたものだと思います。しかし、もう少し大きな地震だったら、たまたま激震の波動上だったら・・・など悪い方へのタラレバを考えると安心することはできません。各地の被害状況とその際の決済や預金引出件数の変化傾向などは、今後の参考となります。それは曜日や時間帯とも関係するでしょう。恐らく日銀がデータ収集するでしょう。フィードバックを期待します。金融業界では、神戸震災の経験が語られることが減りました。あれほど壊滅的な被害を受けて得た教訓は活かされているのでしょうか。表面的な対策で済ませていることはないでしょうか?

今回の日銀報告は、相当に具体的であります。特に重要システムの選定手法や復旧条件の決め方などは参考となります。大都市圏でのBCPにはそのまま使えるのではと思います。大都市圏ではメガ3行の内、1行でも通常業務で残れば大半の顧客が救われます。地方圏ですと、もう少し簡易型で良いかもしれません。特に、要員の出社困難などの制約は軽減されるでしょう。他金融機関との相互バックアップでは、ホストシステムを遠隔地の同業態と提携するよりは、地域内金融機関同士の提携の方が、業務によっては効果的かもしれません。被災シナリオの問題ですが。今回の日銀主導情報交換会は、大手が中心でしたが、地域金融機関も、協会の場(業態別と地域別の双方)で、情報交換と相互支援体制を整備する必要があろうかと思います。建物や機械を並べても、アリバイ工作にしかなりません。被災シナリオは、金融機関側だけでなく、顧客側からの視点が必要ですし、顧客の協力も必要でしょう。